まくはり便り第11号は、先般行われました「平成23年度学位記授与式」での学長の式辞を掲載いたします

学長式辞
本日、めでたく卒業を迎えられた卒業生・修了生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。本学の教職員を代表して、心からお喜び申し上げます。また、皆さんをずっと支えてこられたご家族、友人の方々も多数お見えかと存じます。さらに、昨年度は突然の東日本大震災のため、学位記授与式を中止いたしましたが、このため、昨年度の卒業生・修了生の方にもお声をおかけしました。どうか、皆さん全員で卒業の喜びを分かち合っていただきたいと思います。
また、本日は、文部科学大臣を始め、多数の来賓の方々をお迎えし、かくも盛大な学位授与式を挙行できましたことを感謝致しております。誠にこの上ない喜びであります。
今年度はいろいろな意味で放送大学の節目となる年でした。まず、放送大学の経営母体である放送大学学園の創立30周年です。放送大学学園は1981年7月に設立され、この2年後の1983年4月に放送大学が設置され、さらにその2年後の1985年4月より放送授業が開始されました。この30年目という重要な年に、7月にアナログ放送が終了したことにより、地デジへの関心が一気に進みました。このことにより、関東地区では、地デジ12chに割り当てられていた放送大学が、大変良く知られることになりました。これに加え、10月にはBSデジタル放送も開始し、放送大学は全国的にもよく知られるようになりました。今迄、一般の方には存在すらよくわからなかった放送大学が一挙に見えるようになったのです。また、この数年、インターネットや携帯端末の一層の利用が拡大しましたが、本大学も2007年度からラジオ、2008年度からテレビ科目のインターネット配信を始め、またかつて郵送でしかできなかった入学出願、科目登録、通信指導問題の解答提出、授業に関する質問などもインターネットでもできるようにしました。
放送大学はいつでもどこでも学べる大学として設置され、北は北海道、南は沖縄まで、学生さんの居住地は広く広がっております。このため、全国各都道府県に学習センターを設置し、そこで教員から直接対面で面接授業などの指導を受けたり、期末の単位認定試験を受けられるようになっています。さらに、そこでは教職員の相談を受けることもできますし、学生さん同士の交流や助け合いの場にもなっています。しかし、こうした分散したキャンパスがあってもなお、遠隔教育大学の宿命として、多くの学生さんは、大部分の時間を孤独と戦いながら学習を続けてこられたことと拝察しております。
東日本大震災では、残念なことに本学の学生さんの中にも亡くなられた方もいらっしゃいます。また、近親者を亡くされた方、ご自宅が流出、全壊、半壊となられた方、あるいは、そうした地域に居住されている方がたくさんいらっしゃいます。
しかし、そうした状況でも、なお学習を続けられている方が何人もいらっしゃいます。災害には遭われなかった方も、本学の学生さんの多くは、仕事を持ちながら就学をされている方、家事との両立をされている方、障がいを持たれている方もたくさんいらっしゃいます。こうした、大変な環境にも関わらず勉学を続けてこられ、さらに卒業にまでいたられたことから、ぜひ「自分を褒めてやっていただきたい」と思います。これが最初に申し上げたいことです。
学部は最短で4年、大学院は2年で卒業できますが、こうした難しい勉学環境から10年、あるいは再入学して20年とかけて卒業にたどり着かれた方も多いと思います。この精神力や持久力には、我々教員も頭を下げざるを得ないと感じております。さらに、本学には人文、社会、自然科学などといった5から6コースがあります。何と、これらのすべてのコースを終えられた方もたくさんいらっしゃいます。
こうした方は学内では尊敬を込めてグランドスラマーと呼んでおりますが、のちほど学生表彰という形で顕彰させていただきますが、今回は40〜85歳の方々が19名もいらっしゃいます。
次に申し上げたいことは、皆さんにはぜひ「本学の卒業生・修了生であることに、誇りを持っていただきたい」ということです。本学は、学力試験を課さない誰にでも開かれた稀有な大学でもあります。だから周りもレベルが低いと思っていますし、皆さんの中にもそう思われている方が多いかと思います。
通信制大学だからと頭ごなしに信じておられる方も多いと思います。本当にそうでしょうか。
まず、放送授業を受け持たれている専任教員や客員教員は、著名な方が多く、さらに、各学習センターで面接授業を受け持たれている先生方も、それぞれの地域の著名人であり、高い教育の質を保っております。しかも、放送授業の単位認定試験はきわめて厳格です。普段から直接顔を合わせることがないだけに、情状酌量はありません。よく、放送大学の授業や試験はやさしいという学生さんがいらっしゃいます。しかし、こうした学生さんの大部分は、すでに他の大学でその専攻を修了されていらっしゃる方が多く、二度目の授業がやさしいのは当然です。
初学者にとって、かなり難しい授業を行っていることは、私のように他大学から移動してきた教員からは容易にわかります。
また、他の大学では、有名人となった卒業生をたびたび紹介しています。しかし、本学では、そもそも仕事を持ってから学生さんになる方が多いこと、卒業してすぐに就職する人が少いこともあり、有名人となった卒業生をあまり充分に利用しておりません。ですが、OB、OGの中には、たくさんの有名人がいらっしゃいますし、さらに前述のようにどちらかというと恵まれない勉学環境を自分で切り開いてこられたのです。ぜひ、こうした実態を認識した上で、放送大学の卒業生・修了生であることを、胸を張って外部に言っていただきたいと思います。それが、また、放送大学の実態の能力を外部に知らしめることになると信じております。改めて「本学の卒業生・修了生であることに、誇りを持っていただきたい」。
続いて申し上げたいことは「いろいろな局面で勉学を生かしていただきたい」ということです。勉学が直接的に生きる場合もあるでしょうが、ほとんどがよくわからないところで生きてきます。たとえば筋トレが、ほかの運動の成果になって現われてくるようなものです。でも、そうした効果を認識することが大事だと思います。それが「学ぶ姿勢の維持」につながります。私の大学時代の恩師がよくおっしゃっていたのですが、「自分がどこまでをわかったのか、どこから先がわかっていないのかを認識すること」、そしてその限界を徐々に拡げていくことが肝要かと思います。
今、日本はいろいろな局面で、大変な難局に面しております。莫大な財政赤字、原発事故に起因したエネルギー問題、少子高齢化と年金問題、長期的な産業空洞化など、どれを見ても、一朝一夕では解決しません。
皆さんに期待するのは、こうした時に、感情で動くのではなく、より論理的に正しい道を見つけ、それをきちんと歩いていくことだと思います。
本学に在籍したことにより、力強く生きるすべ、したたかに生きるすべを得たのだ、それを力に他人に優しい、包容力のある人間になっていただきたいと念じて式辞とさせていただきます。
平成24年3月24日
放送大学長 岡部 洋一

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