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社会心理学特論('09) シラバス

シラバス科目概要
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主任講師

細江 達郎 (岩手県立大学教授)
菊池 武剋 (東北大学名誉教授)

講義概要

①心理学と社会学(文化人類学)の境界領域の科学としての社会心理学の学的な発展をたどり、その特質や研究方法を概説する。②社会心理学の視点からのパーソナリティー、社会(集団)、文化について、さらに社会心理学的人間理解の重要な視点である社会化、生涯発達についてそれぞれ論考する。③社会心理学の基本的方法である、フィールドワークの方法に基づく、研究例(社会変動と個人の発達・身体表現、占い、職業伝承、医療などを)を具体的に提供する。④臨床社会心理学的な視点から、犯罪・非行、被害者支援の課題をとりあげ社会心理学と臨床心理学の接点との関係を明らかにする。

授業の目標

心理学と社会学の境界領域の科学としての社会心理学の研究視点は日常のレベルでの人間理解の視点でもある。人は個人として心身の過程を持つとともに、他者との社会的関係、その関係を規定するさまざまな規範・文化との関係で実際の行動を起こしていく。本講義ではこの多面性そのものを探求する社会心理学的アプローチを理解するとともに、そのことが臨床心理学的課題のみならず、多くの人間生活上の課題の理解に適切な枠組みの提供となることを明らかにしていく。

履修上の留意点

臨床心理学的課題がさまざまな社会適応上の課題であるという視野を持ち、社会的日常的な問題に常に関心をもちながら履修されることを願っている。各授業名称や提供される素材の表面的な関心だけでなく、それぞれが持つ、人間生活理解への意味づけおよび人間科学の全体的な枠組みへの位置づけなどを常に意識した履修を期待したい。

テーマ 内容 執筆担当講師名
(所属・職名)
放送担当講師名
(所属・職名)
1 社会心理学の対象と方法 1)全体の講義の概要、2)社会心理学の成立の歴史、対象とする人間、方法の特殊性を概説する。本社会心理学特講全体で一貫して扱われるフィールドワーク的社会心理学の方法について説明し、人間生活上の諸課題の理解にもつ意味を明らかにする。

【キーワード】
社会心理学史、研究方法、フィールドワーク
細江 達郎
(岩手県立大学)
細江 達郎
(岩手県立大学)
2 社会心理学とパーソナリティ 社会心理学とパーソナリティ心理学という隣接する2つの立場から行われてきた「パーソナリティ」研究の史的展開について簡潔に論じるとともに、両者の統合にむけた、人と状況の相互作用論に基づくコヒアラント(coherent,統合的)なアプローチの重要性について、行動指紋、ライフコース、自己物語研究等の具体研究例を示しながら解説する。

【キーワード】
パーソナリティ、相互作用論、コヒアランス
堀毛 一也
(岩手大学)
堀毛 一也
(岩手大学)
3 集団の社会心理学 1)個人と社会(集団)の関係、2)他者へのさまざまな影響関係の中での「集団」の位置づけ、3)集団の諸特徴、を概説する。4)集団の諸特徴がある状況下では目的達成に阻害的な働きをしてしまう例を見て明らかにする。

【キーワード】
群集、集団過程、服従、同調、集団浅慮
細江 達郎
(岩手県立大学)
細江 達郎
(岩手県立大学)
4 文化と社会心理学
~ねだられた民族誌家(エスノグラファー)~
社会心理学など人文社会科学において、文化への接近法(アプローチ)として大別して2種類ある。外在的アプローチと内在的アプローチである。外在的アプローチとは普遍的な心理学的プロセスを想定し、アウトプットの違いを文化によって説明する。内在的アプローチとは文化を身をもって、内部から理解しようとする。本章では実際にどのように文化理解が進むか、そのプロセスをアフリカ牧畜民トゥルカナの人びととのやりとりとみていく。人間存在の理解を旨とする社会心理学にとって、文化への内在的アプローチの重要性を指摘する。

【キーワード】
規範、価値、文化の諸理論
作道 信介
(弘前大学)
作道 信介
(弘前大学)
5 社会化の社会心理学 人・社会・文化の交差点で人間形成をとらえる社会化研究は社会心理学の基本概念の1つであるが、その学際性の故に多種多様な研究課題、アプローチと理論を抱えることになった。ここでは社会化研究に現れた主要な概念、理論、研究領域を整理し解説する。

【キーワード】
社会化
大江 篤志
(東北学院大学)
大江 篤志
(東北学院大学)
6 生涯発達の社会心理学 人間の発達は成人期までに留まらず、生涯にわたって続く。これは社会心理学的な人間理解にとって特に重要な視点である。それぞれの段階での発達課題をどのように達成し、ひとは人生を歩んでいくのか理解のための理論的枠組みを提供する。

【キーワード】
発達課題
菊池 武剋
(東北大学)
菊池 武剋
(東北大学)
7 ポジティブ心理学の発展 最近急速に注目を集めているポジティブ心理学の研究動向について概説する。ポジティブ心理学は、従来の心理学が疾病モデルを中心に、病気や障害からの回復に焦点を合わせてきたという反省のもとに、人間の長所や強さを積極的に探求しようという方向性をもつ心理学的動向を指す。ここでは主観的充実感(subjective well-being)の概念を軸に、ポジティブな認知様式の特質や、対人関係・健康との関連について論じる。

【キーワード】
ポジティブ心理学、主観的充実感、ポジティブ認知
堀毛 一也
(岩手大学)
堀毛 一也
(岩手大学)
8 社会変動の社会心理学 個人の進路・職業選択などの分岐点での選択行動は、その基盤となる社会の変動と関わる。戦後日本の団塊の世代といわれる人々の人生、特に社会変動経済変動に大きな影響を受けた地方出身層の長期にわたる追跡調査を素材にして社会心理学的視点で見ていく。

【キーワード】
団塊の世代、戦後社会、集団就職、職業的社会化
細江 達郎
(岩手県立大学)
細江 達郎
(岩手県立大学)
9 地域の社会心理学 多くの地域社会はいま深刻な過疎化、高齢化という変化のなかにある。本講義では宮城県の小離島である江島をフィールドとして取り上げ、地域社会の変化を解き明かす鍵となるような活動をとおして、過疎-高齢化の過程を世代間の社会化の相互作用という視点からみていく。

【キーワード】
地域社会、進路選択、伝統的社会化システムの解体と再編、伝統漁撈
大江 篤志
(東北学院大学)
大江 篤志
(東北学院大学)
10 交渉・治療儀礼・占い
~北西ケニア・トゥルカナの問題対処~
社会はそれぞれ問題対処の独特の方法をもっている。本章では北西ケニア・牧畜民トゥルカナにおける問題対処の論理と方法を交渉、治療儀礼、占いにみる。まず、日常的な問題は相手に援助を求める交渉で、病気については家畜を使った儀礼が頼りにされている。解決できないような問題は占いに委ねられ、背後に「他者の怒り」があるとされる。そこには牧畜という生業を支える「協働原理」を見いだすことができる。

【キーワード】
牧畜社会、交渉、儀礼、占い
作道 信介
(弘前大学)
作道 信介
(弘前大学)
11 社会変動と身体
~「糞肛門」の出現~
1980年代にアフリカ牧畜民トゥルカナの間に新しい病気が出現した。「糞黄門」である。この病気は干ばつ以後の食生活の変化によって引き起こされた病気であるという。私たちは新しい病気に対して免疫など生物学的適応をおこなうだけではない。社会文化的に意味づけ、対処法をあみだす。本章ではこの「糞肛門」を、トゥルカナの人びとが干ばつ以後の社会変動にたいして身体をこしらえなおすことで対応した例として提示する。

【キーワード】
社会変動、マッサージ、体現化と身体化
作道 信介
(弘前大学)
作道 信介
(弘前大学)
12 犯罪・非行の社会心理学 犯罪・非行の原因論は,人を犯罪に向かわせる要因をとらえようとしてきた。特に青少年非行の場合,その当事者である少年に対して焦点が当てられてきた。しかし非行という行動そのものが社会関係の中ではぐくまれ,起こっているのであるから,単に当事者だけを見ていては,この問題を理解することはできない。一つの研究を取り上げて吟味することで,青少年非行の問題に社会心理学的に接近することの意味を考える。

【キーワード】
非行
菊池 武剋
(東北大学)
菊池 武剋
(東北大学)
13 被害者支援の社会心理学 犯罪や非行という行動は,加害者・被害者・第三者の相互影響関係の中で発生する。被害者に目を向けることで,加害者・被害者の関係,犯罪・非行場面のカ動的な理解がなされる。さらに近年,大きな課題となっている「被害者支援」について考察する。被害者支援は被害者にとって必要であるが,このことは加害者の更正・矯正にとっても大きな意味があることである。

【キーワード】
被害者支援
菊池 武剋
(東北大学)
菊池 武剋
(東北大学)
14 臨床心理学と社会心理学 人と人との相互作や影響関係扱う社会心理学と心理・行動の障害の治療や援助をめざす臨床心理学とは、本来、相互に補完しあえる関係にありながら交流は少なかった。近年、この二つの心理学のインターフェイス(境界領域)を積極的に開拓しようとする新しい分野が「臨床社会心理学」と呼ばれて関心が高まってきている。

【キーワード】
インターフェイス、臨床社会心理学
菊池 武剋
(東北大学)
菊池 武剋
(東北大学)
15 社会心理学のめざすもの:講義の総括 1)講義全体をまとめ、本社会心理学特論が目指すものを再確認する。
2)特に普通の人間生活のレベルを理解する社会心理学的な接近や枠組みの重要性についてあらためて明らかにする。

【キーワード】
人間生活、フィールド研究、社会心理学の応用、しろうと理論
細江 達郎
(岩手県立大学)
細江 達郎
(岩手県立大学)
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