アジアと漢字文化('09) シラバス
主任講師
宮本 徹 (放送大学准教授)
大西 克也 (東京大学大学院准教授)
講義概要
東アジアから東南アジアにかけての広い地域に対して、中国文明は過去から現在に亘り深甚なる影響を与え続けてきた。その文明の優位性を保証していたのが書記体系としての漢字である。本科目は、中国における漢字の成立と歴史的展開を軸としつつ、あわせて周縁地域に対する漢字の諸方面における影響を俯瞰することを通じ、我々が生きるアジアにおいて漢字文化が果たしてきた役割とその将来についていま一度考え直す視点を提供する。
授業の目標
漢字についての基本的知識の習得を図ると同時に、その歴史的展開について理解を深める。さらに、アジアにおいてインド系・アラビア系文字と並んで広く使用される漢字を例にとって、言語と文字の関係及び文字を共有する文化圏の歴史的意味を考察するとともに、この文化圏の一員である私たちに与えられた今日的課題を解決する視座を獲得することを目標とする。
履修上の留意点
履修に際して特に前提とされる知識はないが、中国史についてのごく基礎的な知識があればなおよい(参考:「中国社会の歴史的展開('07)」)。
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テーマ |
内容 |
執筆担当講師名
(所属・職名) |
放送担当講師名
(所属・職名) |
| 1 |
漢字の誕生――骨と甲羅に刻まれた文字―― |
古代中国語の表記体系としての漢字の基本的性質を理解した上で、現在確認される最古の漢字である甲骨文字について概説する。甲骨の作成方法や文章の読み方についても言及する。
【キーワード】
字体、書体、表語文字、甲骨文字、占卜、殷、殷墟 |
大西 克也
(東京大学大学院准教授) |
大西 克也
(東京大学大学院准教授)
松丸 道雄
(東京大学名誉教授)
平勢 隆郎
(東京大学東洋文化研究所教授) |
| 2 |
漢字の起源――甲骨文字のしくみと陶文―― |
甲骨文字は中国語をどのように可視化したかという観点から、甲骨文字の成り立ちと特徴とを考察する。甲骨文字以前から見られる新石器時代の土器に記された符号や文様と漢字の起源との関わりについても考える。
【キーワード】
甲骨文字、解読、表意文字、表音文字、陶文 |
大西 克也
(東京大学大学院准教授) |
大西 克也
(東京大学大学院准教授) |
| 3 |
青銅器に鋳込まれた漢字――金文の誕生と展開―― |
殷周時代の青銅器に鋳込まれた金文について、器の製作方法をふまえた上で、甲骨文と比較しつつその特徴を解説する。
【キーワード】
金文、青銅器、陶模法、皮型 |
大西 克也
(東京大学大学院准教授) |
大西 克也
(東京大学大学院准教授)
松丸 道雄
(東京大学名誉教授) |
| 4 |
多様化する漢字――戦国時代の文字―― |
分裂の時代を背景に多様化した戦国時代の文字について、現地ロケをふまえた豊富な資料を基に解説する。多様化の諸相とその要因について考える。
【キーワード】
戦国文字、多様化、正字、俗字 |
大西 克也
(東京大学大学院准教授) |
大西 克也
(東京大学大学院准教授) |
| 5 |
屈原の書いた漢字――戦国時代の楚の言語表記システムと国ごとの違い―― |
楚簡に記された筆写文字に基づき、戦国時代の楚の国における漢字の諸相を考察する。他の国の文字と比較し、国毎にどのような相違があったのか考える。
【キーワード】
戦国文字、楚簡、俗字、周圏分布 |
大西 克也
(東京大学大学院准教授) |
大西 克也
(東京大学大学院准教授) |
| 6 |
隷書の誕生と文字統一――古代文字の終焉―― |
隷書の誕生によって、象形的な古代文字が画一的な筆画によって構成される近代的な漢字に変貌する様を考察する。秦始皇によって成し遂げられた文字統一の歴史的意義とその実際を、湖南省や湖北省の出土資料を基に解説する。
【キーワード】
隷書、隷変、文字統一、秦始皇、馬王堆帛書 |
大西 克也
(東京大学大学院准教授) |
大西 克也
(東京大学大学院准教授)
横田 恭三
(跡見学園女子大学教授) |
| 7 |
漢字の完成――楷書の誕生と規範化―― |
今日我々が用いている書体がいかにして成立したかを、漢代の簡牘や南北朝時代から唐代の碑文や墓誌などに基づいて解説する。
【キーワード】
草書、行書、楷書、碑文、墓誌、石経、印刷用書体 |
大西 克也
(東京大学大学院准教授) |
大西 克也
(東京大学大学院准教授) |
| 8 |
字書の変遷――漢字史からみた字書―― |
字書の起源とその変遷を漢字の書体の歴史から解説する。
【キーワード】
字書、『説文解字』、六書、部首、楷書、『玉篇』、『字彙』、『康煕字典』 |
大西 克也
(東京大学大学院准教授) |
大西 克也
(東京大学大学院准教授) |
| 9 |
漢字と漢字音 |
文字としての漢字が周縁諸民族に受容されたとき、その読音である漢字音がどのような変化を遂げたかを、原音と日本漢字音との関係を中心に解説する。
【キーワード】
反切、韻書、中古音、漢字音、呉音・漢音・唐音 |
宮本 徹
(放送大学准教授) |
宮本 徹
(放送大学准教授) |
| 10 |
漢字と近代化 |
国民国家の成立と近代化の時代、中国で行われた漢字を巡る様々な議論と文字改革の運動について、漢字の標音化と簡略化を中心に解説する。
【キーワード】
近代化、文字改革、標音化、簡化字 |
宮本 徹
(放送大学准教授) |
宮本 徹
(放送大学准教授) |
| 11 |
漢字と「漢字系文字」 |
漢字はその周縁部においてさまざまな「漢字系文字」を生み出したが、その特徴について、中国西北部を中心に見られる「擬似漢字」と中国東南部を中心に見られる「派生漢字」との違いを中心に解説する。
【キーワード】
漢字系文字、西夏文字、チュノム(字喃) |
岩月 純一
(東京大学大学院准教授) |
岩月 純一
(東京大学大学院准教授) |
| 12 |
韓国・朝鮮の漢字 |
韓国・朝鮮における漢字の受容と歴史的展開について、現在における文字状況も含め説明する。
【キーワード】
韓国木簡、金石文、吏読、ハングル |
福井 玲
(東京大学大学院准教授) |
福井 玲
(東京大学大学院准教授) |
| 13 |
日本語と漢字(1) |
日本における漢字の伝来と吸収について、単に文字の受容という観点のみならず、日本語における漢語の存在という側面からも漢字文化について考察を加える。(漢字の伝来と吸収/万葉仮名/日本漢字の特徴/国字・方言字)
【キーワード】
金石文、万葉仮名、日本漢字、国字・方言字、漢語 |
陳 力衛
(成城大学教授) |
陳 力衛
(成城大学教授) |
| 14 |
日本語と漢字(2) |
第13回の続き。
(日本語における漢語/近代における日中の語彙交流)
【キーワード】
金石文、万葉仮名、日本漢字、国字・方言字、漢語 |
陳 力衛
(成城大学教授) |
陳 力衛
(成城大学教授) |
| 15 |
アジアの言語と漢字――漢字の受容によるアジア諸言語の変容―― |
漢字文化をめぐる座談会。①漢字が東アジアで果たした役割、②文字と言語の相関関係、③漢字文化の将来。
【キーワード】
東アジア/漢字文化圏/文字と言語 |
宮本 徹
(放送大学准教授) |
大西 克也
宮本 徹
岩月 純一
福井 玲
陳 力衛 |
 
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