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グローバル化と日本のものづくり('11) シラバス

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主任講師

藤本隆宏 (東京大学大学院教授)
中沢孝夫 (福井県立大学特任教授)

講義概要

国際的な市場競争の激化のなかで、日本の「ものづくり」が岐路に立っている、といわれている。しかし構想、研究・開発からはじまり、「もの」が実際につくりこまれてゆくプロセスは意外と知られていない。
この授業では、中小企業から大企業までの、技術や経営の実際を概観しながら「ものづくり」の全体像をスケッチしつつ、日本(企業)の強さと弱さや、国際的な競争と協調の内実を明らかにする。
その作業はアメリカとの貿易摩擦から現地への工場進出の歴史の点検であったり、東アジアを中心とする途上国との国際分業の進展の分析であったりする。
またそのことは「ものづくり」を媒介として、世界の諸国とともに歩む日本の「優位性」や「課題」を浮き彫りにすることでもある。

授業の目標

大切なことは事実を知ることである。製造業に関する毀誉褒貶を排し、日本経済を支える「ものづくり」の過去と現在を、グローバル化を軸につぶさに点検しながら、私たちの社会の「今」を等身大で理解する。

テーマ 内容 執筆担当講師名
(所属・職名)
放送担当講師名
(所属・職名)
1 グローバル化と日本のものづくり グローバル化、という言葉が近年になってからことさら強調されるようになったのは、旧ソ連を中心とした社会主義が崩壊し、ヒト、モノ、カネ、そして情報が一挙に国境を超えるようになったからである。特に「もの」や「サービス」の流通が、お互いの国の経済や暮らしに大きな影響を与えるようになってきた。とりわけ「ものづくりの国」といわれる日本は、海外への直接投資を拡大している。この章では主に「ものづくり」の意味と、技術の歴史を点検する。

【キーワード】
「グローバル化」「貿易依存度」「日本の大きさ」「模倣工学」
中沢孝夫
(福井県立大学経済学部・特任教授)
中沢孝夫
(福井県立大学経済学部・特任教授)
2 「ものづくり論」とは何か ①機械・電気・材料・化学といった「工学」はそれぞれの固有技術を支えるが、それぞれの技術を動員して束ね、人工物(もの・製品)をつくり、消費者(お客)に届けるプロセスの総体が「ものづくり」である。 ②国際的な日本の立ち位置をふまえ、ものづくり経営論の意義を考える。

【キーワード】
 「ものづくり」「設計情報」「媒体」「組織能力」「競争力」
藤本隆宏
(東京大学大学院経済学研究科・教授)
藤本隆宏
(東京大学大学院経済学研究科・教授)
3 トヨタ生産方式と日本のものづくり トヨタ生産方式を例にとり、情報の転写やプロセスフロー、組織能力の構築やシステム全体の進化などの諸観点から日本のものづくりの1つの特徴を示す。

【キーワード】
 「多能工」「ジャストインタイム」「自動化」「改善」「正味作業時間」
藤本隆宏 藤本隆宏
4 設計構想としてのアーキテクチャ ①製品の設計思想、アーキテクチャ論はものづくり経営論の骨格をなす理論である。インテグラル(擦りあわせ)型とモジュラー(組み合わせ)型はどう違うか、アーキテクチャ論の視点からの説明。 ②クルマ、家電、パソコンなど、製品によって「つくり方」は異なる。日本が得意なものと下手なもの。製造業の中の強い業種と弱い業種などをの説明。

【キーワード】
 「インテグラル」「モジュラー」「つくりこみ」「アーキテクチャの位置取り」「アーキテクチャの地政学」
藤本隆宏 藤本隆宏
5 日本製造業の競争力の変遷 戦後、日本の製造業は輸出で発展してきたが、輸出産業は繊維から鉄鋼、電機、半導体へと変遷してきた。急激な輸出増は日米貿易摩擦や急速な円高を招いた。日本企業はその環境変化に合理化等で対応するとともに、既存産業に新規の技術を取り込む脱成熟を実施することで競争力を強化していったプロセスを概説する。

【キーワード】
「貿易摩擦」「脱成熟」「比較優位」「プロダクト・ライフサイクル仮説」
新宅純二郎
(東京大学大学院経済学研究科・准教授)
新宅純二郎
(東京大学大学院経済学研究科・准教授)
6 日本製造業の苦境と海外生産の展開 1980年代半ばに絶頂期を迎えた日本の製造業に対して、海外でも日本的経営が着目されるようになった。しかし、1980年代後半以降の円高と90年代のバブル崩壊で日本企業は大きな苦境に立たされた。その中で、国際競争力を失っていく産業も出てくると同時に、この時期に急速に進んだのが海外生産の拡大とその影響について説明する。

【キーワード】
「顕示比較優位」「日本的経営」「海外生産」「生産性」
新宅純二郎 新宅純二郎
7 「ものづくり」の基盤を支える中小企業 たくさんの「素材」や「技術」がかかわってものはつくられている。トヨタやホンダといった完成品のメーカーの周辺には、一次協力、二次協力と、さまざまな専門技術をもった中小のメーカーが存在する。この章では「相談」しながらものをつくる日本の特徴を明らかにしつつ、中小企業の役割の意味や、ソフトとハードの関係、そしてものづくりにまつわる多くの誤解をただす。

【キーワード】
「協力メーカー」「関係的技能と承認図」「中小企業基本法の旧法と新法の違い」
中沢孝夫 中沢孝夫
8 中小企業の海外進出とその特徴 中小企業の海外展開は大企業よりも少しおそい。まず完成品のメーカーが進出し、次に協力メーカーがいく。「もの」は消費地に近いところで作った方がよいので、途上国の経済発展とともに、海外への直接投資(工場をつくったりする)もまた増大する。本章では中小企業の移転の理由やそのことによる国内への影響の積極的な意味を通して明らかにする。それは必ずしも空洞化ではない。

【キーワード】
「海外投資件数の推移」「「現地仕様」「工場が減る意味」
中沢孝夫 中沢孝夫
9 ものづくりの活性化と東アジア諸国の発展 日本の中小企業の技術はどこにいっても通用し、かつ優れている。しかし近年は途上国にも現地のメーカーが登場し、日本のメーカーのネットワークに参加しつつある。かつては部品を日本から運んだが、だんだん現地での調達率が高まっている。そして現地での完成品が各国に輸出されるようになり、日本への逆輸入もはじまっている。そうしたなかで中小企業も積極的に海外で経営を展開させつつある。

【キーワード】
「現地調達比率」「技術移転」
中沢孝夫 中沢孝夫
10 ものづくり発展のプロセスと現在 どこの国もマネからスタートする。もちろん日本も。大切なことは学ぶ能力と応用する力である。輸入代替から輸出産業へと発展させてきた日本のものづくりを、主にマザーマシンといわれる工作機械に焦点をあてて説明する。そして、エレクトロニクスの発展が、日本のものづくりのあり方を大きく変えつつある現状を点検しながら、今日の課題を明らかにかる。

【キーワード】
「工作機械」「残留応力」「製品の境界」
中沢孝夫 中沢孝夫
11 東アジアの国際分業の動向と日本企業のものづくり ① 直接投資を受け入れた東アジア諸国は急速に経済成長。20年間のアジアを中心とする国際分業の構図を整理。② アジアとの国際分業を前提にものづくりのあり方を見直す必要性。その際、アーキテクチャ論をふまえ日本に何を残し、何を外へ出すべきか、ものづくりの比較優位論をベースに国際分業論を展開する。

【キーワード】
「国際分業」「アジア」「アーキテクチャ」「国際ビジネスモデル」
天野倫文
(元東京大学大学院経済学研究科・准教授)
天野倫文
(元東京大学大学院経済学研究科・准教授)
12 アジアへの日本的経営とものづくり能力の移転 ① アジアの生産現地で「擦り合わせ」型組織能力構築の必要性。2000年代に日本的経営や組織能力を移転した国との間に差が現れた。②タイは、今ASEANやインドも含む戦略的拠点化した。タイトヨタの事例で日本的経営をどう受容し、国際競争力の土台を築いたかを見る。③ 販売、生産、開発、人事が一体化した組織能力の構築・移転と現地化のモデル。

【キーワード】
「海外現地法人」「組織能力」「経営の現地化」「日本的経営」「ものづくり」
天野倫文 天野倫文
13 新興国市場戦略とものづくり ① 製造業ベースで、中国、東南アジア、インドなどが大きく経済発展し、1人当たりGDPも伸びた。地域間格差は存在するが、貧困層比率が減少し、都市部は成長力ある市場へ。②サービス業進出、生産拠点だけでなく市場でもある新興国市場での製販一体化したものづくりの定着を論じる。③各国多国籍企業との競争になるが、日本の優位性はどこかを探る。

【キーワード】
「新興国市場」「イノベータのジレンマ」「製品戦略」「ボリュームゾーン」「非連続な市場への適応と創造」
天野倫文 天野倫文
14 新時代の技術経営とものづくり-知的財産や標準化戦略など- ① 現代の競争は複雑化してきており、知的財産をどう扱うか、世界的な標準化戦略をどう構築していくのかということが、ものづくりの存続においても、クリティカルな要素となってきている。②日本企業のこれまでのものづくり経営は、そうした観点からどう評価されるのか、また今後環境や新技術が到来するなかでどのような課題を抱えているかを述べる。

【キーワード】
「イノベーション」「コンセンサス標準」「モジュラー化」
新宅純二郎 新宅純二郎
15 日本のものづくりの今後の展望と課題 ①グローバル化と日本の産業、②擦りあわせ優位論の可能性と注意点、③産業の垣根を越える「開かれたものづくり」、④実践的な含意ー「良い現場」を日本に残そう

【キーワード】
 「グローバル競争」「良い現場」「設計の比較優位説」「ものづくりインストラクター」
藤本隆宏 藤本隆宏
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