地球科学の基本は地球の表層にみられるさまざまな物質のすがた、性質、そしてその起源を探ること、さらにそれらを基にして地球の内部や表層で起こったプロセスを理解し、社会の基盤となる地殻や海洋、そして大気の状況を的確に理解し、その応用を図ることにある。そこで、本講義はその基礎である、地球表層にある自然物質の理解とその起源がどのように理解できるのか、そして起源を異にする物質が近接する理由と、それから読み取られる地球のダイナミックスを講義する。
専門科目である本科目では、とくに熱力学の知識が使われる。したがって、その内容を扱っている科目、たとえば基礎科目の「初歩からの化学('12)」を履修してから本科目を履修すると理解しやすいであろう。また、本科目の履修とともに基礎科目の「身近な気象学('10)」や共通科目の「惑星地球の進化('07)」を履修すると地球科学分野の理解が深まるであろう。
| 回 |
テーマ |
内容 |
執筆担当講師名
(所属・職名) |
放送担当講師名
(所属・職名) |
| 1.地球の表層にある物質の多様性 |
| 1 |
地球の表層をつくる物質 |
日本列島や大陸の大地にはどのような物質があるのか。それは岩石であり、いろいろな鉱物の集合体である。日本列島では西日本と東北日本では異なり、前者は石英と長石が主の花崗岩や変成岩が多く、後者は長石や輝石のほかガラスが主となる火山岩が多い。これらの岩石がどのように分布するのか、そしてそれをつくる鉱物は何かをみる。
【キーワード】
島弧、大陸、鉱物、岩石、多様性 |
鳥海 光弘 (東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
鳥海 光弘 (東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
| 2 |
海洋地殻の岩石 |
海洋では海水とその下に広がっている海洋底の物質がある。海底の表層部分は海洋地殻といい、泥や生物の遺骸が溜まった堆積物と、その下に輝石、長石、そしてカンラン石などの鉱物をもつ玄武岩と呼ばれる火山岩がある。海洋底をつくる岩石は、太平洋でも大西洋でもほとんど同じであり、この点で大陸や島弧の岩石と異なる。
【キーワード】
海洋地殻、堆積物、火山岩、玄武岩、一様性 |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
| 3 |
化学組成からみた地殻 |
地殻物質である岩石やそれを作る鉱物とガラスは酸素といろいろな金属元素やアルカリ元素がつくる酸化物の化合物である。そこで多様な岩石と鉱物を主な酸化物のSiO2, TiO2, Al2O3, Fe2O3, CaO, MgO, FeO, MnO, Na2O, K2O, H2O, P2O5の量比で表す。すると、玄武岩から流紋岩、かんらん岩から花崗岩、かんらん岩、そして堆積岩などの組成変化をきちんと区別できる。
【キーワード】
化学組成、主要成分、酸化物、組成変化 |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
| 2.地球内部の温度と圧力 |
| 4 |
地球表層付近の温度構造 |
地球表層にある物質はその場でできたものとは限らない。地球内部で作られて、表面に出ていることが頻繁にある。地表にある物質がどこで出来たかを探るには、地球の中がどのような温度と圧力か知る必要がある。そこで、まず地表から穴を掘ってどのような圧力と温度かを知る必要がある。また、地球のいろいろな地域で温度がどのように変化するかを調べる。
【キーワード】
温度勾配、圧力、地球表層、地熱地帯 |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
| 5 |
地球内部の構造と圧力 |
地球の内部は、地震波速度の分布から、同心円状に、地殻、上部マントル、マントル遷移層、下部マントル、外核、内核にわかれる。地球の内部の圧力は地球の重力で決まる。内部の重力は、地球内部で密度が変化するので、密度、重力、そして圧力を同時に求めるのである。
【キーワード】
地球内部の圧力、重力、地球内部の構造、地震波の不連続 |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
| 6 |
地球内部の鉱物の安定性 |
地球内部の温度がどのくらいであるかを決めるのは難しい。直接温度計を差し込むことが出来ない時、地表付近の温度変化から推定するか、温度に敏感な物質の性質から間接的に推定するしか方法がない。有力な方法は、地震波の速度が不連続的に変化する深さで、鉱物が別の鉱物に変化することを利用して、地球の深いところでの温度を決定するのである。このような物質の変化を利用した温度計の利用を考える。
【キーワード】
地球内部の温度、層構造、鉱物変化、温度計 |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
| 3.地球物質の変化と性質 |
| 7 |
ダイアモンドの話と変成岩 |
人はダイアモンドを採集して、宝飾品としても工業品としても利用している。ところがダイアモンドは炭素から出来ている。そして地表付近で安定なのはグラファイトであるし、酸素がたくさんあると炭酸ガスとなってしまう。そこでダイアモンドとグラファイトがどのような安定な温度と圧力の範囲をもっているのか。その関係は相図で示される。そして両者の変化を相転移という。そこで地表でダイアモンドが出現することはどういうことかを探る。
【キーワード】
ダイアモンド、炭素、グラファイト、相転移 |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
| 8 |
地球内部の温度と鉱物の生成温度 |
地球内部のやや深い部分の温度は、岩石に含まれている鉱物の元素分配に関する熱力学的平衡関係を用いて、鉱物の化学組織を測定することで推定出来る。マントルで生成された岩石は世界各地の火山岩に取り込まれているものがあり、それらに含まれているカンラン石や輝石などの化学組成から上部マントルの200km程度までの温度構造がわかる。
【キーワード】
鉱物の元素分配、地質温度計、他成分係、化学平衡、上部マントル |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
| 9 |
地球内部の温度構造 |
地球内部の温度構造は、浅い部分では地表付近での温度勾配や地質温度計から推定されたが、深部は推定が難しい。地球内部の熱エネルギー分布と、運動が未知だからである。そこで、地震波速度の深さ分布から得られた層構造と推定された鉱物の相転移曲線を用いて、層境界の圧力と温度を推定する。この結果660kmでは1500度程度を通過する温度構造が推定される。
【キーワード】
温度構造、相転移温度、断熱圧縮、熱伝導、熱源 |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
| 10 |
MgO-SiO2を成分とする物質の融解とマグマ |
氷から水になることは融解という。地球表層ではしばしば岩石が融けた状態の液体が噴きでる。これをマグマと言う。地球内部では温度と圧力が高い。これがマグマを作る原因である。そこで、地球物質の主な成分であるMgOとSiO2酸化物の混合物がどのような鉱物に変化し、融解するかを相図で調べよう。
【キーワード】
融解、マグマ、相図、結晶作用、分化 |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
| 4.地球のダイナミックス |
| 11 |
マグマと火山 |
地球の内部は地震波から見ると固体であり、マグマで満たされてはいない。では地球表層に噴出するマグマはどこで作られ、どのように噴き出すのか。それを火山から調べて見よう。日本列島やインドネシア、フィリッピンでは火山が一列に並んでいる。このほか、地球上で火山噴火が著しいのは、大西洋や太平洋の海嶺と呼ばれる地域である。マグマの温度は直接測ると1100度C程度である。それを地球内部で実現しているのは深さ100ー200kmである。マグマはそこで生まれたのだろうか。
【キーワード】
マグマの発生、火山活動、地球の温度、火山列島 |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
| 12 |
地球内部の破壊と地震発生 |
地震は日本列島のような海溝のそばに多く、大陸の中ではあまり起こらない。地震の揺れは横揺れと縦揺れがある。横揺れは縦揺れより遅く始まる。前者は横波で後者は縦波である。そうした揺れは岩石が横に歪んだり、縮みと伸びを起こすからだ。1mでわずか1mmぐらいのずれでも1kmでは1mものずれとなる。そしてそれが1秒程度で右へ左へとずれるのである。それは地下では割れ面が作られ、それを境に左右へとずれが発生することに等しい。地表では岩石の中の断層である。
【キーワード】
地震活動、断層、地球内部の破壊、地球内部の歪 |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
| 13 |
マントル対流と地球の歴史 |
地球の深部では温度の上昇率が、地表付近に比べて格段に小さい。それは深部では温度や物質について撹拌が起こっているためである。浅いところでは撹拌がないために熱がゆっくりと地表にまででるので勾配がきつい。撹拌はおふろの中と同じく対流によるものである。これをマントル対流と言う。マントル対流はマントルの最深部からの上昇流とそれが浅いところで冷やされて沈んで行く下降流にわかれ、効率的にマントルを冷やしている。両者では温度が違い、地球内部に温度不均質が発生する。また、対流はマントルを掻き混ることで垂直方向に均質化している。
【キーワード】
温度上昇率、マントル対流、地球の冷却、マントルの撹拌 |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
| 14 |
プレートテクトニクス |
世界の主要な場所が互いにどのくらいの距離にあるか、そしてその距離は年々どのくらい変化するかということはGPSで精密に計測すると分かるようになった。それによると日本列島はハワイに近づいている。北米大陸にも年に10cmという速さで接近している。驚くことに、この速度は1968年に太平洋や大西洋などの拡大速度から求めた速度と一致していた。このことは現在の10年ほどの運動と100万年程の平均の運動が一致していることであり、プレートテクトニクスを実証したことになる。
【キーワード】
プレートテクトニクス、大陸間距離、拡大速度、地球のダイナミクス |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
| 15 |
日本周辺の地殻とマントル |
日本列島は活動的地球の表舞台である。活発な地震活動と火山活動、急激な地殻の上昇運動、海溝の厚い堆積、活動的な断層帯や褶曲帯などで特徴付けられる。そして、プレートテクトニクスの枠組みから外れる事が起こっている。つまり、地殻が作られて、それが変形し、大陸地殻となっている。さらに重大なことには作られた大陸地殻は40億年もの歴史をもつことである。海洋地殻が2億年より新しい事とは著しいコントラストなのである。
【キーワード】
日本列島、プレート境界、活動的地球、大陸地殻の形成 |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |
鳥海 光弘
(東京大学名誉教授・海洋研究開発機構領域長) |