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公共哲学('17)

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主任講師
山岡 龍一 (放送大学教授)
齋藤 純一 (早稲田大学教授)
放送メディア
ラジオ
放送時間(平成29年度)
第1学期:(土曜)16時00分~16時45分
第2学期:(木曜)11時15分~12時00分

講義概要

現代社会における「公共性」の諸問題を、新たに問い直し、新たな解決法を考えていく方法を検討する。「公共哲学」という、近年再定義・再考察が試みられている視角・考え方を、理論的なレベルで紹介・解説しつつ、さらには、いくつかの具体的な問題に関する公共哲学的なアプローチを紹介・解説する。特に学生が、既存の「公共」に関する考え方を批判的に反省し、自らの知の新たな可能性を開くことができるようになることが目指される。狭義の「哲学」ではなく、社会科学的な知のあり方の刷新の方法を、批判的に紹介することで、講義全体が公共哲学の展開の事例となる予定である。
※詳しくはシラバス

開設年度
平成29年度
科目区分
社会経営科学プログラム
科目コード
8930708
単位数
2単位
単位認定試験
試験日・時限
平成29年度 第1学期:平成29年7月21日(金曜)5時限(14時25分~15時15分)
平成29年度 第2学期:平成30年1月20日(土曜)6時限(15時35分~16時25分)
単位認定試験
平均点
備考
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授業の目標

本講義の目標は、公共性に関する特定の教説を提供したり、公共的な問題を取り扱う特定の方法を教え込むことではない。むしろ、「公共性」を再考察する可能性を示し、学生が自らの具体的な問題を基に、独自でありかつ他に開かれた仕方で、「公共性」に関する考えを身につけられるようにすることが目標である。社会・人文科学的な知の基礎を提供することも目標であるが、それ以上に、すでに何らかの学問を習得した学生が、それを批判的に展開し、他の学問や実践的課題との連関を理解、もしくは創造できるような知の提供を目指している。

履修上の留意点

履修の上で、特に必要な知識はない。もちろん、既に何らかの社会科学になじみをもっているなら、より理解が容易になるであろう。社会経営科学プログラム以外のプログラムに属する学生にも、その学習の成果を公共的な仕方で生かすために、積極的に履修してもらいたい。

シラバス

テーマ 内容 執筆担当講師名
(所属・職名)
放送担当講師名
(所属・職名)
1 公共哲学とは何か 公共哲学とはどのような営みであるのか、という問いに学問的に答える。「公共性」や「哲学」といった概念に関する一般的な考察に加えて、公共性をめぐる近年の社会科学的議論を概観する。現代において公共性の概念に注目することに、どのような意義があるのかについて、示唆を提示する。

【キーワード】
市民社会、市民的公共性、哲学的な問い、市民としての生き方、共和主義、公と私
山岡 龍一
(放送大学教授)
山岡 龍一
(放送大学教授)
齋藤 純一
(早稲田大学教授)
2 公共哲学としての功利主義 最も影響力のある道徳哲学の教説といわれる功利主義を、その諸批判を通じて検討し、批判に対する有効な対応の一つである、「公共哲学としての功利主義」という構想の内容を確認する。古典的功利主義を代表するベンサムの議論を、公共哲学として再構築し、それをリベラリズムの公共哲学として理解することの可能性と意義を検討する。

【キーワード】
帰結主義、幸福主義、総和最大化、メタ理論と公共哲学、快楽主義、個人主義、安全保障、公開性、分配的正義
山岡 龍一
(放送大学教授)
山岡 龍一
(放送大学教授)
3 公共哲学としてのリベラリズム ミルの自由論と並ぶリベラリズムの公共哲学として、ジョン・ロールズの正義論を取りあげる。公正としての正義という構想を、『正義論』の解釈を通じて、公共性の解釈の一つとして提示する。『正義論』の議論が政治的リベラリズムへと発展したことで、公共性に関するロールズの思想が、どのような変化を被ったかを確認し、特に「公共理性」の理念に、現代リベラリズムを代表する公共性の議論を見出す。

【キーワード】
功利性と自由、社会の第一の徳目としての正義、義務論、無知のヴェール、公正としての正義、格差原理、正義の政治的構想、公共理性
山岡 龍一
(放送大学教授)
山岡 龍一
(放送大学教授)
4 リベラリズム批判の公共哲学Ⅰ
-ノージックの権原理論
リベラリズムを自由の価値という観点から批判するリバタリアニズムの議論を、ノージックの理論を使って検討する。個人の権利を最大限擁護する場合、どのような公共観が生まれるのかを確認し、その上でノージックとの対比からロールズの理論を再検討し、公共哲学の在り方についての理解を深化する。

【キーワード】
リバタリアニズム、最小国家、側面制約、見えざる手説明、分配的正義、権原理論、「道徳的観点からすれば恣意的」、ロック的但し書き
山岡 龍一
(放送大学教授)
山岡 龍一
(放送大学教授)
5 リベラリズム批判の公共哲学Ⅱ
-マッキンタイアの徳倫理学
道徳的・政治的決定の公共的な正当化に、現代の公共哲学は結局のところ失敗しているのではないか。この根源的な問いを近代哲学史の観点から提起し、代替案として現代に通じるアリストテレス主義の哲学を掲げたマッキンタイアの議論を検討する。ローカルな共同体への実際の参加に基づく公共哲学という、コミュニタリアン的議論の考察から、リベラリズムの公共哲学を批判的に検討する。

【キーワード】
情緒主義、目的論、アリストテレス的伝統、実践に内的な善、物語的秩序、共同体
山岡 龍一
(放送大学教授)
山岡 龍一
(放送大学教授)
6 アーレントの公共哲学 アーレントは、『人間の条件』ほかの著作で、公共的領域を多様な人々の間で意見の交換が行われる領域として描いた。「同一性」に抗して「複数性」を擁護する彼女の思想を、全体主義批判および「社会的なもの」に対する批判という文脈において理解しながら、彼女が政治のために何を取り戻そうとしたかについて検討する。

【キーワード】
複数性、世界、行為、判断力
齋藤 純一
(早稲田大学教授)
齋藤 純一
(早稲田大学教授)
7 ハーバーマスの公共哲学 ハーバーマスは、複雑化した社会を人々の意思にそって統合するための媒体として法をとらえた。法を民主的に正統化する政治的公共圏と政治システムについて彼がどのように論じたかについて考察する。その際、公共の議論を通じた民主的な意見-意思形成にはどのような意義があるのかに注目する。

【キーワード】
市民的公共性、討議(熟議)、意見-意思形成
齋藤 純一
(早稲田大学教授)
齋藤 純一
(早稲田大学教授)
8 デモクラシーと公共性 長い間、デモクラシーは、人々の政治的選好を集計する「集計モデル」に沿って理解されてきた。それに代わって、市民が法や政策を正当化する理由を交換し、検討する「熟議モデル」が提起されてきた。両者の違いを明らかにするとともに、熟議デモクラシー論が民主的な正統性についてどのような新たな見方を提起しているのかについて考察する。

【キーワード】
民主的正統化、民主的統制、熟議、ミニ・パブリックス
齋藤 純一
(早稲田大学教授)
齋藤 純一
(早稲田大学教授)
9 社会統合と公共性 社会統合は、19世紀の最後の四半世紀頃から、もっぱら国民の統合としてイメージされ、その際「国民の同質性」が想定されてきた。しかし、ほぼ1世紀後、この想定は文化的な多元化と社会・経済的な不平等の拡大によって問い直されるようになってきた。価値観の多元化および格差の拡大という条件のもとで社会統合をどのように構想しうるかについて考察し、人々が何を共有することによって社会の分断化を避けることができるかについて検討する。

【キーワード】
貧困、格差(不平等)、国民、リベラル・ナショナリズム
齋藤 純一
(早稲田大学教授)
齋藤 純一
(早稲田大学教授)
10 経済学と公共性 経済学において公共性をめぐる議論がどのように展開されてきたか、経済学で扱われる公共性にはどのような特徴があるかを見ていく。最初に、経済問題とは何かを示し、経済制度の基本要素を確認する。次に、財の分類を行ってから、経済学で取り上げられてきた、公共性を構成する公正性、公平性、効率性について説明する。そして、公共財を含めた様々な財の生産、供給、消費に関する社会的意思決定とそれらを決める基準について論じる。続いて、私的財を取引する市場がいかに公共性を推進しうるかを示す。最後に、公共性を構成する各原理が用いる情報について考察する。

【キーワード】
厚生経済学の基本定理、市場の失敗、外部性、公共財、評価原理の情緒的基礎、効率性、公正性、公平性、安定性、帰結主義、厚生主義、功利主義、アローの不可能性定理、リベラルパラドックス、潜在能力
須賀 晃一
(早稲田大学教授)
須賀 晃一
(早稲田大学教授)
11 危機と公共哲学Ⅰ この回のタイトルは「巨大災害と公共性」であり、東日本大震災のような想定外の巨大災害に対して、政府や自治体がどのような政策的対応を実施すべきかを、公共性の観点から考察する。災害の起こる確率は極めて小さい一方で、その被害が甚大で社会全体を危機的状況に陥れる巨大災害の場合は、適切な対応を取ることが困難である。そのようなケースで公共性が指示すべき基準とそれを考えるための枠組みについて、現代の正義論を用いて論じる。

【キーワード】
正義原理、道徳判断、原初状態、無知のベール、マキシミン原理、期待効用理論、事象の独立性、非同一性問題、予防原則、不偏の観察者
須賀 晃一
(早稲田大学教授)
須賀 晃一
(早稲田大学教授)
12 危機と公共哲学Ⅱ この回のタイトルは「社会保障と公共性」である。豊かになった現代社会においても、人々はしばしば危機的状況に直面する。すべてを個人の責任に帰すことが不可能であり、人生を揺るがすほどの大打撃を与える事件に対しては、社会的な保護が必要である。その手段の一つが、社会保障を始めとした、政府によって提供されるさまざまな再分配政策であり、個々人が加入する民間保険ではカバーすることができない事態への最後のセーフティネットとなっている。ここでは、社会保障などの果たすべき役割と成果を検討し、望ましい制度の基準と設計について、公共性の観点から考察する。

【キーワード】
社会保険、社会福祉、情報の非対称性、リスクプーリング、モラルハザード、逆選択、世代間の助け合い、賦課方式、積立方式、出来高払方式、定額払方式、世代間公平性
須賀 晃一
(早稲田大学教授)
須賀 晃一
(早稲田大学教授)
13 公共的問題としての科学技術 現代社会において科学技術は、正負問わずその影響が誰にも及びうるという意味で公共的な存在であり、その発展・利用に関わる意思決定は、広く誰にも開かれていることが求められる。その理由を理解する一歩として、科学技術に内在する「公共的問題」とは何かを、関連する基本概念と具体例を通じて考えてみる。

【キーワード】
公共的問題、科学の不定性、社会技術的想像力
平川 秀幸
(大阪大学教授)
平川 秀幸
(大阪大学教授)
14 科学技術の公共的問題にどう取り組むのか:民主性と専門性の対立を超えて 科学技術について、より良い意思決定を行うためには、しばしば対立的で排他的なものとされている「民主性」と「専門性」の間に相互補完的な関係を築く必要がある。一般の市民も含む多様な主体が関与・参加する科学技術の包摂的な民主化は、このような意思決定の実現にどう寄与するのか、そのための社会的・実践的な要件や課題は何かを、関連する基本概念と具体例を通じて考える。

【キーワード】
専門性の民主化、民主政の専門化、市民的認識論
平川 秀幸
(大阪大学教授)
平川 秀幸
(大阪大学教授)
15 国際社会における公共性 国際社会は、これまで主権国家間の関係として理解されてきたが、グローバル化が進展するなかで、人々が互いに及ぼす影響関係は国家内に完結するものではないことが明らかになってきた。また、WTOなどグローバルな制度とその運用が深刻な貧困を惹き起こしているという見方も提起されてきた。相互依存が深化し、共に対処すべきグローバル・イシューが顕在化している今日において、公共哲学は、制度や相互行為をコントロールする規範をどのようにとらえるべきかについて検討する。

【キーワード】
人権、制度を通じた加害、移民、責任
齋藤 純一
(早稲田大学教授)
齋藤 純一
(早稲田大学教授)
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