授業科目一覧
基盤科目
コース科目
卒業研究(全科履修生のみ)
夏季集中科目
メニューここまで

フィールドワークと民族誌('17)

※印刷用にはシラバスPDF版新規ウィンドウ をご利用ください
主任講師
稲村 哲也 (放送大学教授)
池谷 和信 (国立民族学博物館教授)
放送メディア
オンライン
配信期間(平成29年度)
第1学期:平成29(2017)年4月5日~8月31日
第2学期:平成29(2017)年10月5日~平成30(2018)年2月28日

講義概要

文化人類学の研究の基礎となる、特定の社会での「フィールドワーク」と、その成果を包括的な視点でまとめた「民族誌」を、講師自身の経験を基に具体的に論じる。この講義では、人間社会の最も基本的な営みとしての伝統的生業(狩猟採集、漁労、牧畜、農耕)を軸とするが、とくに、ふたりの主任講師が専門とする狩猟採集と牧畜を中心に据える。狩猟民、牧畜民などと呼ばれる人々は、熱帯林、乾燥地、寒冷地、高地など、農耕に不向きな環境のなかで、自然と対峙し、適応し、また自然を巧妙に利用して伝統的生業を維持してきた。一方で、それらの社会は、現在、急激な変化にさらされている。すでに大きく変化し、もはや狩猟社会や牧畜社会とは言えない社会もある。また、近代化した社会においても、狩猟採集や牧畜の要素が残されている場合もある。この講義では、そうした社会も取り上げる。民族誌の記述においては、生活や文化の多様な構成要素の間の相互関連性が重要であるから、生業とともに、環境との関わり、日常の暮らし、社会の仕組み、外部世界との関係、また、回によっては祭りや儀礼などの非日常の暮らし、歴史や通時的変化などについても、できるだけ包括的に論じる。この講義で扱う社会は、その多くが「周縁的社会」と言えるものだが、それらの社会も現代では世界の動きと大きくかかわっており、「周縁からの視点」によって、世界の動きがより鮮明に見えてくる。なお、講義にあたっては、講師自身が撮影した現地の写真や映像などを多用しながら、フィールドでの経験も紹介していく。
※詳しくはシラバス

開設年度
平成29年度
科目区分
コース科目(人間と文化コース(専門科目))
〔2009年度~2015年度〕専門科目(人間と文化コース)
〔2008年度以前〕専門科目(人間の探究専攻)
科目コード
5550017
単位数
2単位
単位認定試験
試験日・時限
単位認定試験
平均点
備考
 
このページのトップへ本文ここまで

授業の到達目標

人間社会を理解するための教養として、また、文化人類学を学ぶためのベースとして、フィールドワークと民族誌を通じて、一つの社会を多面的・包括的に見る視点を養う。また、個別社会が、その自然環境のなかで、また世界のなかで、どのように成り立っているのかを学ぶ。さらに、それらの社会が、グローバル化が進む現代において、どのように変化してきたのかを理解する。講義全体を通じて、多様な社会を比較し、周縁からの視点を持つことで、地球規模の人類社会のなりたちとその変化をより深く理解することも目指す。

成績評価の方法

成績評価は、小テスト(70%)、レポート(30%)の評価により行う。
※オンライン上の学習で評価します。放送授業と異なり、通信指導や学習センターにおける単位認定試験は行いません。また、単位修得できなかった場合の再試験制度もありません。

履修上の留意点

※本科目の受講には、インターネットなどの受講環境が必要です。詳細は本学ホームページをご参照ください。

シラバス

テーマ 内容 担当講師名
(所属・職名)
1 はじめに
-フィールドワークと民族誌の方法
この講義では、ふたりの主任講師の専門とする伝統的な生業である狩猟採集と牧畜を軸として、多様な社会を取り上げていくが、初回ではまず、生業の視点から地球全体を概観し、人類史におけるヒトの移動や拡散についても視野に入れる。その上で、フィールドワークとは何か、どのような方法で行われているのか、また、フィールドワークに基づいて書かれる民族誌とはどのようなものかを論じる。

【キーワード】
フィールドワーク、生業、狩猟採集、牧畜、農耕、民族誌
池谷 和信
(国立民族学博物館教授)
稲村 哲也
(放送大学教授)
2 日本の山村における資源利用
-現代に伝えられる伝統的生業
第2回と第3回ではまず日本を取り上げ、それによって、生業の視点から世界のなかに日本を位置づけたい。現在の日本の山村では、過疎化などの要因で人口減少が生じているが、意外にも廃村になった所は多くない。山村では、狩猟や家畜飼養、ミツバチの養蜂、焼畑、採集などの伝統的な生業が維持されてきた。ここでは、日本の山村の生業と生活を取り上げることから、日本社会の特質を考察する。また、世界の狩猟や牧畜、農耕と日本の山村の生業の状況を比較する。

【キーワード】
山村、狩猟、ミツバチ、焼畑、採集
池谷 和信
(国立民族学博物館教授)
稲村 哲也
(放送大学教授)
3 日本における獣害問題
-動物と人との新しいかかわり方
最近の日本の農山村や都市において、獣害が深刻な問題とみなされている。ここでは、クマ、イノシシ、サルなどを対象にして獣害問題へのアプローチの仕方、その実際を把握することから、問題の背景について考える。また、ブータンなどアジアのほかの地域との比較も行う。

【キーワード】
獣害、クマ、イノシシ、サル、ブータン
池谷 和信
(国立民族学博物館教授)
稲村 哲也
(放送大学教授)
4 ヒマラヤの森の狩猟採集民 この回では、ネパール・ヒマラヤの森を中心に移動しながら、サルの狩猟を行うとともに、森の木を加工して農耕民の穀物と交換する、ユニークな狩猟採集民であるラウテを取り上げる。彼らがどのような伝統的生活を営んできたか、またネパールの内戦、王政廃止、民主化など劇的な社会変動のなかでどのように変化しているかについて論じる。

【キーワード】
ネパール・ヒマラヤ、サルの狩猟、木地師、内戦、王政廃止、民主化
稲村 哲也
(放送大学教授)
池谷 和信
(国立民族学博物館教授)
5 寒冷地における狩猟の現状 この回では、極寒の地で生活してきたチュクチやイヌイットの人々を取り上げ、彼らが寒冷地にどのように適応し、セイウチやクジラなどを対象にした海獣狩猟や漁労を中心とする伝統的な生業と暮らしをどのように営んできたのか、また、現代社会のなかで、どのように変化しているのかについて論じる。

【キーワード】
寒冷地、海獣狩猟、漁労、チュクチ、イヌイット
池谷 和信
(国立民族学博物館教授)
稲村 哲也
(放送大学教授)
6 アフリカ乾燥地域の狩猟民 この回では、世界の狩猟採集民の現在を展望したあとに、アフリカ南部のカラハリ砂漠に居住するサン(ブッシュマン)と呼ばれる狩猟採集民について、フィールドワークのデータを中心に、また、いくつかの先行研究を踏まえて、彼らの伝統的な生活、文化、社会、そして現代における変化について論じる。

【キーワード】
カラハリ砂漠、サン、狩猟採集、移動、定住化
池谷 和信
(国立民族学博物館教授)
稲村 哲也
(放送大学教授)
7 アマゾン熱帯雨林で農耕と狩猟等を営む人々 この回では、ブラジルやエクアドルのアマゾン熱帯雨林で独自の生活を営んできた諸民族を取り上げ、キャッサバ(マニオク、マンジョカ)やバナナなどの小規模農耕と狩猟採集、漁労などの伝統的な生業と暮らしについて、またその現代における変化について論じる。

【キーワード】
アマゾン、キャッサバ(マニオク)、小規模農耕、狩猟採集、漁労
池谷 和信
(国立民族学博物館教授)
稲村 哲也
(放送大学教授)
ゲスト:山口 吉彦(アマゾン民族館・アマゾン自然館元館長)
8 アンデス高地における集団追い込み猟チャク ペルーを中心とする中央アンデス高地でインカ時代にチャクという一種の集団追い込み猟が行われていた。ラクダ科の野生動物(ビクーニャとグアナコ)は捕獲されたあと、毛を刈られて、生きたまま解放された。この「殺さない狩猟」は、ペルーで1993年以降に復興してきた。この回では、現代によみがえったチャクの背景と実際、その学術的な意味、現代の先住民社会に与える影響などについて論じる。

【キーワード】
ペルー、アンデス、インカ、チャク、ビクーニャ、グアナコ
稲村 哲也
(放送大学教授)
池谷 和信
(国立民族学博物館教授)
9 アンデス高地で牧畜を営む人々 この回では、ペルーの中央アンデスの高原でラクダ科の家畜(リャマ、アルパカ)を飼う、ケチュア(インカの末裔)の牧民について取り上げる。彼らは、熱帯高地特有の生態系に適応した、定牧(定住的牧畜)を営んでいる。彼らはまた、峡谷に住む農民と密接な関係を持ち、土着の信仰にカトリックが習合した、独自の信仰をもっている。

【キーワード】
ペルー、アンデス、高原、リャマ、アルパカ、定牧、牧民、農民、カトリック
稲村 哲也
(放送大学教授)
10 ヒマラヤ高地とチベット高原で牧畜と農耕を営む人々 ヒマラヤ高地とチベット高原では、ヤク、あるいはヤクとウシのハイブリッド(異種間交雑種)の移牧や遊牧を営む牧民が居住している。また、彼らの多くは、オオムギ、ソバなどを栽培する農耕も営んでいる。この回では、地域によって異なる生業や移動の形態について比較検討し、移牧と遊牧の概念を整理し、その多様性について論じる。

【キーワード】
ネパール、ヒマラヤ、ヤク、移牧、遊牧、オオムギ、ソバ、チベット仏教
稲村 哲也
(放送大学教授)
11 ヒマラヤ高地(ブータン)で牧畜と農耕を営む人々 ブータンのヒマラヤ高地では、ヤク、ゾモ(ハイブリッド)の移牧とともに、熱帯性のウシの仲間であるミタンとウシのハイブリッドであるジャツァムの移牧が行われている。地域によって、専業の牧民と、農牧複合を行う人々(農牧民)がいる。この回では、ブータンにおけるいくつかの地域を比較し、その生業、伝統的な生活、またチベット(中国)とインドの国境紛争の影響などを論じる。

【キーワード】
ブータン、ヒマラヤ、ヤク、ゾモ、ミタン、ジャツァム、中印国境紛争、遺伝学
稲村 哲也
(放送大学教授)
12 モンゴル草原の遊牧民 この回では、モンゴルで5種類の家畜(ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウシ、ラクダ)を飼って遊牧を営むモンゴル人とモンゴル西部地域のカザフ人を取り上げ、草原・乾燥地域の遊牧を中心とする彼らの生活や信仰などを紹介する。モンゴルでは、1990年以後、社会主義から民主主義・市場経済へと急激な変化をしてきたが、その変化の過程についても論じる。

【キーワード】
モンゴル、草原、乾燥地域、遊牧、カザフ、社会主義、市場経済化
稲村 哲也
(放送大学教授)
13 タイガの森(モンゴル最北部)でトナカイを飼う人々 この回では、モンゴル最北部の森林タイガ地域でトナカイを飼う、モンゴル語でツァータン(トナカイを飼う人)と呼ばれる人々を取り上げる。彼らは、もともとは西のトゥバ共和国を中心に、森でトナカイを飼い、狩猟も行っていたが、独露戦争(第二次世界大戦)下でモンゴルに逃れてきた。モンゴルでも、社会主義時代の家畜集団化、市場経済化の大きな変化にさらされてきた。

【キーワード】
モンゴル、山岳タイガ、ツァータン、トゥバ、トナカイ、社会主義、市場経済化
稲村 哲也
(放送大学教授)
14 シベリアで遊牧を営む人々 ロシアの広大な寒冷地域であるシベリアには、トナカイ遊牧などを行い、狩猟や漁労を組み合わせた、多様な諸民族が伝統的な生活を営んできた。彼らの生活は、ソビエト連邦における社会主義化政策などにより、集団化や国営化が進行して大きな変化をこうむってきた。後半では、タイガとツンドラ(シベリア)のトナカイ遊牧を比較する。

【キーワード】
ロシア、シベリア、ソビエト連邦、国営農場、集団農場、トナカイ、ウマ
池谷 和信
(国立民族学博物館教授)
稲村 哲也
(放送大学教授)
15 まとめ
-民族誌の比較と現代的課題
ここまでに取り上げてきた、狩猟採集(及び漁労)を営む社会、牧畜を営む社会について、環境利用、集団構成、移動、農耕社会など外部世界との関係、近年の変化などについて比較する。それをベースとして、人と自然の関係、個別社会と世界との関係、グローバル化などの現代的課題等について議論し、フィールドワーク、民族誌、そして文化人類学研究についてまとめる。

【キーワード】
環境利用、集団構成、移動、外部世界との関係、変化、比較
稲村 哲也
(放送大学教授)
池谷 和信
(国立民族学博物館教授)
このページのトップへ本文ここまで
授業科目案内 教養学部 放送大学