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死生学入門('14)

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主任講師
石丸 昌彦 (放送大学教授)
放送メディア
ラジオ
放送時間(平成29年度)
第1学期:(木曜)9時00分~9時45分
第2学期:(土曜)19時00分~19時45分

講義概要

超高齢社会を迎え、人生の終わりを見つめこれに向かって歩んでいく時間は著しく長くなった。巨大な災害が一瞬にして数多くの人命を奪うありさまに直面したこともあって、「死」と隣り合わせの「生」についての人々の関心はこれまでになく高まっている。本科目では、不可避の宿命である「死」を人間がどのように受け止め、それをどのように「生」のあり方に反映しているかに注目し、さまざまな角度からこのテーマについて考える。執筆者一同の専門とする医療・看護領域を中心としつつ、はば広い文化領域を展望することを目ざしている。
※詳しくはシラバス

開設年度
平成26年度
科目区分
コース科目(全コース開設(総合科目))
〔2009年度~2015年度〕総合科目
〔2008年度以前〕専門科目(その他)
科目コード
1847481
単位数
2単位
単位認定試験
試験日・時限
平成29年度 第1学期:平成29年7月29日(土曜)5時限(14時25分~15時15分)
平成29年度 第2学期:平成30年1月28日(日曜)8時限(17時55分~18時45分)
単位認定試験
平均点
(平成28年度 第1学期)83.7点
(平成28年度 第2学期)79.9点
備考
 
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授業の目標

「死」と「生」の意味づけはきわめて個人的なものである一方、社会的な背景や伝統の影響を強く受けている。本科目の履修を通じて受講者が「死」と「生」のそのような二面性を明確に意識し、社会の広がりと自己の内面とをバランス良く見渡しつつ、それぞれの死生観を育んでいくことを期待する。そうした作業に役立つ基礎知識と素材を提示し、考える機会を提供することが本科目の目標である。知識を習得すること以上に、考える姿勢を養うことを重視したい。

履修上の留意点

受講に先立つ予備知識は特に必要ないが、おのおのの関心に応じて広く関連事項を学んでいただきたい。自分自身の考えを明確にしていく主体性と共に、異なる立場や考え方に対して耳を傾ける謙虚な姿勢が、このテーマでは特に重要である。

シラバス

テーマ 内容 執筆担当講師名
(所属・職名)
放送担当講師名
(所属・職名)
1 死生学とは何か 死生学は、複雑化した死生の問題に対応すべく生まれた新しい学問である。近代社会の進展は、人の死を隅々まで把握し公にすることを可能にした。また、医療者等の専門家は、死を自らの範疇に囲い込み、人々の日常生活から遠ざけた。加えて、都市化により伝統社会の解体が進み、病や死に応ずる集合的慣習が失われた。死生の問題は、当人や近親者等の私的な範囲か医療者等の専門家に頼ることで対処されることになった。さらに、死を囲い込んだ医療者は、近代医療の進展がもたらした新たな命の問題に直面することになった。これら死生をめぐる社会的状況が、死生学の登場と発展を促した。本章では、死生学の展開、定義、射程についても概観する。

【キーワード】
近代化の進展、公的な死と私的な死、死生観、終末期医療、死別悲嘆、デス・エデュケーション
山崎 浩司
(信州大学准教授)
山崎 浩司
(信州大学准教授)
2 死生観と宗教 死生観に関する人々の問いに答えを与えることは、宗教の重要な役割である。宗教の発信するメッセージが人々の死生観を支えるいっぽう、宗教の側でも他界を求める人々の心の求めに応じて教義を発展させてきた。今日の世界では、地域や文化によって宗教に対する人々の態度には大きな開きがあるが、宗教の影響は依然として死生観を考えるうえで重要な要因である。また、生命倫理に関する諸問題が浮上するにつれ、あらためて宗教の意義が問われている。本章では死生観と宗教のこのようなかかわりについて考察する。

【キーワード】
宗教、他界、キリスト教、仏教、神道、生命倫理
石丸 昌彦
(放送大学教授)
石丸 昌彦
(放送大学教授)
3 日本人の死生観 本章では日本人の死生観を歴史的に展望する。突発的に災害をもたらす自然条件や、仏教・神道と先祖の祭り、儒教と武士道などの文化的背景は、日本人の死生観に強い影響を与えてきた。明治維新以降の日本人は、開国に伴う大量かつ急速な情報の流入によってアイデンティティの動揺を来し、その中で死生観も大きく揺さぶられた。戦時体制下には偏った死生観が個人に押しつけられ、戦後はその反動として死生観に対する関心の低い時期が長く続いたが、近年ようやく冷静な目で生と死を見つめ考える機運が醸成されつつある。

【キーワード】
自然災害、固有信仰、武士道、文学、死生観の復権
石丸 昌彦
(放送大学教授)
石丸 昌彦
(放送大学教授)
4 喪と追悼:逝きし人〈死者〉と生者のつながり 死生観は自分自身の死に対する思索を深めるだけではなく、生きていく間に他者の死、死んだ人間と生きている自分がどのような関係を構築していくか、という課題も問いかけてくる。本章では、伝統的な喪、追悼、喪葬などの儀式を概観しながら、生者がどのように逝きし人〈死者〉との新たなつながりを作ろうとしているかを考えたい。

【キーワード】
葬儀・葬送、喪、看取り、死者と生者、回想
中山 健夫
(京都大学教授)
中山 健夫
(京都大学教授)
5 死生観:国と地域の視点から 死生観は「他人の死のありさま」に大きな影響を受ける。本章では国と地域の視点から、死亡を扱う統計で明らかにされる死の原因・理由、死の場所など死の態様、その延長として近年深刻化している孤立死の問題を考える。さらに「多くの人の死」が生じる災害という非日常でありながら、避けて通ることのできない問題を通して、苛烈な体験から死生観を問うことの困難さに触れたい。

【キーワード】
寿命、死因、在宅、孤立死、ソーシャルキャピタル(社会関連資本)、災害、PTSD
中山 健夫
(京都大学教授)
中山 健夫
(京都大学教授)
6 マスメディアで死生について考える 死生の問題は、老いた時、病いや障害に直面した時にだけ考えさせられるものではない。人は何気ない日常生活の中でも死生について考えさせられる。特にマスメディアには死生に関する情報が溢れており、読者や視聴者は実体験せずとも、それらを死生観や人生観を問いなおすべく活用できる。しかし、そもそも死生を題材にしたマスメディアの特徴は、どんなふうに捉(とら)えられてきたのだろうか。そして、どのようにマスメディアを活用すれば、死生に関する考察を深められるのだろうか。本章では、あるマンガを題材に死生の考察の具体例を示し、最後にその手順と留意点を確認する。

【キーワード】
マスメディア、死のポルノグラフィー、死のガイドライン、マンガ、メディア・リテラシー
山崎 浩司
(信州大学准教授)
山崎 浩司
(信州大学准教授)
7 「生と死」を生きる本人からの発信 1991年に誕生した根拠に基づく医療(evidence-based medicine: EBM)は世界の医療の大きな潮流となった。それに続き、一般論としてのエビデンスへの対照から、患者個人の内面的体験を重視するナラティブ・物語に基づく医療(narrative based medicine:NBM)が1999年に提唱され、多くの関心を集めている。今回は病気とともに生きる人々の手による「闘病記」の分析、がん患者の語りをデータベース化しインターネット上で公開する取り組みや、医療者教育への可能性などを通して、「生と死」を生きる本人からの発信という視点から死生学を考える。

【キーワード】
患者の語り・体験、ナラティブ、闘病記、インターネット、医療者教育
中山 健夫
(京都大学教授)
中山 健夫
(京都大学教授)
8 老いと死 老いとともに人は肉体的な衰えを自覚し、死に対する覚悟と準備を求められる。いっぽうで老いはエリクソンが指摘したとおり、発達の最終段階としての成熟と完成に至るプロセスであり、英知という肯定的な意味を獲得しうる段階でもある。こうした老年期を生きる人々が、目の前に迫る死とどのように向き合い、何を想い、いかなる最期を迎えているのか。超高齢社会を迎えた日本社会における老いの現状をふまえつつ、老いという生の成熟と、死という生の完成について考えてみたい。

【キーワード】
超高齢社会、老い、成熟、サクセスフルエイジング、健康な死
井出 訓
(放送大学教授)
井出 訓
(放送大学教授)
9 病い経験と「生」 病いがある人は、そうでない人々に比べて、「死」を意識したり様々な困難に直面したりすることが多いだろう。その病い経験は、その人の「生」に混乱を生じさせ、場合によっては将来展望や生きがい感を喪失させ、精神健康を悪化させるなど、ネガティブな影響を健康面にもたらす。しかしながら一方で、人生の再構築を図り、あるいはストレスをあたかも糧にするかのごとくに、家族や友人との関係の強化、自分自身の成長など、ポジティブな影響をもたらす場合も多いとされる。本章では、病い経験の中で、「病い」が「生」に対してもたらす影響について、ネガティブな面とともにポジティブな面について考えていく。

【キーワード】
病い経験、慢性疾患、人生の再構築、ストレス関連成長
井上 洋士
(放送大学客員教授)
井上 洋士
(放送大学客員教授)
10 遺族の喪失体験とグリーフワーク 家族や友人など近い関係の人と死別し喪失した後の経験については、悲嘆やグリーフワークとしてしばしば論じられる。ここではまず、グリーフワークの基本的な考え方と歴史的動向について紹介する。また、犯罪被害などviolent deathによる死別と疾患などnatural deathによる死別との違いをはじめ、どのような死別であったのかによって遺族の悲嘆やグリーフワークの様相が大きく異なることを紹介する。特に、段階的に進むとしばしば指摘されていたグリーフワークだが、そう考えるのは必ずしも適切ではないと近年では指摘されていることも紹介する。さらに、遺族への接近や支援の仕方の一端についても学ぶ。

【キーワード】
死別、悲嘆、グリーフワーク、グリーフケア
井上 洋士
(放送大学客員教授)
井上 洋士
(放送大学客員教授)
11 自己決定権 現代社会においてはさまざまな領域で、自己に関連する決定はあくまでも本人自身に委ねられるという自己決定権が強く叫ばれている。本章では医療における自己決定権に焦点を当てる。歴史を振り返ってみて、自己決定権をまったく無視したヒトを対象とする科学研究がどのように行われてきたのだろうか。そして、その反省をもとに成立した現代医療における自己決定権について考えていく。

【キーワード】
自己決定権、ヒポクラテスの誓い、人体実験、ヘルシンキ宣言、インフォームド・コンセント
高橋 祥友
(筑波大学教授)
高橋 祥友
(筑波大学教授)
12 ターミナルケア 医療技術が画期的に進歩した現代社会においても、人はいつかかならず死を迎える。人生の終末期において、単に延命を図るのではなく、身体的苦痛や心理的苦痛を和らげ、生活の質を保ちつつ、穏やかに死を迎えられるようにするには、どのような点について考えていかなければならないのだろうか。誰にもいつか迫り来る死とその際にどのような治療を望むかについて考えていく。

【キーワード】
ターミナルケア、緩和ケア、終末期医療、ホスピス、QOL
高橋 祥友
(筑波大学教授)
高橋 祥友
(筑波大学教授)
13 自殺予防 わが国では1998年以来、年間自殺者数約3万人という緊急事態が続いている。このような現状を直視して、2006年には自殺対策基本法が成立し、自殺予防は社会全体で取り組むべき課題であると宣言された。本章では自殺予防のために、その現状、予防の基本概念、対応の原則について解説する。早期の段階で問題に気づき、適切な対応をとることで、自殺予防の余地は十分に残されている。

【キーワード】
自殺、自殺未遂、危険因子、事故傾性、自殺対策基本法
高橋 祥友
(筑波大学教授)
高橋 祥友
(筑波大学教授)
14 尊厳死 最近では、安楽死という言葉を用いずに、尊厳死がしばしば使われているが、尊厳のある死を迎えるというのはどのような意味があるのだろうか。世界に見られる尊厳死の合法化の動きを追いながら、消極的尊厳死、積極的尊厳死、医師の幇助による尊厳死などさまざまな概念を解説する。

【キーワード】
消極的尊厳死、積極的尊厳死、医師の幇助による尊厳死
高橋 祥友
(筑波大学教授)
高橋 祥友
(筑波大学教授)
15 死生学の理論と展望 本コースのまとめとして、死生学の基本的な共通言語たるべき理論をいくつか概観しつつ論じる。取り上げるのは、死のタブー化論、公認されない悲嘆論、環状島理論、共感都市理論であり、いずれも死生学原産とはいいがたいが、この学際的な学問の基盤を固め、今後の発展を促すと考えられる理論である。最後に死生学の展望についても若干考察し、核・原子力の問題に取り組んでゆくことが、特に日本の死生学にとってひとつの重要な役割であることを示唆したい。

【キーワード】
死のタブー化、公認されない悲嘆、環状島、共感都市、核・原子力
山崎 浩司
(信州大学准教授)
山崎 浩司
(信州大学准教授)
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