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経済政策('17)

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主任講師
松原 隆一郎 (放送大学教授)
放送メディア
ラジオ
放送時間(2018年度)
第1学期:(火曜)17時30分~18時15分

講義概要

経済学では、経済政策はもっぱら市場では行いえないことがらを補完するとされている。また政策を設計する際の目標は、合理的な個人が効率的に幸福を追求することとされている。つまり市場も政策も、ともに個人の幸福追求の道具とみなされている。しかし自然環境や人間関係、文化伝統といった市場が前提とせざるをえない事柄は、いずれも道具や設計の対象にはなりえない。また不確実性が強いと、効率性の追求は幸福を引き下げかねない。それらをも考察の視野に納めるならば、経済政策はどのようなものになるだろうか。全15回で考察してみたい。
※詳しくはシラバス

開設年度
2017年度
科目区分
社会経営科学プログラム
科目コード
8930694
単位数
2単位
単位認定試験
試験日・時限
2017年度 第2学期:2018年1月19日(金曜)8時限(17時55分~18時45分)
2018年度 第1学期:2018年7月28日(土曜)1時限(9時15分~10時05分)
単位認定試験
平均点
(2017年度 第1学期)77.0点
備考
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授業の目標

公共財や金融・財政政策、リスクについて再考し、それにもとづいて経済政策を見直す。

履修上の留意点

特になし。

シラバス

テーマ 内容 執筆担当講師名
(所属・職名)
放送担当講師名
(所属・職名)
第Ⅰ部 市場を活用するための条件
1 「効率-公正」モデルから「不確実性-社会的規制」モデルへ 経済政策は「厚生経済学の基本定理」をもとに、それが達成されない場合の補正手段とされることが多いが、それは社会主義計画経済を想定した政策構想である。不確実性と社会・自然・文化といった市場外の共有資本を組み込んだ市場社会の経済政策はどのような構想をもつべきか。

【キーワード】
厚生経済学の基本定理、経済計算論争、漸進主義
松原 隆一郎
(放送大学教授)
松原 隆一郎
(放送大学教授)
2 市場と共有資本
-社会・自然・文化-
生産要素のなかでももっとも本源的なものに、社会・自然・文化がある。社会関係資本・自然資本・文化資本を合わせて「共有資本」と呼ぶ。共有資本と市場が共存するにはどのような条件が必要か。

【キーワード】
コモンズ、景観利益、共有地の悲劇、日本の漁業、IQ
松原 隆一郎
(放送大学教授)
松原 隆一郎
(放送大学教授)
3 市場と競争 市場では注文を受けてではなく見込みで生産されるため、販売には不確実性がつきまとう。在庫を調整しつつ消費者の主観的な欲望に答えていくという経済観はミーゼス・ハイエクらオーストリー学派が考案した。不確実性のもとで平等な市場競争を実現するにはどのような条件と限界があるか。

【キーワード】
見込み生産、独禁法、コンテスタビリティ、幼稚産業保護、金融規制
松原 隆一郎
(放送大学教授)
松原 隆一郎
(放送大学教授)
4 市場と参加 市場競争が平等に行われるための条件は、企業活動だけでなく労働に対しても開かれていなければならない。そのために識字・計算能力を中心とする基礎教育が必須であり、それを明治の初期に導入した日本は近代化に成功している。また、家庭における文化資本も学力には欠かせず、不足する場合には公的施設で補う必要がある。さらに非正規雇用が正規雇用に昇進されないのは不平等であり、対策が望まれる。

【キーワード】
義務教育、識字、参入障壁、文化資本、文化施設、選抜、非正規雇用、雇用ポートフォリオ
松原 隆一郎
(放送大学教授)
松原 隆一郎
(放送大学教授)
第Ⅱ部 市場社会を補完する制度
5 社会保障 経済や社会には突発的な「危機」が生じ、それへの平等な備えとして公的福祉が必要になる。社会保険への強制加入が必要になるのは、保険者と被保険者との間で情報が非対称であるときに逆選択やモラル・ハザードが起きるのを防ぐためだが、医療保険・年金ともに未納問題に悩まされている。

【キーワード】
社会保障、公的福祉、社会保険、逆選択、モラル・ハザード、強制加入、ミーンズ・テスト、医療保険、年金
松原 隆一郎
(放送大学教授)
松原 隆一郎
(放送大学教授)
6 公共財 公共財には非競合性・非排除性という性格があり、そのせいで費用負担でただ乗りが起きやすい。そこで費用便益分析を施し税負担によって公共事業として供給されることがある。大震災のような危機に対しては国土強靱化が必須となるが、それは堤防のようなハードだけでなく防災教育というソフト面も必要になる。ハード面にはさらに、共通資本としての自然や文化を損なわない配慮が求められる。

【キーワード】
競合性、排除性、クラブ財、コモンプール財、フリーライダー、費用便益分析、ナショナル・レジリエンス、公共財と共通資本の対立
松原 隆一郎
(放送大学教授)
松原 隆一郎
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7 外部性 市場活動が金銭を伴わない外部性を持つとき、効果が正であるものにメリット財がある。負であるものには交渉によって生産量を合意しうる迷惑行為と、受忍の限度外にある公害病や電柱があるが、被害の大きさや原因子との因果関係が明るみに出ると、権利の割り当てを政府が再配分する可能性がある。

【キーワード】
外部経済としてのメリット財、外部不経済、迷惑行為、受忍限度外、コースの定理、権利割り当て変更、無電柱化、水俣病
松原 隆一郎
(放送大学教授)
松原 隆一郎
(放送大学教授)
8 企業と倫理 外部不経済を制御する義務は、社会の基本的ルールとして企業に課される。しかし株式会社が有限責任であると、ルールを逸脱する可能性がある。資本家・債権者その他関係者のいずれが企業の無謀な行動を監視するかは、それぞれの責任の大きさによる。しかし原発事故のようにあってはならない事故を避けるには、経営者がモラル・ハザードを起こさないような罰則規定が求められる。

【キーワード】
社会の基本的ルール、株式会社、有限責任、資本充実の原則、所有と経営の分離、株式持ち合い、機関投資家、Sox法、原発事故
松原 隆一郎
(放送大学教授)
松原 隆一郎
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第Ⅲ部 平時と危機、財政と金融
9 財政政策 財政は一般政府と公的企業、財政投融資などの複雑な収支から成っている。租税負担には、累進制をどれだけ認めるか、徴収の簡素化や厳正さをいかに確保するかで負の所得税や付加価値税に期待がかけられてきた。しかし高齢化や避税行動によって財政赤字が累積しており、さらなる負担が予想されている。

【キーワード】
一般会計、特別会計、財政投融資、租税原則、負の所得税、付加価値税、財政危機、避税、プライマリー・バランス
松原 隆一郎
(放送大学教授)
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10 金融政策 伝統的な金融政策は金利の操作を中心として中央銀行が行ってきた。しかしゼロ金利まで金利を下げても景気浮揚効果がないとして、日銀は世界に先駆けて量的緩和から量的・質的緩和(リフレ)政策へと舵を切った。しかしこれには誤投資を誘発する、非常事態からの「出口」がないなどの批判がある。

【キーワード】
中央銀行のバランスシート、イールド・カーブ、非伝統的金融政策、デフレ、フォワード・ガイダンス、出口問題
松原 隆一郎
(放送大学教授)
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11 危機における財政政策と金融政策 経済政策が対象とする危機には、金融危機・財政危機・通貨危機からなる経済危機と大災害からの復興がある。経済危機は複合的になりがちで、プルーデンス政策により事前に備えそれでも勃発したなら財政・金融政策で総力を挙げて対応すべきである。復興においては個人財産の再建であっても支援すべきだが、人口縮小下では過剰になると逆効果の可能性がある。

【キーワード】
金融危機、財政危機、通貨危機、プルーデンス政策、バジョット・ルール、災害復興、被災者生活再建支援法、企業の再建
松原 隆一郎
(放送大学教授)
松原 隆一郎
(放送大学教授)
12 国際経済政策 比較優位説は双方の国にとって貿易が経済状態を向上させると説くが、現実にはアヘン戦争など帝国主義戦争を通じて社会的規制を破壊しつつ世界に拡がった。現代の国際経済においては対外債権の増加を目標にしても、通貨価値によっては無駄になる可能性がある。開放経済においては、金融政策・相場の安定・資本移動の自由を両立させることができない点にも留意が必要になる。

【キーワード】
比較優位説、アヘン戦争、国際収支表、基軸通貨国特権、金本位制、ブレトンウッズ体制、開放経済のトリレンマ
松原 隆一郎
(放送大学教授)
松原 隆一郎
(放送大学教授)
第Ⅳ部 市場社会の変容と再生
13 市場と経済構造 市場競争は慣行をいかに形成するかを通じて行われる。戦後日本では高度成長期に裁量的金融政策を中核とする長期的に安定した経済システムが慣行として成立したが、政治的には裁量をルールに、経済的には構造改革によって解体された。しかしグローバリゼーションと国家主権、民主主義の三者は両立せず、社会的規制を中心に市場を埋め込むよう慣行は再編されるべきである。

【キーワード】
日本型経済システム、構造、裁量、透明化、トリクル・ダウン、政治的トリレンマ、市場の埋め込み
松原 隆一郎
(放送大学教授)
松原 隆一郎
(放送大学教授)
14 農業のゆくえ 農業の就労人口は日本では減り続けているが、それには戦後の農業保護政策がかかわっており、一律の減反政策は市場原理を損なってきた。また補助金や公共事業による地価上昇を狙った耕作放棄地も拡大してきた。農業を市場で育てるには多様性が必要であり、遺伝子組み換え作物と有機農業が併存しうるためには、消費者が選択しうるよう情報開示を義務づけねばならない。

【キーワード】
食糧安全保障、ペティ・クラーク法則、農協、食糧管理法、減反、耕作放棄地、食の終焉、自然農法、情報開示義務
松原 隆一郎
(放送大学教授)
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(放送大学教授)
15 地方経済政策 戦後日本の地方自治は、「豊かさ・等しさ」を全国に拡げるのに効力を発揮した。しかし全国一律にサービスが行き渡ってから後は、地方分権によっても地域が個性を発揮できずに東京圏への人口移動が続いている。東京的なものの模倣によらず、地域の自然・社会・文化という共通資本を生かした地方創生が求められている。

【キーワード】
大合併、社会資本整備、ナショナル・ミニマム、地方分権、足による投票、東京一極集中、東京化の失敗、共通資本による地方再生
松原 隆一郎
(放送大学教授)
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