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現代の危機と哲学('18)

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主任講師
森 一郎 (東北大学大学院教授)
放送メディア
ラジオ
放送時間(2018年度)
第1学期:(月曜)13時00分~13時45分

講義概要

私たちは、現代世界が深刻な危機に瀕していることを肌で感じている。漠たる不安に襲われ、何が真に問題なのかと問い、自分で考えようとするとき、ひとはすでに哲学し始めているのである。本講義では、現代人の思考にとっての手引きとなる巨星たちに学び、今日的問題を独自に考えてゆく。まず、現代の危機を予告した十九世紀末の哲学者ニーチェの言葉「神は死んだ」に着目する。続いて、二十世紀という危機の時代を生き抜いた二人の哲学者、ハイデガーとアーレントに学びつつ、死と誕生、労働と行為、大学と学問、科学技術といったテーマに取り組む。
※詳しくはシラバス

開設年度
2018年度
科目区分
コース科目(人間と文化コース(専門科目))
〔2009年度~2015年度〕専門科目(人間と文化コース)
〔2008年度以前〕専門科目(人間の探究専攻)
科目コード
1554964
単位数
2単位
単位認定試験
試験日・時限
2018年度 第1学期:2018年8月5日(日曜)5時限(14時25分~15時15分)
単位認定試験
平均点
備考
 
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授業の目標

現代哲学を学ぶとは、たんに哲学史の知識を覚えることでも、合理的思考を身につけることでもない。私たち現代人の実存に食い込む根本的問いを摑み、その問いにこだわることである。この一事を体得し、身の回りの問題を自分でじっくり考える力を養う。そのことによって、哲学的思考が現代日本において生き生きと働きうることを、喜びをもって実感する。

履修上の留意点

特になし。

シラバス

テーマ 内容 執筆担当講師名
(所属・職名)
放送担当講師名
(所属・職名)
1 哲学は戦慄から始まる 二〇〇一年の米国テロ事件と、その十年後の東日本大震災という出来事が、問いの出発点となる。現実感を欠いた恐るべき光景を目撃したわれわれは、いったいこれは何か、と問わずにいられなくなる。現代における哲学の始まりは、驚嘆というより、戦慄である。

【キーワード】
9・11テロ、3・11大震災、原発事故、哲学の始まり
森 一郎
(東北大学大学院教授)
森 一郎
(東北大学大学院教授)
2 「神は死んだ」その1 ニーチェ『愉しい学問』の一〇八番にお目見えし、一二五番で「狂人」の口を通して語られる「神の死」とは、いかなる事態を意味する言葉なのか。テクストを読み味わいつつ考えてゆく。それは、既成宗教の凋落を意味する以上に、伝統的世界観の瓦解を指すものであった。

【キーワード】
『愉しい学問』、「新たな戦い」、「狂人」、科学革命
森 一郎
(東北大学大学院教授)
森 一郎
(東北大学大学院教授)
3 「神は死んだ」その2 ニーチェは『ツァラトゥストラはこう言った』でも、主人公に「神は死んだ」と語らせている。とくに第四部では、神は同情ゆえに死んだ、とされる。だが、同情道徳を生み出した近代という大枠そのものこそ、「神の死」によってテーマとされた問題現象にほかならない。

【キーワード】
ツァラトゥストラ、「最も醜い人間」、近代最大の出来事
森 一郎
(東北大学大学院教授)
森 一郎
(東北大学大学院教授)
4 学問の危機と哲学 『愉しい学問』の三四四番では、「真理への意志」が自己批判され、真理という概念自体にひそむ信念がえぐり返される。十九世紀末のニーチェに続いて、二十世紀に入って学問の意味への問いを鋭敏に察知した学者が、ヴェーバーとフッサールであった。

【キーワード】
真理への意志、生と学問、ヴェーバー、フッサール
森 一郎
(東北大学大学院教授)
森 一郎
(東北大学大学院教授)
5 終わりへの存在 実存に着目したヤスパースに触発され、学問の危機を打開する独自の存在論へと踏み出したのが、ハイデガーであった。その主著の核心をなす「死への存在」について学ぶ。死を可能性として持ちこたえようとする思索は、有限性にもとづく時間論を稔らせる。

【キーワード】
実存、限界状況、可能性としての死、存在と時間
森 一郎
(東北大学大学院教授)
森 一郎
(東北大学大学院教授)
6 死への共同存在 「死すべき者たち」という古代的人間観に近しいハイデガーの「死への存在」は、複数性において考えられた場合、ホッブズが『リヴァイアサン』で展開した自然状態=戦争状態論に、思いがけず接近する。万人の死にやすさの平等が、テロリストの自滅戦法を生む。

【キーワード】
可死性、複数性、ホッブズ、殺されやすさの平等
森 一郎
(東北大学大学院教授)
森 一郎
(東北大学大学院教授)
7 大学の危機と哲学 ナチ政権が成立した一九三三年、ハイデガーが行なったフライブルク大学学長就任演説『ドイツの大学の自己主張』は、彼なりの大学改革案であった。現代の大学改革問題にも通ずるこの事例を振り返り、学問と政治ののっぴきならない間柄について考える。

【キーワード】
『ドイツの大学の自己主張』、民族と大学、テオーリア
森 一郎
(東北大学大学院教授)
森 一郎
(東北大学大学院教授)
8 理論と実践もしくは観照と行為 ハイデガーは、理論と実践の分離の起源を尋ねて、アリストテレス『ニコマコス倫理学』における「ソフィア」と「フロネーシス」の区別に行き着き、この理論知と実践知の理想の合体を、実存の本来性として見出そうとした。それは、哲学と政治の合体を意味した。

【キーワード】
アリストテレス、プラクシスとフロネーシス、哲人王国家論
森 一郎
(東北大学大学院教授)
森 一郎
(東北大学大学院教授)
9 労働のゆくえ ハイデガーは学長時代、大学は「勤労奉仕」の場たるべしと訓諭したのみならず、労働に人間のあり方の中心を見てとる存在論を急ごしらえした。だが、第二次世界大戦後の技術論では、万人を労働に徴用してやまない「総かり立て体制」のからくりをあばき出した。

【キーワード】
勤労奉仕、労働の擬似存在論、徴用、総かり立て体制
森 一郎
(東北大学大学院教授)
森 一郎
(東北大学大学院教授)
10 ハイデガーからアーレントへ ハイデガーに学んだアーレントは、全体主義研究を発展させて、人間の活動をひとしなみに労働と見立てる近代の根本動向にメスを入れた。『活動的生』の労働論は、マルクス批判であるとともに、「労働する動物の勝利」の果ての時代に対する省察でもある。

【キーワード】
人間の条件、活動的生、労働の不毛さと多産性
森 一郎
(東北大学大学院教授)
森 一郎
(東北大学大学院教授)
11 区別することの意味 『活動的生』の「序論」は、人工衛星打ち上げの出来事から説き起こし、生命工学の野望、科学の危機とオートメーションの脅威に光を当てる。ここに生ずる「われわれは何をしているのか」という問いが、労働、制作、行為という活動的生の三区分へと赴かせる。

【キーワード】
労働と消費、制作と使用、自然と世界との根本分節
森 一郎
(東北大学大学院教授)
森 一郎
(東北大学大学院教授)
12 始まりへの存在 人びとが語り合いながら共に事を為すという意味での行為は、瞬間的でありながら歴史的である。それは、死すべき者たちの不死を求める努力であると同時に、誕生という始まりによって世界にやって来た生まれ出ずる者たちにとって「第二の誕生」のごときものである。

【キーワード】
行為と言論、不死と永遠、出生性、「第二の誕生」
森 一郎
(東北大学大学院教授)
森 一郎
(東北大学大学院教授)
13 近代と現代世界 『活動的生』第六章では、近代という時代に何が起こったか、という歴史的省察が展開される。ガリレオが望遠鏡を作って覗いてみた星界の映像から、無差別宇宙像が広がっていった。この伝統的世界観の崩壊こそ、「神の死」の出来事にほかならない。

【キーワード】
ガリレオの望遠鏡、作って見る、プラクシスとしての科学
森 一郎
(東北大学大学院教授)
森 一郎
(東北大学大学院教授)
14 始まりの時間性 新しい始まりをひらこうとする意志が、近代科学を突き動かしてきた。では、新しい始まりはいかにして生ずるのか。『活動的生』の行為論は、近代批判の基礎作業でもあった。第一の始まりとあらたな始まりが呼び求め合う瞬間に、行為の時間性が時熟する。

【キーワード】
新しい始まりへの意志、始まりの時間性の謎、行為の瞬間
森 一郎
(東北大学大学院教授)
森 一郎
(東北大学大学院教授)
15 世界への愛のために 原子爆弾の炸裂から始まった現代世界の危機の最たるものは、われわれが「世界の終わり」の意識を刷り込まれて「死んだら終わり」と呟いていることである。だが、世界は終わりそうで終わらない。世代から世代へ世界を存続させてゆくことが、世界への愛のかたちである。

【キーワード】
世界の終わり、原子論、それでもなお世界は続く、世代
森 一郎
(東北大学大学院教授)
森 一郎
(東北大学大学院教授)
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