生理心理学('18)
- 主任講師
- 岡田 隆 (上智大学教授)
- 放送メディア
- テレビ
- 放送時間(2018年度)
- 第1学期:(木曜)13時45分~14時30分
【再放送】(土曜)0時45分~1時30分
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講義概要
心理学において、行動や精神機能の生物学的基礎を研究する領域である生理心理学について学ぶ。生理心理学はさまざまな神経科学的手法を駆使することにより、究極的には「脳と心」の関係を解明することをめざしている。
本講義の理解に必要な背景知識はそのつど放送授業や印刷教材で説明するので、(数学・生物学・化学の知識が受講者にあると有利だが)これらの予備知識は無くても構わない。学習内容を着実に理解・記憶して次の回へと進むよう努めてほしい。
※詳しくはシラバスへ
- 開設年度
- 2018年度
- 科目区分
-
コース科目(心理と教育コース(専門科目))
〔2009年度~2015年度〕専門科目(心理と教育コース)
〔2008年度以前〕 専門科目(発達と教育専攻)
- 科目コード
- 1529269
- 単位数
- 2単位
- 単位認定試験
試験日・時限
- 2018年度 第1学期:2018年7月29日(日曜)4時限(13時15分~14時05分)
- 単位認定試験
平均点
- 備考
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授業の目標
精神機能をになう脳メカニズムについて理解する。具体的には、(1) 脳の活動時に細胞レベル・分子レベルで起こっていることを具体的に理解し、(2) さまざまな精神機能の生物学的基礎に関するこれまでの知見を学び、(3) それらの知見をうるために用いられた研究法、および今後重要になってくると思われる最新の研究法について理解する。
履修上の留意点
心理学の概論的講義を履修済みであることが望ましい。
シラバス
回 |
テーマ |
内容 |
執筆担当講師名
(所属・職名) |
放送担当講師名
(所属・職名) |
1 |
生理心理学への招待 |
生理心理学は、脳と心の関係を実験によって解明しようとする学問領域である。いくつかの実験例から生理心理学のイメージをつかむとともに、生理心理学における心のとらえ方についての歴史的背景を概観する。
【キーワード】
一元論、刺激法、破壊法、記録法、分子生物学的方法 |
岡田 隆 (上智大学教授) |
岡田 隆 (上智大学教授) |
2 |
脳は何からできているのか |
脳は、私たちの心にとって無くてはならない器官である。脳を構成する各要素について知り、情報処理を行う上でとりわけ重要である神経細胞の活動がどのような分子によってになわれているのかについて理解する。
【キーワード】
神経細胞、グリア細胞、大脳皮質、膜電位、イオンチャネル |
岡田 隆 (上智大学教授) |
岡田 隆 (上智大学教授) |
3 |
神経細胞のはたらき |
神経細胞の興奮とは、具体的には何がどうなることなのだろうか。ある神経細胞が信号を受け取ってから、別の神経細胞に信号を送り出すまでの過程を順にたどることにより、脳活動の実体について理解する。
【キーワード】
シナプス、受容体、シナプス後電位、活動電位、軸索、神経伝達物質 |
岡田 隆 (上智大学教授) |
岡田 隆 (上智大学教授) |
4 |
脳が外界を知るしくみ(前編) -視覚- |
感覚・知覚機能によってのみ私たちは外界を知ることができる。本講では視覚をとりあげ、網膜によって受容された外界の光の配列が、どのような情報処理によって視知覚となりうるのかを学ぶ。
【キーワード】
網膜、受容野、視覚皮質、背側経路、腹側経路 |
岡田 隆 (上智大学教授) |
岡田 隆 (上智大学教授) |
5 |
脳が外界を知るしくみ(後編) -さまざまな知覚系- |
外界を知る手段として聴覚、味覚、嗅覚、体性感覚も重要である。各知覚系の情報処理を概観するとともに、いずれも外界の物理化学的な刺激から神経細胞の膜電位変化への変換が情報処理の開始点であることを理解する。
【キーワード】
蝸牛管、有毛細胞、周波数局在、嗅細胞、味細胞、体性感覚皮質 |
岡田 隆 (上智大学教授) |
岡田 隆 (上智大学教授) |
6 |
記憶の座と記憶痕跡 |
何かが記憶されたとき、脳のどこでどのような変化が生じるのだろうか。シナプス部の伝達効率の変化や神経細胞新生など、記憶痕跡の候補として挙げられている可塑的変化の機序について学ぶ。
【キーワード】
健忘、シナプス可塑性、長期増強、海馬、神経細胞新生 |
岡田 隆 (上智大学教授) |
岡田 隆 (上智大学教授) |
7 |
学習と認知の神経基盤 |
私たちは経験によって自身の行動を変化させることを通じて環境への適応を実現している。本講では学習をになう脳メカニズムおよび脳内報酬系について学ぶとともに、空間認知を可能にしている神経基盤について考える。
【キーワード】
条件づけ、脳内報酬系、薬物依存、場所細胞、グリッド細胞 |
岡田 隆 (上智大学教授) |
岡田 隆 (上智大学教授) |
8 |
脳とホルモンからみた情動 |
喜怒哀楽は人生を彩るものであるだけでなく、自分の置かれた状況や今とるべき行動を生体に教えてくれるという、生存する上で重要な役割も果たす。情動の生物学的基盤を、神経系と内分泌系の両面から学ぶ。
【キーワード】
大脳辺縁系、扁桃体、自律神経系、視床下部、下垂体、HPA軸 |
岡田 隆 (上智大学教授) |
岡田 隆 (上智大学教授) |
9 |
心の病気と脳 |
うつおよび統合失調症の生物学的基礎について、おもに薬理学的知見に基づいて論じる。薬物投与によって脳に何が生じることが症状の改善につながるのかという、現時点でのいくつかの仮説について学ぶ。
【キーワード】
抗うつ薬、モノアミン欠乏仮説、抗精神病薬、ドーパミン仮説、グルタミン酸受容体 |
岡田 隆 (上智大学教授) |
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10 |
生体リズムと睡眠 |
私たちは1日24時間のサイクルに基づいた生理的・行動的リズムを有している。概日リズムを司る脳内機構を学ぶとともに、概日リズムを示すものの代表例として、精神機能と深く関わりのある睡眠について理解する。
【キーワード】
概日リズム、視交叉上核、レム睡眠、ノンレム睡眠、脳波、上行性網様体賦活系、オレキシン |
岡田 隆 (上智大学教授) |
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11 |
脳とコミュニケーション |
失語症患者の脳損傷部位から明らかにされてきた言語野と言語処理ネットワークについて学ぶとともに、私たちが他人とコミュニケーションを取る上で必要と考えられる「心の理論」をになう神経機構などについて学ぶ。
【キーワード】
ブローカ野、ウェルニッケ野、角回、縁上回、ミラーニューロン、心の理論、自閉症 |
岡田 隆 (上智大学教授) |
岡田 隆 (上智大学教授) |
12 |
遺伝子と行動 |
親から受け継いだ遺伝子の情報に基づいて合成されたタンパク質が私たちの脳の情報処理を大きく左右する。遺伝子発現の流れを理解するとともに、タンパク質と行動との関係を明らかにする実験例について学ぶ。
【キーワード】
染色体、DNA、RNA、タンパク質、遺伝子、遺伝子改変動物、光遺伝学 |
岡田 隆 (上智大学教授) |
岡田 隆 (上智大学教授) |
13 |
意識と脳 |
意識という主観的な現象を科学的に研究するのは容易ではないが、意識の神経基盤を明らかにしようとする動きが近年盛んになってきた。前頭葉の機能、潜在的認知の例などを挙げて、意識の研究アプローチを紹介する。
【キーワード】
NCC、前頭葉、高次脳機能障害、潜在的認知、BMI |
岡田 隆 (上智大学教授) |
岡田 隆 (上智大学教授) |
14 |
脳の発達 |
複雑な脳神経系は長い年月をかけた進化の結果できあがってきたものであり、また一個体のレベルにおいても劇的な発達を遂げる。私たちの複雑な脳が出来上がっていく過程、また脳の老化について学ぶ。
【キーワード】
外胚葉、神経管、脳室帯、成長円錐、認知症 |
岡田 隆 (上智大学教授) |
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15 |
まとめと展望 |
これまで学んできた内容を統合的に振り返ることによって、人間の心を脳という視点からどのように理解することができるか論じる。生理心理学が今後進むべき道について考察する。
【キーワード】
非侵襲的脳機能測定法、BOLD効果、カスケード、行動 |
岡田 隆 (上智大学教授) |
岡田 隆 (上智大学教授) |
 
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