これまで当たり前と思われていた途上国開発に関する分析や提言をもう一度考え直してみると、異なった考え方もできる、別の提言も可能になることを示すこと。それによって、学者の意見や国際機関から発せられる提言について、一人ひとりが鵜呑みにせずに、考えてみることの重要性を明らかにしたい。
※詳しくはシラバスへ
一部の地域事情や成長率の推移、あるいは、個別の援助プロジェクトなどは各自で勉強してもらい、ここではもっと根本的と思われる問題を議論する。前半は途上国が直面する問題を、後半は先進国や国際機関、あるいは、国際NGOや大企業が「途上国のため」と判断して実行する「援助」について考える。
回 |
テーマ |
内容 |
執筆担当講師名
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放送担当講師名
(所属・職名) |
1 |
イギリスの産業革命を考える |
今日の南北格差の主原因は産業革命を達成したか否かによる。多くの途上国はなぜ産業革命を達成できないのか。この問題を考えるために、なぜ18世紀にイギリスで産業革命が起きたのかを調べ、途上国に欠けている条件は何かを考える。
【キーワード】
産業革命、市民革命、宗教改革 |
髙木 保興
(東京大学名誉教授)
河合 明宣
(放送大学教授) |
髙木 保興
(東京大学名誉教授)
河合 明宣
(放送大学教授) |
2 |
途上国「国家」を考える |
多くの途上国に共通する特徴は、政治に不安定要素を抱えていることである。植民地統治の「負の遺産」の中で、宗主国による国境画定と民族・部族・宗教等のアイデンティティの強調政策を採りあげ、独立後の国民統合の困難さを考える。政府が安定性維持を最優先にすると、社会変化をもたらす産業革命は敬遠されるのではなかろうか。
【キーワード】
植民地時代の負の遺産、国家のまとまり |
髙木 保興
(東京大学名誉教授)
河合 明宣
(放送大学教授) |
髙木 保興
(東京大学名誉教授)
河合 明宣
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3 |
国際政治経済環境を考える -戦後から債務問題まで |
途上国の置かれた戦後の国際政治経済環境は途上国の開発にとって望ましい状況を提供してくれたのであろうか。戦後から債務問題までの期間を検討する。
【キーワード】
国連開発の10年、石油危機、債務問題 |
髙木 保興
(東京大学名誉教授)
河合 明宣
(放送大学教授) |
髙木 保興
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河合 明宣
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4 |
国際政治経済環境を考える -構造調整から通貨危機まで |
途上国の置かれた戦後の国際政治経済環境は途上国の開発にとって望ましい状況を提供してくれたのであろうか。構造調整から通貨危機までの期間を検討する。
【キーワード】
構造調整、冷戦崩壊、グローバリゼーション |
髙木 保興
(東京大学名誉教授)
河合 明宣
(放送大学教授) |
髙木 保興
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河合 明宣
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5 |
第一次産業の開発を考える |
産業革命において、第一次産業の果たす役割を考える。農業部門の成長に大きく貢献したと思われる3つの挑戦を紹介し、産業革命に先だって、あるいは、産業革命と並行して求められる農業改革について考える。
【キーワード】
農業余剰、余剰労働、慣習の打破 |
髙木 保興
(東京大学名誉教授)
河合 明宣
(放送大学教授) |
髙木 保興
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河合 明宣
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6 |
第二次産業の開発を考える |
農業よりも生産性の高い雇用機会の提供が第二次産業に課された役割であるが、未成熟な国民国家という途上国に共通した特徴がなぜ工業化の阻害要因となるのか考える。
【キーワード】
社会(関係)資本、民族・部族間所得格差 |
髙木 保興
(東京大学名誉教授)
河合 明宣
(放送大学教授) |
髙木 保興
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7 |
第三次産業の開発を考える |
第二次産業と平行して、あるいは、第二次産業の後に比重が大きくなると考えられてきた第三次産業であるが、インドのIT産業の目覚しい発展は第二次産業とは独立に第三次産業の発展が可能であることを示した。途上国には、工業化(第2次産業化)を走り続ける中国と「知価革命」を進めるインドとの2つの選択肢が示された。どちらの道を目指すべきなのかを考える。
【キーワード】
インド型発展、輸出可能なサービス産業 |
髙木 保興
(東京大学名誉教授)
河合 明宣
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髙木 保興
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河合 明宣
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8 |
工業化に伴う問題を考える |
途上国の首都によく見られる交通渋滞とスラム、それに環境問題。それぞれの問題に個別に対応しようとすると適切な対策が採用されにくい。急速な工業化に伴って発生してきた問題と考えると、対処が異なってくることを議論する。
【キーワード】
首都一極集中、スラム、環境問題 |
髙木 保興
(東京大学名誉教授)
河合 明宣
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髙木 保興
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河合 明宣
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9 |
国際社会のサポートを考える |
1980年代の世界銀行や国際通貨基金(IMF)による構造調整やアジア通貨危機後にIMFが求めたコンディショナリティは多くの途上国には不適切なものであった。なぜ国際機関による提言や勧告は的を外れるのであろうか。政策が効果を発揮しうる「場」について考える。
【キーワード】
ワシントン・コンセンサス、コンディショナリティ |
髙木 保興
(東京大学名誉教授)
河合 明宣
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10 |
貧困削減を改めて考える |
貧困削減という言葉は2通りの意味合いに使用される。8項目からなるミレニアム開発目標にも両者が混在している。絶対的貧困と相対的貧困の間にはどのような関係があるのか考える。
【キーワード】
南北問題、ミレニアム開発目標 |
髙木 保興
(東京大学名誉教授)
河合 明宣
(放送大学教授) |
髙木 保興
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河合 明宣
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11 |
BOPビジネスを考える |
1日2ドル以下で暮らす社会の底辺階層の人たちは、これまで民間企業の顧客とはみなされてこなかった。しかし、地球全体で40億人にも上るので、この人たちをターゲットにしたビジネスもうまくやれば利潤をあげることができるのではないかというアイデアがアメリカの経営大学院の先生から生まれた。事例として紹介されているBOPビジネスを検討し、援助関係者が途上国の開発にも役立つのではと力を入れ始めたBOPビジネスを考える。
【キーワード】
BOPビジネス、貧困層優先成長 |
髙木 保興
(東京大学名誉教授)
河合 明宣
(放送大学教授) |
髙木 保興
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河合 明宣
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12 |
政府開発援助を考える |
1つの途上国の1つの地域に10年から20年継続して政府開発援助(ODA)を注ぎ続けることは困難である。ODAによって有効な効果を期待することはできるのだろうか。どのような分野であれば、少なくとも望ましい効果を期待できるのだろうかを考える。
【キーワード】
ODA、説明責任、援助効果の持続性 |
髙木 保興
(東京大学名誉教授)
河合 明宣
(放送大学教授) |
髙木 保興
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13 |
企業の社会的責任、非政府組織、そして、社会的企業を考える |
政府、あるいは、国際機関以外に途上国の開発に関係しているアクターとして、民間企業と非政府組織(NGO)と非営利の社会的企業の長所と短所を比較し、今後大きな成果を上げるにはどうすれば良いかを考える。それぞれのアクターが個別に活動するよりも、各アクターの長所を生かせるような協力関係の構築も1つの選択肢である。
【キーワード】
企業の社会的責任(CSR)、NGO、社会的企業 |
髙木 保興
(東京大学名誉教授)
河合 明宣
(放送大学教授) |
髙木 保興
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河合 明宣
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14 |
途上国政府の役割像を考える |
国際社会は途上国に対してどのような政府の役割を期待し、勧告・提言を行ってきたか。1960年代から2000年代までその役割像の変遷を概観し、今後の途上国政府に期待される役割について考える。
【キーワード】
成長から生活保護へ、大きな政府から小さな政府へ、人間の安全保障 |
髙木 保興
(東京大学名誉教授)
河合 明宣
(放送大学教授) |
髙木 保興
(東京大学名誉教授)
河合 明宣
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15 |
途上国の明日を考える |
国際社会の提言からの教訓は、途上国政府自ら自国に適した開発政策を考えることができる体制の構築である。ミレニアム開発目標に盛り込まれた目標は多くの途上国にとって実現不可能な目標ではないか。実現に必要な財源をいかにして捻出するのか。現在世代の生活保護か将来世代の生活水準アップか、どちらも重要で優劣付けがたいが、持続性を考えれば政策を継続できる財源確保を優先すべきではないかというのが著者の見解である。そのための政策の選択肢について考える。
【キーワード】
ブミプトラ政策、国営企業 |
髙木 保興
(東京大学名誉教授)
河合 明宣
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髙木 保興
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河合 明宣
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