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レジリエンスの諸相('18)-人類史的視点からの挑戦-

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主任講師
奈良 由美子 (放送大学教授)
稲村 哲也 (放送大学教授)
放送メディア
テレビ
放送時間(2018年度)
第1学期:(月曜)11時15分~12時00分

講義概要

レジリエンスとは、一般に、環境の急激な変動や逆境の状況に対し、柔軟な対応・適応によって安定性を維持、または取り戻す能力とされている。近年では、災害からの復興の力としての社会のレジリエンスに注目が集まっている。災害に限らず、現代社会が直面するさまざまな課題や危機にどのように向き合っていくべきかを考えるために、レジリエンスは重要な概念である。しかしながら、その概念は多様、かつあいまいである。たとえば、長期的には、危機を経ることによる変化の視点も重要であろう。この科目では、レジリエンスの概念を多角的・超領域的な視点で捉えなおすため、人類史的時間軸をたどり、また、遺伝子レベルからヒト、社会、地球レベルまでを視野にいれたレジリエンスの諸相を検討する。
※詳しくはシラバス

開設年度
2018年度
科目区分
コース科目(生活と福祉コース(総合科目))※共用科目(心理と教育・人間と文化)
〔2009年度~2015年度〕総合科目
〔2008年度以前〕 専門科目(その他)
科目コード
1910035
単位数
2単位
単位認定試験
試験日・時限
2018年度 第1学期:2018年7月31日(火曜)1時限(9時15分~10時05分)
単位認定試験
平均点
備考
 
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授業の目標

本科目の修学上の目標は、遺伝学、霊長類学、考古学、地理学、自然人類学、文化人類学、環境学、心理学、リスク・マネジメントなどの多様な観点から、レジリエンスとは何かを考え、理解することである。そして、時間的空間的に包括的な視点を持ち、現代と未来の社会において、私たちが直面する諸課題に向き合うため、レジリエンスの意義について検討し、実践する力を身につけることである。学習者には、本科目の内容を、自分が関わっている分野やテーマにあてはめて考察することを試みていただきたい。

履修上の留意点

関連する科目として、「文化人類学('14)」、「フィールドワークと民族誌('17)」(オンライン授業科目)、「今日のメンタルヘルス('15)」「臨床家族社会学('14)」「感染症と生体防御('18)」「生物環境の科学('16)」、「生活ガバナンス研究('15)」(大学院科目)、「博物館展示論('16)」の履修により、本科目の内容についての理解と考察が一層進むと思われる。

シラバス

テーマ 内容 執筆担当講師名
(所属・職名)
放送担当講師名
(所属・職名)
1 レジリエンスとは何か レジリエンス概念を説明するにあたり、世界でも最もレジリエントな遊牧社会を維持しつつ、首都の急激な都市化でさまざまな問題に直面しているモンゴルの実態、さらにはこれへの対策を講じるべくモンゴル国立大学と名古屋大学が共同で立ち上げたレジリエンス研究センターでの活動を紹介する。そこには、個人のくらし、自然環境、文化、社会、災害等、さまざまな問題が凝縮されている。これによりレジリエンスを複眼的に捉えることのイメージをつかむとともに、この授業を始めるにあたっての問題提起とする。また、この授業で目指す超域的視点のねらいを示す。

【キーワード】
レジリエンス、サステイナビリティ、遺伝子レベルから地球レベル、自然災害、遊牧社会、ゲル、都市、人口集中
鈴木 康弘
(名古屋大学教授)
奈良 由美子
(放送大学教授)
稲村 哲也
(放送大学教授)
鈴木 康弘
(名古屋大学教授)
奈良 由美子
(放送大学教授)
稲村 哲也
(放送大学教授)
2 霊長類の共通祖先から受け継いだヒトのレジリエンス ヒトが多様な環境に進出できたのはなぜか。そこには、霊長類の祖先から受け継いだ特徴を新しい環境に合わせて発展させ、さらにヒト独自の方法で変化させた進化の歴史が息づいている。この回では、まずヒトの祖先が類人猿から受け継いだ特徴とは何かを解説し、次にそれが変容してきた背景と過程を分析する。ポイントは、700万年にわたるヒトの進化がどういった特徴の積み重ねと変容によって、家族と共同体という重層構造をもつ社会に行き着いたのか、そのレジリエンスの生物学的基盤を理解することである。

【キーワード】
霊長類、直立二足歩行、熱帯雨林、食物分配、多産、脳の増大、共同保育、思春期スパート、家族
山極 壽一
(京都大学総長)
山極 壽一
(京都大学総長)
稲村 哲也
(放送大学教授)
3 遺伝子からみた類人猿とヒトの心のレジリエンス 霊長類の行動観察と遺伝的研究の組み合わせにより、性格や行動パターンと遺伝子の関係が解明されつつある。この回では、性格や行動に直接影響する神経伝達関連の遺伝子を中心にとりあげ、類人猿とヒトの社会性、幸福などと関連づけ、感情と行動に関わるレジリエンスについて検討する。また、霊長類の遺伝子解析に基づいて明らかになった社会集団や行動の多様性について考察する。

【キーワード】
遺伝子、性格、行動、感情、類人猿、ヒト、社会性
村山 美穂
(京都大学教授)
村山 美穂
(京都大学教授)
稲村 哲也
(放送大学教授)
ゲスト:川本 芳 (京都大学准教授)
4 人類進化とヒトのレジリエンス ヒトが、初期猿人から新人へと進化をとげる過程で、どのような困難(危機、弱点)をどのような身体特性と文化の相互作用で乗り越え、レジリエンス(強み)を確保したかを概観する。ヒトの身体的進化は、環境への適応以上に、文化との相互作用によるものである。新人は、優れた「認知能力」を発達させ共同性を発揮し、人口を増やして地球上に拡散し、地上に敵無しとなった。しかしその先に、どのような課題を自ら作り出してしまったのか、考えてみよう。

【キーワード】
進化、猿人、原人、旧人、新人、認知能力、ジャワ原人、ホモ・フロレシエンシス、ネアンデルタール人、日本列島人
稲村 哲也
(放送大学教授)
稲村 哲也
(放送大学教授)
ゲスト:馬場 悠男 (国立科学博物館名誉研究員)
5 食糧生産革命とレジリエンス 西アジアの新石器時代初頭に進行した食糧生産革命の歴史的意義と、そこに潜在した危機を明らかにすることが、第一の目標である。第二は、その危機を回避するために発動された社会的レジリエンスについて検討することである。ポイントとなるのは、周辺遊牧社会と定住社会との有機的な関係である。この点に焦点を当てて、西アジア新石器時代社会の重層的な理解を目指す。

【キーワード】
西アジア、食糧生産革命、新石器時代、社会的レジリエンス、遊牧文化
藤井 純夫
(金沢大学教授)
藤井 純夫
(金沢大学教授)
稲村 哲也
(放送大学教授)
6 古代文明の盛衰とレジリエンス 食糧生産と人口増加などを背景として、都市文明が生まれた。都市では、階層と分業が確立し、人工的で複雑な居住構造と複雑な社会が形成され、それは超自然的力を背景とする世界観に基づいてもいた。必然的にヒトは自然環境だけでなく、自らが作り出した文化環境にも適応することが求められ、地震や旱魃など天災に加えて、ヒト社会が作り出すリスクに対しても新たなレジリエンスが必要とされるようになった。この回では、中米に栄えた古代文明の盛衰をレジリエンスの観点から見直し、私たちの現代社会で問われているヒトに特有なレジリエンス能力とは何かを考えてみたい。

【キーワード】
新大陸古代文明、ドメスティケーション、宗教センター、古代都市、テオティワカン、階層社会、メソアメリカ文明、モニュメント
杉山 三郎
(アリゾナ州立大学研究教授、愛知県立大学特任教授)
杉山 三郎
(アリゾナ州立大学研究教授、愛知県立大学特任教授)
稲村 哲也
(放送大学教授)
7 ヒトと病原菌の共存とレジリエンス 多くの感染症は農耕の開始とともにヒト社会にもたらされた。感染症はヒトにとって厄介なもの、根絶すべきものと考えられているが、果たして、そうした考え方だけでよいのか。近年、微生物は、ある場合にはヒトに害として働くが、ある場合には利益をもたらすという両義性(アンビバレンス)を有することがわかってきた。また、ある種の微生物の不在が病気を引き起こす可能性も指摘されている。この回では、感染症を中心に、ヒトと病の関わりをとりあげ、病原菌と適度なバランスをとりながら柔軟に生存していく方策としてのレジリエンスについて考える。

【キーワード】
農耕の開始、感染症、パンデミック、病原菌、共生
山本 太郎
(長崎大学教授)
山本 太郎
(長崎大学教授)
稲村 哲也
(放送大学教授)
8 アンデスにみるレジリエンスの諸相 この回は授業の折り返し点にあたることから、前半で議論してきたテーマを踏まえつつ、アンデス地方の人々の生活と社会の変遷を、通時的にかつ多角的に見通してみたい。この回の中心テーマは、古代アンデス文明がもっていた災害レジリエンス、インカ帝国の繁栄をささえた社会レジリエンスとしての再分配システム、そして新旧大陸の遭遇によるインカ帝国滅亡、そして、現代の先住民社会の生業と社会に維持されてきたレジリエンスの仕組みである。

【キーワード】
アンデス、新大陸、古代文明、インカ帝国、先住民、農耕、牧畜、ラクダ科動物、互酬、再分配
稲村 哲也
(放送大学教授)
稲村 哲也
(放送大学教授)
奈良 由美子
(放送大学教授)
9 フィリピン先住民にみる災害とレジリエンス 自然災害は、その被災者に大きな苦難と悲哀をもたらす。しかし同時に、旧来の生活インフラや社会基盤が破壊されることにより、新しい人間と社会を作り出す契機にもなりうる。この回では、1991年に起きた西ルソン・ピナトゥボ山の大噴火の被災者であった先住民族アエタの生活の激変と創造的復興の歩みを振り返りながら、アエタ社会のレジリエンスの由来を考える。また、いずれ近い将来に再び日本を襲うであろう地震・津波災害からの復興への備えを、アエタの経験から学ぶ。

【キーワード】
ピナトゥボ火山、アエタ、創造的復興、人類史の追体験、先住民の自覚・誕生、自助・共助・公助+外助
清水 展
(京都大学名誉教授)
清水 展
(京都大学名誉教授)
稲村 哲也
(放送大学教授)
奈良 由美子
(放送大学教授)
10 地球のレジリエンス この回では、地球という巨大なシステムのレジリエンスを、私たち人類はどのように高めることができるのかを考える。私たちは人新世という新しい地質時代に入っている。一人一人の日常生活の積み重ねが、地球に不可逆的な変化をもたらすようになっており、実際、気候変動をはじめいくつかの地球のシステムは、プラネタリー・バウンダリーとして科学的に設定された閾値を超えている。一方、私たちの生活も、想定外のリスクが増大し脆弱になっている。社会の複雑化・高度化、そして地域間のいびつな相互依存が原因だと考えられる。こうした時代に必要なのは、地球規模の思考と身近な行動の間をつなげるという作業であり、その具体的な事例として、授業では東ティモールのコーヒーのフェアトレードをとりあげる。

【キーワード】
人新世、プラネタリー・バウンダリー、脆弱社会、リスク、関係価値、東ティモール、フェアトレード
阿部 健一
(総合地球環境学研究所教授)
阿部 健一
(総合地球環境学研究所教授)
稲村 哲也
(放送大学教授)
奈良 由美子
(放送大学教授)
11 災害への対応とくらしのレジリエンス 自然災害は人々のくらしに大きな外力を加える。生活(くらし)の主体はあくまでも各個人であるが、実際の日々のくらしは地域という地理的範域のなかで営まれる。したがって、レジリエントなくらしには、個人のレジリエンスとともに、地域コミュニティのレジリエンスが関わってくる。この回では、個人と地域コミュニティが災害に対するレジリエンスを高めることの意義と実際を検討する。

【キーワード】
自然災害、システム、レジリエンスを高めるための要件、災害への事前対応と事後対応、東日本大震災、地域コミュニティ、生活知の継承
奈良 由美子
(放送大学教授)
奈良 由美子
(放送大学教授)
稲村 哲也
(放送大学教授)
ゲスト:小川 静治 (放送大学大学院生)
12 心のレジリエンス 心のレジリエンスは何によって、どのように導かれるのか、これまでの研究から得られた知見を学ぶ。またその個人差はどう捉えられ、測定されてきたのかを知る。そして、心のレジリエンスとは、どのような状況でのどのような状態を指すのか、その多様なあり方を含めた理解の視点を学ぶ。

【キーワード】
ストレス、逆境、喪失、適応、レジリエンスの尺度、レジリエンスの個人差、レジリエンス要因、プロセス、多様性
平野 真理
(東京家政大学講師)
平野 真理
(東京家政大学講師)
奈良 由美子
(放送大学教授)
ゲスト:安藤 和雄 (京都大学准教授)
13 企業経営にみるレジリエンス リスクから逃げず、状況を把握し、乗り越えてきた企業に焦点を当て、そこに見る共通の要素を探る。そして社員の仕事の満足度や精神的成長、企業生活、企業経営のあり方に関する指針として役立てていくための思考方法や方策を理解し、最終的には企業において復元力を醸成するための施策を理解する。

【キーワード】
レジリエンス、リスク、柔軟思考、仕事の幸福、フロー、脆弱性、楽観性
上田 和勇
(専修大学教授)
上田 和勇
(専修大学教授)
奈良 由美子
(放送大学教授)
14 対立と争いをめぐるレジリエンス この回では、人類の進化の過程でどのように争いが起源したのかを検討し、争いの要因について検討する。ついで、現代における紛争に関して、ペルーの極左組織「センデロ・ルミノッソ」(輝く道)による内戦の事例を中心にとりあげ、ネパールの「マオイスト」(共産主義毛沢東派)による内戦の事例と比較して、その背景を考察する。また、文化人類学の古典的な理論から、争いを回避するシステムについてもとりあげる。

【キーワード】
争い、人口増加、定住、エスニック集団、国民国家、センデロ・ルミノッソ、マオイスト、互酬、再分配、クラ交易、外婚制
稲村 哲也
(放送大学教授)
稲村 哲也
(放送大学教授)
奈良 由美子
(放送大学教授)
15 レジリエンスとその未来 授業全体の総括を行う。これまでの授業を俯瞰し、レジリエンスという概念が、遺伝子レベルから地球環境レベルまでつながっていること、また、人にとって、心理から病、社会(くらし、生業、経済、宗教、争い)、さらには災害の諸局面でレジリエンスが重要であり続けたことを確認する。そのうえで、レジリエンスの観点から現代と未来の課題について考える。

【キーワード】
レジリエンス、多様性、柔軟性、災害、地球環境、資源、争い、アンデス、ブータン
稲村 哲也
(放送大学教授)
奈良 由美子
(放送大学教授)
稲村 哲也
(放送大学教授)
奈良 由美子
(放送大学教授)
鈴木 康弘
(名古屋大学教授)
清水 展
(京都大学名誉教授)
山極 壽一
(京都大学総長)
阿部 健一
(総合地球環境学研究所教授)
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