言葉と発想(’11)

主任講師: 伊藤 笏康

言葉を用いて何かについて何かを言い表す、とはどういう行為なのだろうか? この疑問は言葉の本質に関わる大きな問題であると言える。私たちは日常的に使っている日本語を知らず知らずモデルにして、英語も同じように物事を表現していると思っている。だから「訳し方が分かれば英語は分かる」という考えがはびこっている。だが本当にそうだろうか。それぞれの言葉にはそれぞれ表現のシステムがあるのだ。学生の皆さんがそれについて考え、「言葉が違えば世界が違う」ことに気づいてもらうのが本講義の目標である。 検討中リストに追加

各回のテーマと放送内容

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第1回 言葉を見つめる目
言葉が分かるようになるとは、どのようなことだろう。それを考えるために、私たちが中学からずっと学んでいる英語を題材にして考えてみよう。しかしその前に本章では、現代の英語が私たちのイメージとずいぶんちがったものになっていることを指摘しよう。本章では、「国際語」「現地語」「仕事語」「生活語」など、さまざまな英語を紹介し、「言葉が分かる」ということにもいろいろな意味があることを、例を上げて解説する。 
そして本講義全体の構成や進め方を概説し、本講義で「何を学んでほしいか」を示す。
担当講師: 伊藤 笏康 (聖徳大学教授)
第2回 英語をどうやって理解するか
英語を分かろうとする努力は、中学や高校を通じて皆してきたはずだ。しかしなぜ英語は「イマイチ」分からないのだろう。日本語で生活してきたわれわれが、今さら英語漬けで暮らすのは無理だ。そんなときにしばしば期待されるのが、1つはネイティヴによる授業であり、もう1つが文法の訓練だ。しかしこれらはけっして、英語教育の切り札にはならない。それがなぜかを考えながら、英語が分かるようになるために真に必要なものは何かを考える。そして、英語の「発想」を知ることの重要さを指摘する。
担当講師: 伊藤 笏康 (聖徳大学教授)
第3回 ‘cat’=「ネコ」でよいのか -英語の名詞は日本語とまったくちがう-
私たちが英語を学ぶ時、まず最初にするのは名詞を覚えることだろう。しかし英語の ‘cat’ は、本当に日本語の「ネコ」と同じことを意味しているのだろうか。というのは、英語の‘cat’ という形はほとんど使われないからだ。普通使われるのは 'a cat’, 'the cat’, ‘cats’,‘the cats’などの形で、‘cat’ という「裸の単数形」はめったに使用されない。すると私たちが「ネコ」の意味だと思っている ‘cat’ は何を意味しているのだろう。その問題を考えてゆく過程で、英語の普通名詞は「概念」を意味していることが分かる。
担当講師: 伊藤 笏康 (聖徳大学教授)
第4回 普通名詞と固有名詞 -日本語の普通名詞の便利さ-
日本語の普通名詞「ネコ」は、目の前のネコ個体も指せるし、ネコ概念も指せる。ところが、英語の普通名詞‘cat’ は概念を指すだけで、個体の cat を指すことはできない。名詞で個体を指せないと、日常生活はきわめて不便になってしまう。だから何とかして個体を指す名詞を手に入れないといけない。では‘cat’ という普通名詞の代わりに、それぞれの猫の固有名を使ったらどうだろう。このような問題提起のもとに、普通名詞と固有名詞の違いを調べてみる。
担当講師: 伊藤 笏康 (聖徳大学教授)
第5回 ‘a’を生み出す発想
日常生活の場面で、個体を指すのに便利なのはやはり普通名詞だ。しかし英語の普通名詞は、そのままの形では概念を指してしまうから、個体を指すことができない。ではどのようにしたら、英語の普通名詞で個体を指すことができるだろう。そこで考え出されたのが「冠詞」を使う方法だ。では冠詞は、どのようにして概念しか指せない普通名詞を個体も指せるようにしているのか。冠詞の根底にある発想と、英語にとって冠詞が必要な理由を調べ、不定冠詞‘a’の基本的な働きを明らかにする。
担当講師: 伊藤 笏康 (聖徳大学教授)
第6回 ‘a’の意味・‘a’の仲間
辞書には、不定冠詞の訳語が多く載せられている。しかし不定冠詞の発想を知れば、その訳語もわずかな種類に整理できることを指摘する。そして ‘cats’ のような「裸の複数形」がどのような発想をもとにした表現か、またその日本語訳はどのようにするのがよいかを調べる。また、私たち日本語人にとってよくわからない、‘some’,‘any’ という語の発想を調べ、それらの意味の差を明らかにした上で、不定冠詞と ‘some’, ‘any’ のかかわり、そしてそれらの区別を述べる。
担当講師: 伊藤 笏康 (聖徳大学教授)
第7回 ‘the’のはたらきと意味
日本語に直すと、「その」となってしまう英語にはいくつかある。‘that’, ‘the’, ‘its’ などだ。しかしこれらの言葉は、根本の発想がまったくちがう。本章では、これらの言葉を比較しながら定冠詞 ‘the' の意味を調べてゆく。そして辞書に数多く載っている ‘the’ の意味も、その基本的な発想を押さえればずいぶん少ない類型に整理できることを示し、かつ不定冠詞 ‘a’ と定冠詞 ‘the’ がきわめて対照的なはたらきをもつことを述べる。文法書で言う、「the の特別用法」も何ら特別でないことが分かるだろう。
担当講師: 伊藤 笏康 (聖徳大学教授)
第8回 進行形は「している」でよいか
本章から、英語の動詞を考察することにしよう。そのために先ず、ヨーロッパ語の「ご先祖様」のラテン語の動詞を説明する。そして日本の英語教育では、単純形を「~する」、進行形を「~している」、完了形を「~してしまった」と訳しているが、これが誤りであることを指摘する。なぜなら英語の単純形・進行形・完了形は、日本語の訳語にならない発想を下敷きにしているからだ。その発想を明らかにするため、本章では英語の進行形の根本的な発想を見ることにしたい。
担当講師: 伊藤 笏康 (聖徳大学教授)
第9回 単純形のほんとうの意味
単純形の動詞は、私たちが最初に習う動詞の形だ。しかしこの単純形の本当の意味を、「~する」という日本語で理解しているとしたら、英語の真意はまったく伝わっていないと言ってよかろう。動詞の単純形の訳し方は複雑だ。そのためにまず、状態動詞と動作動詞の区別を導入する。これらの動詞は、文法がまったく違っているからだ。その上で、英語動詞の単純形の発想を述べる。そしてその訳語は、学校文法で習ったものとはまったくちがうはずだ。
担当講師: 伊藤 笏康 (聖徳大学教授)
第10回 完了形は「してしまった」でよいか
現在完了の意味を考える。私たちは完了形の意味を「してしまった」と教えられることが多い。しかし英語の現在完了は、こんな意味とは程遠い。しかも私たち日本語人は現在完了を分かりにくいと思っているが、じつは私たちが本当に分かっていないのは英語の過去形なのだ。そのことを念頭に置くと、英語の現在完了が何を言いたいか、つまり「現在完了の発想」は次第に明らかになってくる。完了形はヨーロッパの各言語で意味が微妙にちがう。英語独特の「完了の発想」を調べてみる。
担当講師: 伊藤 笏康 (聖徳大学教授)
第11回 行動をまるごとおさえる  -アオリスト- 
これまで調べた単純形・進行形・完了形は、動作や状態がどのような段階にあるかを述べるものだった。しかしこのほかに、ヨーロッパ語の動詞には状態や動作の段階を無視して、状態や動作全体を俯瞰する「アオリスト」という見方がある。これは英語にも受け継がれていて、とくに過去形や未来形では重要な役割を果たしている。しかし英文法の本でこのことに触れているものは少ない。本章では、このアオリストの見方を英語の基本的な発想の1つとして調べてみよう。
担当講師: 伊藤 笏康 (聖徳大学教授)
第12回 話法の助動詞の発想
私たちが中学校で習う ‘can’,‘may’, ‘must’,‘should’, これらは「話法の助動詞」と言われている。しかし「話法」って何だろう。実はこれらの語は、ヨーロッパ語の文法で特別な位置を占める言葉なのだ。しかも私たちが考えているのとはまったくちがって、話し手の意見や、許諾や、命令を意味する、きわめて主観的な言葉なのだ。中学や高校では教えてもらえない、これらの助動詞の発想を明らかにしてみよう。これらの言葉を不用意に使うことがいかに「こわい」か分かるだろう。
担当講師: 伊藤 笏康 (聖徳大学教授)
第13回 仮定法の発想
中学や高校で習って、今ひとつ分からないのが「仮定法」だ。「もし~だったら、~だろうに」などという訳文を習っても、その真意はピンと来なかった。それもそのはずで、仮定法はもともと客観的な事実を述べるためのものではない。だから12章に述べた、話法の助動詞と同じく、話し手が自分の意見や気持ちや態度を表現するためのものなのだ。この根本的な発想を押さえてしまえば、バラエティゆたかな仮定法をすっきりと見渡せるようになるだろう。
担当講師: 伊藤 笏康 (聖徳大学教授)
第14回 修飾語の発想
どんな言葉でも、語を組み合わせて「句」を作り、句の並びで「文」を作るという仕方は変わらない。日本語ではこの「語→句→文」の作り方はとても複雑だが、ヨーロッパ語にはとても簡単な規則がある。その代表が修飾だ。ヨーロッパ言語における修飾は、きわめて単純明快な規則を持っており、ネイティヴもそれを体で分かっている。しかしその規則は、日本の英語教育で表立って教えられることはない。このさい、ヨーロッパ語における修飾の感覚を身に付けてしまおう。
担当講師: 伊藤 笏康 (聖徳大学教授)
第15回 SVOCの発想とその限界
本講義の最後に、「英語ネイティヴが体で知っていること」と「文法学者が作った理論」はちがうことを述べておこう。私たちが学校文法で習うSVOC理論は、じつはネイティヴの大半が知らないことなのだ。にもかかわらず、中学や高校でこれが分からないために英語がいやになる生徒も多い。だがその発想はつまらないほど単純だ。だから最後に、ネイティヴの発想ではなく、「文法学者の発想」を話題にしておこう。これは、「文法なんて難しく見えても、その発想を押さえれば簡単だ」というメッセージだ。
担当講師: 伊藤 笏康 (聖徳大学教授)

放送メディア:

ラジオ

放送時間:


2016年度 [第2学期] (日曜)
15時15分〜16時00分

単位認定試験 試験日・時限:

2016年度 [第2学期]
2017年1月29日 (日曜)
4時限 (13時15分~14時05分)

開設年度:

2011年度

科目区分:

共通科目

科目コード:

1117610

単位数:

2単位
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