錯覚の科学(’14)

主任講師: 菊池 聡

錯覚とは客観的には「誤った」認知であるが、それは必ずしも人の認知の欠陥や能力不足のために起こるものではない。より効率的で適応的な認知を実現するために、人はあえて世界を歪めてとらえることがある。こうした「人間らしい」認知の性格を知り、人が世界を認識するということはどういうことなのかを理解することが第一の目標である。さらに、そうした認知の歪みが、あるときは芸術や文化を生み出し、同時に詐欺や欺瞞につながっていることもぜひ理解したい。最終的には、錯覚に関する多面的な理解を通して、心理学的なクリティカル・シンキングの基本を身につけることを目標とする。 検討中リストに追加

各回のテーマと放送内容

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第1回 錯覚への招待 
私たちが認識している世界は、客観的な世界と正確に対応しているわけではない。いわば脳の中で無意識のうちに再構成された世界とも考えられる。その再構成の過程で、さまざまな「人間らしい」錯覚が生じる。これから学ぶ錯覚の世界について、基礎的な知識を概観する。
担当講師: 菊池 聡 (信州大学教授)
第2回 視覚の錯覚 見ることは考えること
人の眼はカメラとほぼ同じ仕組みを持っている。しかし、人はカメラのように、世界を忠実に認識するのではない。ヘルムホルツが、知覚とは「推論」することだと指摘したように、知覚体験は高度な認知情報処理の産物なのである。奥行き知覚や恒常現象は、この知覚の解釈的性格をよく表している。
担当講師: 菊池 聡 (信州大学教授)
第3回 錯視の世界を体験する
視覚で生じるさバラエティ豊かな錯視現象の数々を実際に体験しながら、人の視知覚が情報を再構成する仕組みを理解する
担当講師: 菊池 聡 (信州大学教授)
第4回 視覚の錯覚 知覚心理学と絵画芸術の接点
錯覚は人の基本的な世界の認識を反映した現象である。たとえば恒常現象は、対象の同一性を保持し、世界を安定して知覚する働きをする。こうした錯覚が持つ人間らしい性質は、線遠近法が学習される以前の子どもの絵や古代の絵画などを通して理解することができる。
担当講師: 菊池 聡 (信州大学教授) 金井 直 (信州大学准教授)
第5回 視覚芸術と錯覚
ゼウクシスの逸話からオプ・アートまで、西洋絵画史はまさに錯覚の歴史であるが、そもそも板や画布という物体を「絵画」とみなすこと自体、錯覚の最たるものかもしれない。本講義ではとくに遠近法の展開に着目しつつ、美術における錯覚とその機能について考察する。
担当講師: 金井 直 (信州大学准教授)
第6回 記憶の錯覚 人の記憶は確実なのか
想起された記憶とは過去の情報が再生されたと言うよりも、さまざまな記憶手がかりをもとに再構成されるものととらえられる。そのため、実際には存在しなかった事項が、あたかも真実の記憶のように思い出される虚偽記憶という錯覚が生じる。
担当講師: 齋藤 智 (京都大学大学院准教授)
第7回 思考の錯覚と認知バイアス
客観的に正しく考えているつもりでも、人は誤った思い込みに陥ることがある。そこには、私たちの情報処理に生じる認知バイアスが働いている。人の持つバイアスが、どのような思考の錯覚をもたらすのかを身近な例から考える。
担当講師: 菊池 聡 (信州大学教授)
第8回 ヒューリスティックと行動経済学
私たちの日常的な思考は、論理的な厳密さよりも、効率性と一貫性を優先した簡便な方法で行われる。こうした方法はヒューリスティックと呼ばれ、身の回りで広く見ることができる。そこで起こる、特有の思考の錯覚を考察する。
担当講師: 菊池 聡 (信州大学教授)
第9回 自己の一貫性と正当化が引き起こす錯覚
心理学の古典的な理論として知られる認知的不協和理論は、一貫性への動機づけが無意識のうちに認知や行動を変容させる仕組みを体系的に説明している。その理論が応用できる範囲は、身近な思い込みからマインドコントロール技術に至るまで非常に広い。
担当講師: 菊池 聡 (信州大学教授)
第10回 身近な情報の錯覚
私たちは、身の回りの出来事からさまざまな情報を読み取って解釈し、判断や意思決定の材料としている。その際に、情報が持つ統計的な性質を見落とすと、そこに誤った因果関係を発見してしまうことがある。
担当講師: 菊池 聡 (信州大学教授)
第11回 錯覚の光と影 エンタテイメントと悪質商法
「注意」の性質を利用した錯覚は、マジックをはじめとしたエンタテイメントに利用されるのと同時に、時には詐欺や悪質商法の手法として使われる。これらの手法に共通する注意と思考の錯覚を解き明かしていく。
担当講師: 菊池 聡 (信州大学教授)
第12回 原因と結果をめぐる錯覚 社会的認知
ものごとの原因はなんであるかを考える原因帰属の推論は、人の思考の中でも重要な過程である。この帰属推論で生じるいくつかのバイアスが対人認知の歪みを引き起こすことを理解し、よりよい帰属推論を行うためのポイントを考える。
担当講師: 菊池 聡 (信州大学教授)
第13回 科学的思考と錯覚
科学としての要件を備えていなのに、科学的であるかのように装っている主張は、疑似科学と呼ばれる。そこには、科学的概念やデータ解釈の錯覚が生じている。血液型性格学など、現代の日本になじみの深い疑似科学をとりあげ、疑似科学の錯覚を明らかにする。
担当講師: 菊池 聡 (信州大学教授)
第14回 自己の錯覚
健康な精神の持ち主は、現実を自分に有利に歪めて認識する傾向を持っており、これはポジティブイリュージョンと呼ばれる。こうした自己奉仕的な認知の歪みについて、その特徴と心理的適応に果たす意味を解説する。
担当講師: 菊池 聡 (信州大学教授) ゲスト : 星 薫(放送大学客員准教授)
第15回 錯覚とメタ認知 錯覚とよいつきあいを築く
自分自身の認知を適切にモニターし、さらにそれを制御しようとする過程は、メタ認知と呼ばれる。このメタ認知は、論理的で偏りのない良質の思考であるクリティカル・シンキングを実現するために、重要な概念となる。本科目で学んだ錯覚についてのメタ認知を、今後の生活や社会にどう活かすべきかを総括的にふりかえる
担当講師: 菊池 聡 (信州大学教授) 齋藤 智 (京都大学大学院准教授) 金井 直 (信州大学准教授) ゲスト : 星 薫(放送大学客員准教授)

放送メディア:

テレビ

放送時間:


2017年度 [第1学期] (水曜)
20時45分〜21時30分
2016年度 [第2学期] (土曜)
24時45分〜25時30分

単位認定試験 試験日・時限:

2017年度 [第1学期]
2017年7月30日 (日曜)
7時限 (16時45分~17時35分)

単位認定試験 試験日・時限:

2016年度 [第2学期]
2017年1月24日 (火曜)
6時限 (15時35分~16時25分)

開設年度:

2014年度

科目区分:

専門科目

科目コード:

1528939

単位数:

2単位
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