現代環境法の諸相(’13)

主任講師: 北村 喜宣、原島 良成

20世紀後半、激甚公害の発生で一躍脚光を浴びることとなった環境法は、今日、一つの転換点を迎えている。気候変動のような複雑なメカニズムによる大規模な環境影響への対応を迫られるようになり、また、化学物質への微量・長期・複合暴露によるリスク評価のように、相当程度の不確実性を織り込んだ判断が求められるようになった。単純に環境破壊行為を取り締まる規制法システムでは、現代的環境問題の解決は望み難く、様々な経済活動に伴う環境影響を評価し汚染リスクを緩和する仕組み、すなわち「環境法政策」の発想が必要である。本講義では、現行法令の表面的理解にとどまらず、具体の法政策の策定・実施過程も視野に入れた、現代環境法の諸相への習熟を目指す。 検討中リストに追加

各回のテーマと放送内容

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第1回 環境問題発生の メカニズムと法 【改訂回】
環境法は、実定法の科目である。ただ、体系らしきものがないうえに、法律ばかり多い。その法律も、技術性の程度が高い。これまでの法律学習においては、こうした法律を対象にすることは少なかったために、いきなり環境実定法にふれると、理解にとまどうことがある。環境法とはどのようなもので、どのような特徴があるのだろうか。
担当講師: 北村 喜宣 (上智大学教授) 原島 良成 (熊本大学准教授)
第2回 環境法が生まれる 【改訂回】
環境法というのは、私たちが自由を満喫する過程で貴重な自然や風景が失われてしまうといった問題に直面し、持続可能な発展、また社会的に望ましい状態の実現に向けて悩む中で、生まれてくる。それは法律という形をとることもあれば、裁判や、あるいは難解な正議論の中に現れることもある。法はいかにして環境影響をコントロールしうるのか。民事訴訟や行政の仕組みを概観する。
担当講師: 北村 喜宣 (上智大学教授) 原島 良成 (熊本大学准教授)
第3回 環境法政策 ~政府の役割(1)
環境法政策は、環境に関する責任を、法律や条例として制度化している。その目指すところは、当初は経済発展を阻害しない限りでの環境保護であったが、やがて、持続可能な発展を目指す国際的潮流が意識されるようになり、また、環境権の議論と裁判の蓄積は、公益としての環境を保護する必要性を、強く印象付けることとなった。現代環境法の目標、責任の制度化の方向を解説する。
担当講師: 北村 喜宣 (上智大学教授) 原島 良成 (熊本大学准教授)
第4回 環境法政策 ~政府の役割(2) 【改訂回】
環境法政策を眺めるとき、そもそも対応しなければならない課題の性質が、公害国会の時代と持続可能な発展を追求する現代とでは、変わってきている。より複雑な因果関係による、不確実な環境被害を想定しなければならない。環境法政策は、環境リスクを管理する、という現代の困難にどう対処しているのか。またそうした法政策は、いかにして形成され、実施されているのか。
担当講師: 北村 喜宣 (上智大学教授) 原島 良成 (熊本大学准教授)
第5回 環境法政策 ~政府の役割(3) 【改訂回】
環境法政策の形成と実施を担当する組織に注目し、環境保護のどの部分を中央政府が担い地方政府が担うのか、また市民参画はどうあるべきかという、環境ガバナンスの大きな枠組に焦点を当てる。環境法政策概観の締めくくりとして、環境法がどういう仕組みでその目的を達成しようとしているのか、人の意思決定へのアプローチを、具体例に即して分類・整理する。
担当講師: 北村 喜宣 (上智大学教授) 原島 良成 (熊本大学准教授)
第6回 法は環境を守れるか ~市民の役割(1)
環境汚染を通じてある人の健康が損なわれる、財産が失われるといったことを、正義・不正義の問題として捉え、裁判をつうじてその救済を図る法理論はないのか。環境法の理論は、「法政策」に関する理論と、法的に保護されるべき利益を析出しその救済を可能にする「法解釈」の理論と、両方相まって完成されるものと言える。今回から3回、訴訟の仕組みと現実の裁判例に注目する。
担当講師: 北村 喜宣 (上智大学教授) 原島 良成 (熊本大学准教授)
第7回 法は環境を守れるか ~市民の役割(2)
環境利益は個人的利益に集約されない側面がある。そこで、環境訴訟における「被害者救済」にとどまらない裁判の機能を俯瞰する。環境民事訴訟において発展してきた共同不法行為理論を取り上げ、民事訴訟による環境保護の可能性と困難性について考える。すると、環境行政訴訟の存在意義が浮かび上がってくる。
担当講師: 北村 喜宣 (上智大学教授) 原島 良成 (熊本大学准教授)
第8回 法は環境を守れるか ~市民の役割(3)
裁判外の紛争処理制度について、解説する。訴訟に比べ利用者の負担が軽いなどの利点があり、その実態に注目してみたい。最後に、実体法解釈・訴訟法論の締めくくりとして重要な環境法判例を取り上げ、これまでに見てきた議論がどのように現実の環境紛争において立ち現れるのか、確認する。
担当講師: 北村 喜宣 (上智大学教授) 原島 良成 (熊本大学准教授)
第9回 環境法システムを設計する(1) 【改訂回】
環境法システム設計の要点は、①目的、②規制対象、③規制内容、④規制手法である。それぞれの内容を具体的に理解することで、既存の環境法を分析するだけだなく新たに設計する力を身につけたい。法制度の目的設定、規制対象設定について概説した上で、規制内容としての基準設定のあり方を解説する。
担当講師: 北村 喜宣 (上智大学教授) 原島 良成 (熊本大学准教授)
第10回 環境法システムを設計する(2)
規制というのは、国民の権利や自由に制限を課すものであるから、国会が制定する法律という形式、あるいは、地方議会が制定する条例という形式において、根拠づけられなければならない。では、環境規制を法律や条例として書き起こすとしたら、どういう内容の文書にしたらよいだろうか。義務付けの手法に注目する。
担当講師: 北村 喜宣 (上智大学教授) 原島 良成 (熊本大学准教授)
第11回 環境法システムを設計する(3)
前回の続きで、規制の手法について解説する。的確な環境行政実施のためには、情報の収集が不可欠である。そのような情報収集の仕組みも、法政策に組み込まれなければならない。そのほか、環境汚染・破壊を回復するための事業や基金の制度化、環境保護のため誰かに特別の犠牲を負わせる際の損失補償の仕組みも、必要となる。
担当講師: 北村 喜宣 (上智大学教授) 原島 良成 (熊本大学准教授)
第12回 環境法システムを設計する(4)
規制の最終局面、義務履行確保の手法について解説する。環境法規制についても、他の規制と同様、刑事罰を背景とした履行確保が中心となるが、そのほかに、許可取消や制裁的公表といった仕組みも、用いられている。さらに、市民参画も、義務履行確保において重要な意味を持つようになってきている。
担当講師: 北村 喜宣 (上智大学教授) 原島 良成 (熊本大学准教授)
第13回 環境法の実施主体と活動の実際(1)
環境管理は、国、自治体、事業者、市民がそれぞれの役割を適切に果たすことで実現される。義務付けられる事業者のみの問題としてではなく、規制を運用する行政組織やその執行の実際にまで目を配って環境法を捉えなおすことは、より良い環境法システムの設計につながるであろう。まずは、環境法過程における各主体の位置づけを再確認する。
担当講師: 北村 喜宣 (上智大学教授) 原島 良成 (熊本大学准教授)
第14回 環境法の実施主体と活動の実際(2)
法律や条例に環境保護の仕組みを書き込んだとしても、それがどのようにエンフォース(enforce:執行、強制)されるかは、また別の問題である。水質汚濁防止法、廃棄物処理法等、環境法の執行実態から、生きた環境法の姿に迫り、あるべき環境法システムの姿を展望する。特に、青森岩手県境産廃不法投棄事件を素材として、廃棄物処理法の執行過程を詳しく取り上げる。
担当講師: 北村 喜宣 (上智大学教授) 原島 良成 (熊本大学准教授)
第15回 現代日本の環境法 ~その特徴と課題 【改訂回】
外国の環境法と比較して、日本環境法は、強制的アプローチが中心となっている。また、行政裁量が広く、行政のエラーに対する手当てが乏しい。より良い環境法システムを構築するためには、こうした現代日本の環境法の特徴を実証的に明らかにする作業が必要となる。補論的に、日本環境法の特徴を指摘しその改善策を展望することで、本講義の総括とする。
担当講師: 北村 喜宣 (上智大学教授) 原島 良成 (熊本大学准教授)

放送メディア:

テレビ

放送時間:


2016年度 [第2学期] (水曜)
15時15分〜16時00分

単位認定試験 試験日・時限:

2016年度 [第2学期]
2017年1月22日 (日曜)
4時限 (13時15分~14時05分)

開設年度:

2013年度

科目区分:

専門科目

科目コード:

1639242

単位数:

2単位
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