安全・安心と地域マネジメント(’14)

主任講師: 堀井 秀之、奈良 由美子

本科目の修学上の目標は、地域の安全・安心の実現の要件は何かを理解したうえで、実際の具体的事例を見ながら、災害対応のための地域マネジメントシステム構築の手法について知識を得、その意義と課題について検討する力をつけることである。できれば学習者には、本科目の内容を、住民、自治体職員、企業の一員といった立場で関わっている自分の地域にあてはめて考察することを試みていただきたい。 検討中リストに追加

各回のテーマと放送内容

※テーマをクリックすると授業内容が表示されます。

第1回 地域の安全・安心と社会技術
地域社会の安全・安心の実現は重要な今日的課題の一つである。この科目では、安全・安心を阻害する要因として自然災害に焦点を据え、地域においてこれに対応することの意義、具体的手法、具体的事例、課題を扱う。
講義は大きく2部から構成される。前半では東日本大震災の実態、解釈、そして教訓を検討する。それらを受けて後半では、わが国の地域防災の向上のために今後何をすべきかについて、具体的事例も交えながらその課題と可能性を考える。安全・安心と信頼の意味を再考し、地域において自然災害対応のマネジメントシステムを構築することが、本科目の全体テーマである。社会技術という概念を基盤として安全・安心のための地域マネジメントを論じる。
担当講師: 堀井 秀之 (東京大学大学院教授)
第2回 東日本大震災にみるわが国の防災の課題
東日本大震災では、なぜ”津波常襲地域”と呼ばれた三陸沿岸地域で1万8,000人を超える死者・行方不明者がでたのか。津波警報が発表されても避難しないことが常態化していた沿岸地域の実態と、その背景にある避難できない住民の心理、およびわが国の行政と住民の関係にみる防災の課題を解説するとともに、子どもへの教育を通じて地域に災害に備える文化を醸成しようと試みた釜石市津波防災教育の取り組み背景を紹介する。
担当講師: 片田 敏孝 (群馬大学理工学研究院教授)
第3回 災害に備える主体的姿勢を育む防災教育
東日本大震災において、岩手県釜石市の児童・生徒は、市街地を壊滅させるような大津波から、自らの主体的な避難行動をもって命を守り抜いた。ここでは、そのとき釜石市の子どもたちがとった行動とその背景にあった「避難三原則」に基づく当市での津波防災教育を紹介し、自然と正しく向かい合い、災いから命を守る主体的姿勢を育む防災教育について紹介する。また、子どもを中心に学校、家庭、地域に対して津波防災教育の波及を試みた取り組み事例を紹介する。
担当講師: 片田 敏孝 (群馬大学理工学研究院教授)
第4回 これからの津波防災のあり方 -自然と共存する地域社会の構築-
東日本大震災を契機に、各地で大地震・大津波に関する新たな想定が発表されている。こうした想定に対し我々はどう理解し、備えればよいのか。大規模地震・津波の想定に対する国民理解の実態をみながら、そのあり方を考える。
また、過去の津波被災地における復興過程、および各地にある防災に関わる伝統祭祀を紹介しながら、大津波の教訓を災害文化として次世代へ継承し、自然と共存しながら生きるこれからの地域社会のあり方について考える。
担当講師: 片田 敏孝 (群馬大学理工学研究院教授)
第5回 原子力発電所事故の要因(1)
地域社会の安全・安心を実現することを考えるうえで、自然災害に対処するのと原子力事故等の人為的な危機に対処するのとでは、大きな違いが存在するはずである。東日本大震災では、その両者が起こってしまった。地域社会の安全・安心を実現するために何が重要であるのか、何を行わなければならないのかを明らかにするために、東日本大震災で起こったことを直視し、その本質を理解することによって、学ぶべき教訓を導き出さなくてはならない。
ここでは、福島第一原子力発電所事故に焦点を当て、人為的危機に地域社会として対処するための原点を明らかにすることを試みる。そのためには、なぜあのような事故が起こってしまったのかを理解し、そこから地域社会の安全・安心を実現するための社会技術の要件を考える。
担当講師: 堀井 秀之 (東京大学大学院教授)
第6回 原子力発電所事故の要因(2)
前章ではなぜ、福島第一原子力発電所の津波対策、シビアアクシデント対策が不十分であったのかを分析した。抽出された、対策が不十分にとどまった要因に対して因果分析を行い、冷温停止の失敗に至る因果関係図を描く。その結果に基づき、専門分化・分業の弊害、絶対安全を求める心理という二つの本質的な要因が抽出される。後者に焦点を当て、不安喚起モデルを用いて不安が解消される過程に基づき、対策が不十分にとどまった経緯との関係、信頼の役割、地域マネジメントの意義と役割を論ずる。
担当講師: 堀井 秀之 (東京大学大学院教授)
第7回 自主解決の支援
第2章から第6章では、東日本大震災における津波防災教育に関わる事例と、原子力発電所事故の要因分析を取り上げた。自然災害である津波を引き起こすのは自然であり、人間がコントロールすることはできない。一方、原子力発電所は人間が造り出したものであり、事故自身を引き起こしたのが津波であったとしても、放射性物質の放出の源を造り出したのは人間である。一見、両者は無関係に思われるが、その背後には本質的な要点が存在している。本章では両者に共通する事柄を抽出し、地域社会の安全安心を確立するために重要な論点を導き出す。
担当講師: 堀井 秀之 (東京大学大学院教授) 片田 敏孝 (群馬大学理工学研究院教授)
第8回 リスクコミュニケーションと地域防災 -安全・安心科学技術プロジェクト(1)-
地域の安全・安心の実現には地域のステークホルダーの連携が不可欠となる。その際、具体的なリスク低減のための管理過程としてのリスクマネジメントに加えて、リスク情報を共有し意思疎通を図るための過程であるリスクコミュニケーションが重要な役割を果たすことになる。本章(回)では、リスクコミュニケーションを通じてステークホルダーが連携して取り組んだ地域防災の事例を紹介する。この時、特に情報の受信者・発信者という立場で住民をとらえ、円滑な情報の受発信を促進する技術とシステム、リスクコミュニケーションのあり方を検討する。
担当講師: 奈良 由美子 (放送大学教授) ゲスト : 鈴木 猛康(山梨大学)
第9回 水害リスク軽減方策のコーディネーション -安全・安心科学技術プロジェクト(2)-
ハード対策のみならずソフト対策をも組み合わせた総合的水害リスク軽減の取り組みを進めるためには、関係主体を巻き込んだ計画立案が必要である。この回では、このような総合的水害リスク軽減に関する、滋賀県や熊本大学・熊本市を中心としたグループの取組みを取り上げ、マネジメントプロセスやコミュニケーションシステムの設計を中心に解説する。そのうえで、今後の発展の方向性や課題などについて議論していきたい。
担当講師: 多々納 裕一 (京都大学防災研究所教授) ゲスト : 山田 文彦(熊本大学)
第10回 平常時・非常時の連動と地域防災 -安全・安心科学技術プロジェクト(3)-
非常時限定の防災はコストが大きすぎて形骸化しやすい。また、災害発生後は、住民の安否確認や被害状況の把握など情報管理のありようが損害最小化や迅速復旧の成否を分ける。発災後の情報管理を機能させるには平常時からの地域での情報システムの構築が欠かせない。この章では、平常時と非常時とを連動させた情報システムを構築することの意義と手法を、北海道遠軽町の取組みを中心に具体的事例を示しながら解説する。
担当講師: 奈良 由美子 (放送大学教授) ゲスト : 角本 繁(東京工業大学)、畑山 満則(京都大学防災研究所)
第11回 わが国の防災課題と今後のあり方 -人が死なない防災を目指して-
災害対策基本法に基づき行政主体で進められてきたわが国の防災は、阪神・淡路大震災や東日本大震災を除けば、災害犠牲者をここ最近の100人程度に激減させることに成功した一方、国民の災害に備える主体性の欠落をもたらした。ここでは、わが国の防災に対する国民意識にみる課題を整理するとともに、災害大国であるわが国において、国民一人ひとりが持つべき姿勢のあり方について考える。これをふまえ、災害に備える主体的姿勢を持つ国民を少しでも増やしていくための住民との防災教育、コミュニケーションのあり方について、事例を提示しながら考える。
担当講師: 片田 敏孝 (群馬大学理工学研究院教授)
第12回 大規模災害と防災計画 -総合防災学の挑戦-
「想定」を超える災害の発生可能性は常にあることに正面から向き合い、どのようにそのような事態に対処すべきなのか。本章では、まず、東日本大震災を現時点で振り返り、災害による影響の連鎖が被害を拡大していった過程を考察する。次いで、我が国における構造物の計画や設計の考え方を整理し、「想定」の果たす役割に関して考察する。さらに、想定を超えた場合の施設機能の付与に関する考え方を考察し、今後の防災施設整備の在り方に関して言及する。その上で、今回の災害がもたらした課題として、システムないしは地域総体としての災害に対する備えを構築すること、すなわち、総合的な災害リスク管理に関する方法論の構築が求められているという認識の下、この種のプロジェクトの評価を実施するための整合的被害評価の方法論を示して議論を締めくくる。
担当講師: 多々納 裕一 (京都大学防災研究所教授)
第13回 災害と生活
地域マネジメントの最小単位の構成要素は生活者である。地域全体の防災力の向上という観点から、個々の生活者は防災の行為者であり、その能力と実践の向上は重要といえる。本章では、災害に対する生活リスクマネジメントについて考えていく。この時、被災の時間経過の中で生活が変化することを前提として、自助と共助の可能性と課題をとらえ直す。また、生活者の自らの防災に対する信頼、さらには地域に対する信頼の意義についても押さえたい。
担当講師: 奈良 由美子 (放送大学教授)
第14回 現場で役立つ防災技術 -プロセスの技術の重要性-
防災の現場で実際に役立つためには、技術はどのような要件を充足しなくてはならないのであろうか。本章では、現場で役立つ防災技術-プロセスの技術について、その概念や実践について検討したい。亀田弘行京都大学名誉教授は地震工学の権威であり、防災技術の研究・開発に永く関わってきた。文部科学省の安全・安心科学技術プロジェクトの立ち上げについてもリーダーとして関わり、その推進委員会の委員として現場で役立つ防災の技術、知恵、現場への適用戦略、プロセスの技術の重要性を常に指摘してこられた。ここでは、亀田名誉教授へのインタビューに基づき、プロセスの技術の重要性に関する亀田名誉教授の持論を紹介するとともに、防災技術の実装の課題について考える。
担当講師: 堀井 秀之 (東京大学大学院教授) ゲスト : 亀田 弘行(京都大学名誉教授)
第15回 地域社会の安全・安心を実現するための社会技術
前章までの内容をふまえて、設計基準外力を超える自然外力に対して人命を守る、避難等のソフト対策が有効に機能するようにするために必要な社会技術の要件を検討する。組織体制としては、行政と住民に支援組織を加えた3者モデルが必要である。支援組織が行う活動には、防災教育の支援、避難訓練等の支援、防災情報システムの研究開発があるが、それらの活動を進める際には、住民、行政の支援組織に対する信頼を醸成し、リスク認知やソフト対策への理解を深め、住民の行動変容を実現するように配慮しなければならない。防災教育や防災情報システムを個別に取り扱うのではなく、それらの要素を統合したシステム技術、すなわち社会技術としてとらえることが重要である。
担当講師: 堀井 秀之 (東京大学大学院教授) 奈良 由美子 (放送大学教授)

放送メディア:

テレビ

放送時間:


2017年度 [第1学期] (金曜)
13時45分〜14時30分
2016年度 [第2学期] (火曜)
20時00分〜20時45分

単位認定試験 試験日・時限:

2017年度 [第1学期]
2017年7月27日 (木曜)
3時限 (11時35分~12時25分)

単位認定試験 試験日・時限:

2016年度 [第2学期]
2017年1月25日 (水曜)
1時限 (9時15分~10時05分)

開設年度:

2014年度

科目区分:

総合科目

科目コード:

1847457

単位数:

2単位
このページの先頭へ