フィールドワークと民族誌(’17)

主任講師: 稲村 哲也、池谷 和信

人間社会を理解するための教養として、また、文化人類学を学ぶためのベースとして、フィールドワークと民族誌を通じて、一つの社会を多面的・包括的に見る視点を養う。また、個別社会が、その自然環境のなかで、また世界のなかで、どのように成り立っているのかを学ぶ。さらに、それらの社会が、グローバル化が進む現代において、どのように変化してきたのかを理解する。講義全体を通じて、多様な社会を比較し、周縁からの視点を持つことで、地球規模の人類社会のなりたちとその変化をより深く理解することも目指す。 検討中リストに追加

各回のテーマと放送内容

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第1回 はじめに -フィールドワークと民族誌の方法
この講義では、ふたりの主任講師の専門とする伝統的な生業である狩猟採集と牧畜を軸として、多様な社会を取り上げていくが、初回ではまず、生業の視点から地球全体を概観し、人類史におけるヒトの移動や拡散についても視野に入れる。その上で、フィールドワークとは何か、どのような方法で行われているのか、また、フィールドワークに基づいて書かれる民族誌とはどのようなものかを論じる。
担当講師: 池谷 和信 (国立民族学博物館教授) 稲村 哲也 (放送大学教授)
第2回 日本の山村における資源利用 -現代に伝えられる伝統的生業
第2回と第3回ではまず日本を取り上げ、それによって、生業の視点から世界のなかに日本を位置づけたい。現在の日本の山村では、過疎化などの要因で人口減少が生じているが、意外にも廃村になった所は多くない。山村では、狩猟や家畜飼養、ミツバチの養蜂、焼畑、採集などの伝統的な生業が維持されてきた。ここでは、日本の山村の生業と生活を取り上げることから、日本社会の特質を考察する。また、世界の狩猟や牧畜、農耕と日本の山村の生業の状況を比較する。
担当講師: 池谷 和信 (国立民族学博物館教授) 稲村 哲也 (放送大学教授)
第3回 日本における獣害問題 -動物と人との新しいかかわり方
最近の日本の農山村や都市において、獣害が深刻な問題とみなされている。ここでは、クマ、イノシシ、サルなどを対象にして獣害問題へのアプローチの仕方、その実際を把握することから問題の背景について考える。また、ブータンなどアジアのほかの地域との比較も行う。
担当講師: 池谷 和信 (国立民族学博物館教授) 稲村 哲也 (放送大学教授)
第4回 ヒマラヤの森の狩猟採集民
この回では、ネパール・ヒマラヤの森を中心に移動しながら、サルの狩猟を行うとともに、森の木を加工して農耕民の穀物と交換する、ユニークな狩猟採集民であるラウテを取り上げる。彼らがどのような伝統的生活を営んできたか、またネパールの内戦、王政廃止、民主化など劇的な社会変動のなかでどのように変化しているかについて論じる。
担当講師: 稲村 哲也 (放送大学教授) 池谷 和信 (国立民族学博物館教授)
第5回 寒冷地における狩猟の現状
この回では、極寒の地で生活してきたチュクチやイヌイットの人々を取り上げ、彼らが寒冷地にどのように適応し、セイウチやクジラなどを対象にした海獣狩猟や漁労を中心とする伝統的な生業と暮らしをどのように営んできたのか、また、現代社会のなかで、どのように変化しているのかについて論じる。
担当講師: 池谷 和信 (国立民族学博物館教授) 稲村 哲也 (放送大学教授)
第6回 アフリカ乾燥地域の狩猟民
この回では、世界の狩猟採集民の現在を展望したあとに、アフリカ南部のカラハリ砂漠に居住するサン(ブッシュマン)と呼ばれる狩猟採集民について、フィールドワークのデータを中心に、また、いくつかの先行研究を踏まえて、彼らの伝統的な生活、文化、社会、そして現代における変化について論じる。
担当講師: 池谷 和信 (国立民族学博物館教授) 稲村 哲也 (放送大学教授)
第7回 アマゾン熱帯雨林で農耕と狩猟等を営む人々
この回では、ブラジルやエクアドルのアマゾン熱帯雨林で独自の生活を営んできた諸民族を取り上げ、キャッサバ(マニオク、マンジョカ)やバナナなどの小規模農耕と狩猟採集、漁労などの伝統的な生業と暮らしについて、またその現代における変化について論じる。
担当講師: 池谷 和信 (国立民族学博物館教授) 稲村 哲也 (放送大学教授) ゲスト:山口 吉彦(アマゾン民族館・アマゾン自然館元館長)
第8回 アンデス高地における集団追い込み猟チャク
ペルーを中心とする中央アンデス高地でインカ時代にチャクという一種の集団追い込み猟が行われていた。ラクダ科の野生動物(ビクーニャとグアナコ)は捕獲されたあと、毛を刈られて、生きたまま解放された。この「殺さない狩猟」は、ペルーで1993年以降に復興してきた。この回では、現代によみがえったチャクの背景と実際、その学術的な意味、現代の先住民社会に与える影響などについて論じる。
担当講師: 稲村 哲也 (放送大学教授) 池谷 和信 (国立民族学博物館教授)
第9回 アンデス高地で牧畜を営む人々
この回では、ペルーの中央アンデスの高原でラクダ科の家畜(リャマ、アルパカ)を飼う、ケチュア(インカの末裔)の牧民について取り上げる。彼らは、熱帯高地特有の生態系に適応した、定牧(定住的牧畜)を営んでいる。彼らはまた、峡谷に住む農民と密接な関係を持ち、土着の信仰にカトリックが習合した、独自の信仰をもっている。
担当講師: 稲村 哲也 (放送大学教授)
第10回 ヒマラヤ高地とチベット高原で牧畜と農耕を営む人々
ヒマラヤ高地とチベット高原では、ヤク、あるいはヤクとウシのハイブリッド(異種間交雑種)の移牧や遊牧を営む牧民が居住している。また、彼らの多くは、オオムギ、ソバなどを栽培する農耕も営んでいる。この回では、地域によって異なる生業や移動の形態について比較検討し、移牧と遊牧の概念を整理し、その多様性について論じる。
担当講師: 稲村 哲也 (放送大学教授)
第11回 ヒマラヤ高地(ブータン)で牧畜と農耕を営む人々
ブータンのヒマラヤ高地では、ヤク、ゾモ(ハイブリッド)の移牧とともに、熱帯性のウシの仲間であるミタンとウシのハイブリッドであるジャツァムの移牧が行われている。地域によって、専業の牧民と、農牧複合を行う人々(農牧民)がいる。この回では、ブータンにおけるいくつかの地域を比較し、その生業、伝統的な生活、またチベット(中国)とインドの国境紛争の影響などを論じる。
担当講師: 稲村 哲也 (放送大学教授)
第12回 モンゴル草原の遊牧民
この回では、モンゴルで5種類の家畜(ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウシ、ラクダ)を飼って遊牧を営むモンゴル人とモンゴル西部地域のカザフ人を取り上げ、草原・乾燥地域の遊牧を中心とする彼らの生活や信仰などを紹介する。モンゴルでは、1990年以後、社会主義から民主主義・市場経済へと急激な変化をしてきたが、その変化の過程についても論じる。
担当講師: 稲村 哲也 (放送大学教授)
第13回 タイガの森(モンゴル最北部)でトナカイを飼う人々
この回では、モンゴル最北部の森林タイガ地域でトナカイを飼う、モンゴル語でツァータン(トナカイを飼う人)と呼ばれる人々を取り上げる。彼らは、もともとは西のトゥバ共和国を中心に、森でトナカイを飼い、狩猟も行っていたが、独露戦争(第二次世界大戦)下でモンゴルに逃れてきた。モンゴルでも、社会主義時代の家畜集団化、市場経済化の大きな変化にさらされてきた。
担当講師: 稲村 哲也 (放送大学教授)
第14回 シベリアで遊牧を営む人々
ロシアの広大な寒冷地域であるシベリアには、トナカイ遊牧などを行い、狩猟や漁労を組み合わせた、多様な諸民族が伝統的な生活を営んできた。彼らの生活は、ソビエト連邦における社会主義化政策などにより、集団化や国営化が進行して大きな変化をこうむってきた。後半では、タイガとツンドラ(シベリア)のトナカイ遊牧を比較する。
担当講師: 池谷 和信 (国立民族学博物館教授) 稲村 哲也 (放送大学教授)
第15回 まとめ -民族誌の比較と現代的課題
ここまでに取り上げてきた、狩猟採集(及び漁労)を営む社会、牧畜を営む社会について、環境利用、集団構成、移動、農耕社会など外部世界との関係、近年の変化などについて比較する。それをベースとして、人と自然の関係、個別社会と世界との関係、グローバル化などの現代的課題等について議論し、フィールドワーク、民族誌、そして文化人類学研究についてまとめる。
担当講師: 稲村 哲也 (放送大学教授) 池谷 和信 (国立民族学博物館教授)

放送メディア:

オンライン

第2学期:


2017年10月上旬~2018年2月末日

開設年度:

2017年度

科目区分:

専門科目

科目コード:

5550017

単位数:

2単位
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