公共哲学(’10)

主任講師: 山岡 龍一、齋藤 純一

本講義の目標は、公共性に関する特定の教義を提供したり、公共的な問題を取り扱う特定の方法を教え込むことではない。むしろ、「公共性」を再考察する可能性を示し、学生が自らの具体的な問題を基に、独自でありかつ他に開かれた仕方で、「公共性」に関する考えを身につけられるようにすることが目標である。社会・人文科学的な知の基礎を提供することも目標であるが、それ以上に、すでに何らかの学問を習得した学生が、それを批判的に展開し、他の学問や実践的課題との連関を理解、もしくは創造できるような知の提供を目指している。 検討中リストに追加

各回のテーマと放送内容

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第1回 公共哲学とは何か
「公共哲学」という視角・考え方の概要を示す。「哲学」に関する一つの考え方を紹介しながら、批判的な学問としての公共哲学の可能性を考える。「公共性」概念の多様性を、思想史的な説明を使って検討し、現代社会における公共哲学のあるべき姿を、各人が批判的に考えていく準備をする。
担当講師: 山岡 龍一 (放送大学教授)
第2回 公共哲学の原像:リップマンとデューイ
公共哲学という問題提起の原初的形態として、W.リップマンとJ.デューイの論争を取り上げる。古典古代の理想である公共性の概念を、20世紀アメリカのような社会において追求する際に生じる問題性と可能性を考えることで、非国家的公共性の現代的意義を検討する視点を獲得する。
担当講師: 山岡 龍一 (放送大学教授)
第3回 公共哲学の提唱:アーレントとハーバーマス
公共哲学にとっての古典的なテキスト、H. アーレントの『人間の条件』とJ.ハーバーマスの『公共性の構造転換』を取り上げ、意見の複数性を重視する公共性の理解と市民による意思形成と国家の活動に対する批判的監査を重視する公共性の理解を検討する。
担当講師: 齋藤 純一 (早稲田大学教授)
第4回 公共哲学の展開(Ⅰ):ロールズとサンデル
社会を統合する原理として社会正義を論じたJ.ロールズの『正義の理論』を取り上げる。その上で、ロールズ批判の文脈から新たな公共哲学を共和主義の伝統に依拠しながら提示するM.サンデルの試みを検討し、後期ロールズの政治的リベラリズムにおける公共性の概念を評価する。
担当講師: 山岡 龍一 (放送大学教授)
第5回 公共哲学の展開(Ⅱ):テイラーとコノリー
一方で人々の価値観が多様であることを認め、それを推し進めさえしながら、他方で一つの社会としての統合が果たされることを可能にするのは、はたしてどのような「公共性」なのだろうか。現代の二人の哲学者、Ch.テイラーとW.コノリーの論争を手がかりにして探究する。
担当講師: 田中 智彦 (東京医科歯科大学准教授)
第6回 公共哲学の展開(Ⅲ):経済学のアプローチ
経済学の視点から公共性について論じる。合理的に行動する個人が構成する社会において、公共的な価値の実現や集団的意思決定をめぐって生じる諸問題について考察する。従来の経済学の考え方を超える方向性にも言及する。
担当講師: 神事 直人 (京都大学准教授)
第7回 憲法と公共性
立憲主義と民主主義とを同時に標榜する近代国家は近代的憲法によって構成されている。その憲法は、世俗化と善の多様性を前提とした政治の運営の原則を示すものである。その前提として、市民の対等な関係によって成り立つ私的な領域と、市民が国家権力と対峙する関係にある公的な領域の区別がなされている。純粋に私的でもなく、また国家権力自体でもない公共的なものを憲法理論はそもそも想定しているのであろうか。
担当講師: 川岸 令和 (早稲田大学教授)
第8回 マス・メディアと公共性
自由で民主的な社会においてマス・メディアが果たしている、あるいは果たすべき役割を通じてその公共性の問題を考える。現代の社会においては影響力のある表現主体としてマス・メディアの果たす役割は大きい。報道機関は、世界で起きている事実を人々に伝え、人々の意見の形成にかかわる。新聞を中心とした印刷メディアとテレビを中心とした電波メディア、さらに伝達技術の発達により、通信と放送が融合している最近の状況を法的観点から検討する。
担当講師: 川岸 令和 (早稲田大学教授)
第9回 生命・身体と公共性
何にもまして「私的」に思われる生命・身体――しかしそれらをめぐる「生命倫理」が目指すのは、「公共政策における基準策定」でもある。こうした「公」と「私」の交錯は、私たちの生命・身体にとって何を意味するのだろうか。過去と未来の間で検討してゆく。
担当講師: 田中 智彦 (東京医科歯科大学准教授)
第10回 労働と公共性
急増する「ワーキング・プア」と後を絶たない「製品偽装」――労働をめぐりこうした問題が起きたのは、労働をたんなる「商品」、消費のための「私的な手段」とみなしてきたことに関係があるのではないだろうか。労働とは何かを「公共性」の観点から再考する。
担当講師: 田中 智彦 (東京医科歯科大学准教授)
第11回 社会保障と公共性
社会保障は人びとが相互の生活を支え合うための公共の制度である。社会保障制度の意義を明らかにするとともに、今後債権されるべき社会保障制度の条件と方向についても検討を加えたい。
担当講師: 齋藤 純一 (早稲田大学教授)
第12回 デモクラシーと公共性
公共性とデモクラシーは不可分の関係にある。排除のない公共の議論は、政治的な意思形成‐意思決定が正統であるための条件であり、また、政府に説明責任を求め、その活動を批判的に監査するための条件でもあることを明らかにする。
担当講師: 齋藤 純一 (早稲田大学教授)
第13回 ローカルな公共性
地域や地方自治体が直面する公共的価値をめぐる問題について考察する。廃棄物処理場や原子力発電所の立地など、いわゆるNIMBY (Not In My Back Yard) 問題を取り上げる。また「共有地の悲劇」や協調ゲームの含意についても論じる。
担当講師: 神事 直人 (京都大学准教授)
第14回 グローバルな公共性
グローバルな公共性の問題として、温暖化をはじめとする地球環境問題を取り上げる。社会的ジレンマを手がかりに、その発生メカニズムと問題の構造を考察し、個人の立場と政府の立場の両面から解決方法を模索する。
担当講師: 神事 直人 (京都大学准教授)
第15回 公共哲学の課題と展望
14回の講義内容を踏まえ、国際社会が直面している諸問題に公共哲学がどのようにアプローチしうるかを明らかにするとともに、親密圏やインターネットなど現代の公共性にとって重要なピックスにも言及する。
担当講師: 齋藤 純一 (早稲田大学教授)

放送メディア:

ラジオ

放送時間:


2016年度 [第2学期] (木曜)
16時00分〜16時45分

単位認定試験 試験日・時限:

2016年度 [第2学期]
2017年1月21日 (土曜)
4時限 (13時15分~14時05分)

開設年度:

2010年度

科目区分:

大学院科目

科目コード:

8930562

単位数:

2単位
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