音楽・情報・脳(’13)

主任講師: 仁科 エミ、河合 徳枝

芸術とりわけ音楽に対する情報学的アプローチの有効性と射程距離について基礎的な知識を身につける。それに基づき、具体的な対象についてこの新しい研究の方法論とその効果を学ぶ。同時に、科学とりわけ脳科学に対する過度の信頼や期待、あるいは故なき不信感にまどわされることなく、氾濫する情報を適切に読み解く力を身につけることを目的とする。 検討中リストに追加

各回のテーマと放送内容

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第1回 音楽と情報学、音楽と脳科学
情報学や脳科学の著しい進展によって、音楽の情報構造を高い精度で分析して可視化したり、音楽が人間の脳に及ぼす影響を定量的に計測することが可能になりつつある。これらの客観性の高い研究手法は、音楽研究の新しい方法論として注目されている。情報領域から音楽にアプローチするこの講義の全体像を紹介する。
担当講師: 仁科 エミ (放送大学教授)   河合 徳枝 (公益財団法人国際科学振興財団研究主幹)
第2回 聴く脳・見る脳の仕組み
脳神経系の構造と機能の基本と、ヒトの脳機能を傷つけることなく観察するさまざまな手法について学ぶ。音楽を含む感性情報を受容するときに必要な「音を聴く」「ものを視る」ための脳機能に着目し、聴覚と視覚の情報処理を対比しつつ、それぞれの神経系の仕組みについて学ぶ。
担当講師: 本田 学 (国立精神・神経医療研究センター部長)
第3回 感動する脳の仕組み
音楽、映像、パフォーマンス、芸術作品といった感覚感性情報によって導かれる「美と快と感動」の基盤となる脳の情動神経系の構造と機能、およびそれが生み出す情動・感情・感性の生命活動にとっての意義について学ぶ。
担当講師: 本田 学 (国立精神・神経医療研究センター部長)
第4回 音楽を感じる脳は変化を感じる脳
生物学的な視点から音楽情報を捉え直すとともに、音楽に必須である音の変化を捉える脳内メカニズムについて学ぶ。音楽と人間の脳機能との関係という観点から注目すべき事例として、絶対音感を支える脳の仕組みについて学ぶ。これらを通して、音楽を感じるために必要な脳の情報処理のメカニズムについて、基本的な知識を身につける。
担当講師: 本田 学 (国立精神・神経医療研究センター部長)
第5回 音の情報構造を可視化する手法
音のマクロな情報構造を可視化する古来の手法である楽譜、定常的な周波数構造を描き出す高速フーリエ解析、瞬間的に生起消滅する現象の周波数構造を捉えるウェーブレット解析、ミクロな時間領域での変化を描き出す最大エントロピースペクトルアレイ法等、音(音楽)の情報構造を可視化する手法について学ぶ。
担当講師: 仁科 エミ (放送大学教授)
第6回 感性脳を活性化する超知覚情報
人間に聴こえる周波数の上限は20キロヘルツを超えない。ところがこの知覚限界をこえる超知覚情報が可聴音と共存すると脳深部を活性化し、心身にポジティブな効果をもたらす。音楽・情報・脳を結ぶ本格的な研究アプローチが稔った典型的な事例といえるこの現象=ハイパーソニック・エフェクトの発見の経緯を辿りながら、脳を活性化する超知覚情報について学ぶ。
担当講師: 仁科 エミ (放送大学教授)
第7回 音楽に使われる音の多様性
音楽に使われる音の多様性を、音のもつ情報構造という新しい切り口から概観する。たたく、振る・ゆする、はじく、こする、吹く、歌うなど、さまざまな方法でつくりだされる地球上のさまざまな音を、人間の知覚閾をこえる物理構造をも視野にいれて俯瞰する視点を学ぶ。
担当講師: 八木 玲子 (東京成徳短期大学准教授)
第8回 日本伝統音楽の超知覚構造
日本伝統音楽では、音楽を構成する音そのものが独自の進化と成熟を遂げてきた。いくつかの日本の伝統楽器を対象に、その演奏音の情報構造を精密に可視化する。なかでも人間の知覚閾をこえる物理構造に着目し、西欧の楽器との比較を通じて、日本伝統楽器の変遷と楽器の進化、その基盤となる固有の音文化の表現戦略について考察する。
担当講師: 八木 玲子 (東京成徳短期大学准教授)
第9回 共同体を支える音楽
「音楽の形式は、それを生み出した社会の構造を映し出す」と言われる。緊密な絆で結ばれた優れた伝統的共同体では、音楽が共同体を成立させる土台となっている場合が多い。共同体を支える音楽の多様な姿を紹介し、共同体と音楽との間の一体性を築く仕組みの一端に、情報そして脳という切り口からふれる。
担当講師: 河合 徳枝 (公益財団法人国際科学振興財団研究主幹)
第10回 人類の遺伝子に約束された快感の情報
共同体の絆となってきた優れた音楽やそれと一体化している表現行動には、初めて触れる人をも感動させるものが存在する。感性情報を受容する脳の仕組みに注目しながら、文化伝搬の形跡が認められない共同体の間に共通して見いだされる、学習を必要としない快感のシグナルと推定される表現情報について学ぶ。
担当講師: 河合 徳枝 (公益財団法人国際科学振興財団研究主幹)
第11回 音楽による共同体の自己組織化
高等動物の行動は、脳の報酬系および懲罰系神経回路の働きによって制御されている。とりわけ、感性情報が働きかけ快感を発生させる脳の報酬系は、きわめて強く動物の行動を誘発誘導する。こうした神経回路の働きを活かし、共同体構成員の自律的行動を促してその自己組織化を実現させる叡智を、バリ島共同体の音楽を主題にして学ぶ。
担当講師: 河合 徳枝 (公益財団法人国際科学振興財団研究主幹)
第12回 トランスの脳科学~感性情報は人類をどこまで飛翔させるか
共同体の絆となる音楽の自己組織化力の射程は、脳の行動制御回路の中の報酬系をどこまで活性化し、いかに強力な快感と陶酔を共同体構成員に体感させるかにかかる。バリ島の共同体を事例に、祝祭の極致で発生するトランス(意識変容)とそれを誘起する音楽そして音の力を共同体の自己組織化に活かす叡智について学ぶ。
担当講師: 河合 徳枝 (公益財団法人国際科学振興財団研究主幹)
第13回 コンピューターと音楽
コンピューターとネットワークの発展によって、作曲・演奏・収録・配信など、音楽をめぐる技術環境は大きく変貌しつつある。コンピューターによる音楽制作システム、音楽情報を記述するMIDI言語、それらによって作られた音楽や音に関わるメディア規格について、これまでの講義を踏まえて概観する。
担当講師: 仁科 エミ (放送大学教授)
第14回 人類本来のライフスタイルと音楽
人類本来のライフスタイルを今日まで伝えているといわれる狩猟採集民ムブティ人は合唱をはじめとする音楽の達人として知られる。一方、調性を破壊した十二音技法による現代音楽は、その対極にあるものといえる。両者を対比することを通じて、音楽における“本来”と“適応”を論じる。
担当講師: 仁科 エミ (放送大学教授)
第15回 情報学がひらく音楽の新しい可能性
今後の情報学や脳科学の発展が音楽にもたらす可能性を論じ、講義をまとめる。
担当講師: 仁科 エミ (放送大学教授)   河合 徳枝 (公益財団法人国際科学振興財団研究主幹)

放送メディア:

テレビ

放送時間:


2016年度 [第2学期] (水曜)
24時00分〜24時45分

単位認定試験 試験日・時限:

2016年度 [第2学期]
2017年1月21日 (土曜)
8時限 (17時55分~18時45分)

開設年度:

2013年度

科目区分:

大学院科目

科目コード:

8970033

単位数:

2単位
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