「北海道新聞」に北海道学習センターの卒業生の記事が掲載されました

2023年3月28日「北海道新聞」に北海道学習センターの卒業生の記事が掲載されました。

札幌の83歳 大友さん 放送大学 28年学び卒業 仕事との両立「やり遂げ感無量」
札幌市北区の自営業、大友哲也さん(83)が18日、28年もの長期間、在学した放送大学を卒業した。会社員だった52歳の時、特定の科目を学ぶ「科目履修生」として入学。在学期間の超過から除籍や再入学を繰り返したが、学ぶ楽しさに目覚め、卒業を諦めなかった。「今はやり遂げた満足感でいっぱい。感無量です」と喜びを語る。
大友さんは留萌市出身。1967年に立正大学経済学部を卒業後、鍵メーカーに就職した。東京や名古屋で務め、42歳から札幌勤務となった。営業畑が比較的長く、評価は専ら数字で表されていたため、常にストレスを抱えていたという。
50代の前半、「仕事での悩みをうまくプラス思考に転換できないか」と大学に再び入学することを考えた。当初は夜間部も視野に入れたが、残業も多く、継続して通うのは困難と判断した。一方、放送大学は、自宅で学べるため時間の制約が少なく、学費も安かった。選科履修生として1992年に入学した。
その後、興味の赴くまま科目を学んだ。ベンチャー起業論や経営概論など、「多い年度で6科目ほど。実務面でも役立つ科目が多かった」と振り返る。勉強は昼休みや夜を充て、テキストをひたすら精読することを心掛けた。テレビやラジオ講義も活用した。
一方、テキストを何度読んでも分からないことも。その都度、知人に尋ねたり、図書館で関連資料を探したりした。ただ、仕事が忙しくなると学習時間を十分に確保できないこともたびたびあった。科目履修の登録を控えた時期もあった。
2000年に60歳でメーカーを定年退職すると、知見を生かし、建築金物を修理、販売する会社を起業した。社員は自分一人で、会社員時代と比べれば、業務は自由に差配できた。
履修科目が増えると自然と意欲もわき、同じ放送大学で学ぶ妻にも励まされた。02年からは大学卒業を目指す全科履修生となった。ただ、通常の修業年限4年の放送大学では、在学は最長10年で、期間満了になると除籍になる。再入学し、さらに6年間在学できる制度を2度活用した。
52歳の入学から在学期間は2度のブランクを挟み、累計28年に及んだが、大友さんは「大病もなく、仕事も勉強も両立できたことは本当にうれしい。肩の荷が下りた感じです。事業は何度も辞めようと思ったが、放送大学をやめようとは思わなかった」と話す。(編集委員 升田一憲)
放送大学とは
さまざまな地域や年代、職業の人が学べる正規の大学。テキストのほか、テレビやラジオ、インターネットで学習を進める。
特徴は
・学力試験はなく、入学は4月、10月の年2回
・自習や学習相談ができる「学習センター」が、道内では札幌にある
・卒業までの費用は国立大学の約3分の1。授業料は1単位5500円
何を学べるの
・教養学部教養学科のみ。「全科履修生」は6コースのうち1コースに所属し、124単位以上を修得すると卒業が限定される。
生活と福祉(地域福祉の課題と展望、家族問題と家族支援)、心理と教育(臨床心理学概論、心理カウンセリング序説)、社会と産業(現代の国際政治、マーケティング)、人間と文化(西洋音楽史、世界文学への招待)、情報(自然言語処理、映像コンテンツの制作技術)、自然と環境(現代を生きるための化学、初歩からの物理)※カッコ内はコース科目の例
写真:学位記授与式を終え、「何とか卒業でき、本当にうれしい」と笑顔を見せる大友哲也さん=18日、札幌市北区の北大構内にある放送大学北海道学習センター
学費の安さ 地域問わず 10代の若者 入学増える
放送大学に近年、高校卒業してほどなく入学する若者が目立つようになった。いつでも学べ、費用の安さも選ばれる要因のようだ。
放送大学の学生数は全国に約9万人。道内は約3400人で、主に40、50代が全体の半分を占める。
本年度は高校卒業間もない18、19歳の若者が32人も入学した。札幌市北区の北大構内にある学習拠点、北海道学習センターの主幹、加福千明さん(65)は「20、21年度はともに1桁台だったので急増に驚いた」と話す。
入学した動機を聞くと、「身体障害者で、一般の大学だと通学などに自信がなかった」「2浪できず、授業料が安いので卒業ができそうだ」「高卒で就職したが、勉強をしたい」-などさまざまな理由が挙がった。放送大学は住む地域を問わず、学習時間を縛られない点なども評価された。
加福さんは、新型コロナウイルスの感染流行で一般の大学も長期間、オンライン授業が続き、「放送大学とさほど変わらない。学費の安さも加味されたのでは」とみる。学士の学位が得られる124単位分の授業料は70万6千円。国立大学の3分の1だ。
札幌市保健福祉課の山崎奨平さん(22)は石狩南高を卒業した2019年に入学。仕事と両立させ、今春卒業した。仕事の繁忙期と試験の期間が重なるなど苦労もあったが、「スマホで授業を見るなど時間をやりくりして続けることができた。卒業しても学び続けていきたい」と抱負を語る。
学習センターは本年度、高校1、2年生向けのパンフレットを作成。道内の高校を訪問し、進路指導担当職員にも周知を呼び掛けている。加福さんは「授業料の工面で進学を諦めるのは惜しい。放送大も選択肢に加えてほしい」と話す。(編集委員 升田一憲)
写真:卒業証書を手にする山﨑奨平さん

※北海道新聞社許諾D2304-2404-00026448

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