「産業経済新聞」に放送大学の記事が掲載されました

2023年6月21日「産業経済新聞」に放送大学の記事が掲載されました。新規タブで開く

まなび 放送大学創立40周年 根強い人気 講義の質 支えるプロ集団 ゲストやロケ映像など飽きさせない工夫
この春、創立40周年を迎えた放送大学(本部・千葉市美浜区)。BS放送(ネット配信あり)を通じて、24時間、全国どこでも学習できる正規の通信制大学として、10~100代の約8万5000人が在籍する。卒業後に別コースで再入学する学生も多数いるなど、学生の満足度は高い。それを支えてきたのが放送授業の質の高さだ。コロナ禍で授業を配信する教育機関も増えたが、放送大学の授業はどこがすごいのか、探ってみた。(山本雅人)
1科目の制作に3年
「講義というだけではなく、放送番組を作るという意識で仕事をしている」と語るのは、制作部の足立圭介部長。他の大学にはあまりない組織だが、文字通り放送授業を制作する部署の責任者で、NHKから出向中。前職では「NHK高校講座」などの制作に携わっていた放送授業のプロだ。
放送大学では、1科目の番組を制作するのに3年もの準備期間をかける。現在開講中の放送授業は300科目以上。各科目とも3年前に開講が決まると、45分全15回をどのように進めていくか、担当講師、プロデューサー、印刷教材の編集者らで「科目別教材作成部会」を開き、全体の内容や構成を検討する。
続いて講師による印刷教材の執筆が行われる。各科目ともA5判、約200ページの立派な本で、全国の主要書店で買うこともできる。専門分野の近い教員が読んで助言する「フレンドリーアドバイス」が行われ、それを受けて書き直されるケースも多い。
そして開講1年前からようやく番組収録。番組内で使用するフリップは、NHKの番組美術を手掛ける会社に発注するなど質の高さを追求している。「ロケ主体にするのか、それともスタジオ主体にするのか。聞き手をつけるのか、どんな資料を用意するのかといったことを十分に詰めたうえで収録に入る」(足立部長)という。完成した番組は、誤りがないかや表現などについて、考査室による確認が行われる。
この40年で番組作りも進化した。かつては講師が単独で語り続けるスタイルが多かったが、聞き手やゲストを入れる形態を増やすなど、飽きさせない工夫を重ねてきた。
最近制作した番組の中で、足立部長がおすすめとして挙げるのは、「社会と産業コース」の総合科目「空間と政治」。日本の政治思想史を建築の観点からとらえようという科目で、「他の大学の授業にはない最大のポイントであるロケの映像が効果的に使われるなど、教養番組としても楽しめる」と話す。
Web拡大・充実図る
同大では卒業単位の約2割を、各県にある学習センターで行われる対面の「面接授業」(スクーリング)などで取得することが定められている。だが、コロナ禍で対面の授業が難しくなるなか、ウェブ会議システムを使った「ライブWeb授業」(同時双方向Web授業)が導入された。
放送授業は3年前から準備に入るため、ウクライナ情勢や人工知能(AI)といった時事問題や最新の科学技術に対応しづらいという面がある。一方の面接授業は、例えば兵庫の学習センターで姫路城に関する科目が開講されるなど地域色豊かな科目も多いが、北海道の学生が興味を持っても、兵庫に行かなければ受講できなかった。
オンライン教育課の工藤元課長は「今後、ライブWeb授業の拡大により、最新の社会情勢や地域性に対応した科目も自宅にいながら受講できるようになる」と話している。
写真: 番組の収録風景。世界でも珍しい自前の放送局を持つ大学として、構内には制作等や美術倉庫などもある=千葉市美浜区の放送大学学園本部(同大提供)

※産業経済新聞社許諾済み

※転載・複写を禁じます