
麻木久仁子の面接授業 体験リポート
~第5弾「野菜の栽培と園芸」~
麻木久仁子さんの面接授業体験リポート第5弾。今回は「野菜の栽培と園芸」の接ぎ木実習(兵庫学習センター/宇野雄一教授・神戸大学大学院農学研究科) に参加していただきました。食と健康に関係する講義を積極的に履修している麻木さん。今回は一体どのような授業だったのか、さっそくリポートしてもらいましょう。
-
大阪・関西万博で盛り上がる関西圏へ
-
今回は関西圏へ足を延ばし、神戸大学内にある兵庫学習センターで行われる面接授業に臨みました。2025年の連休明けで、ちょうど大阪・関西万博が開催されていたこともあり、東京から新大阪へ向かう新幹線の車内は多国籍な様相です。
兵庫学習センターに到着すると、早速今日一緒に授業を受ける受講生の皆さんとのランチ会に参加しました。 -
農業経験者の方も参加していて、勉強熱心な姿に感動
-
近くに座った方たちにお話を聞くと、農業経験者の方もちらほらいらっしゃいました。実際に野菜や果物を育てている方に、どうして放送大学に入ったのか聞いてみると、「きちんと座学で勉強したいから」という答え。
野菜や果物を育てる中で、病気にならないように、また収穫量が増えるようにと、試行錯誤しながらいろいろ工夫しているそうですが、きちんと座学で効率的な育て方を勉強して役立てたいとのこと。とても熱心に取り組んでおられる姿に、私は感動してしまいました。宇野雄一教授 (神戸大学大学院農学研究科)
-
授業を受ける受講生の皆さんとのランチ会
-
日本古来の技術「接ぎ木」には、どんな意味がある?
-
ランチ会が終わると、先生が用意した写真や動画を観ながら学ぶ講義の時間です。私は説明を聞いて初めて、「接ぎ木」が日本古来 の技術だと知りました。
「接ぎ木」は、簡単に言うと、種類の異なる野菜や果物をつなぎ合わせて一つにし、病気にかかりにくくしたり、収穫期間を拡大したり する技術のことです。この日実習で扱うのはキュウリで、キュウリはカボチャに接ぎ木をして栽培するのが一般的なのだそう。カボチャに 接ぎ木したキュウリは、つる割病抵抗性を持ち、さらに「ブルームレスキュウリ」になります。 実は、接ぎ木しないでキュウリを育てると白い粉「ブルーム」の付いたキュウリになるのですが、カボチャに接ぎ木すると白い粉が付か なくなるのだそうです。ブルームは、病気でもなければ食べて害になるわけでもなく、むしろ付いているとみずみずしくて歯切れがよい そうです。
しかし、白い粉のせいで「病気じゃないの?」「農薬が付いてるんじゃないの?」と誤解されてしまうのです。誤解されたキュウリはあまり 売れない、つまり商品価値が低いと評価されるので、商品価値を高めるために、あえて接ぎ木するのだとか。 -
-
4 人1 組になって、接ぎ木の実習スタート
-
講義が終わるといよいよ実習の時間です。4 人1 組のグループを作って、実際に用意されたカボチャの「台木」にキュウリの「穂木」 を接ぎ木します。ちなみに台木とは土台となる根の部分で、穂木とは花や実を付ける部分のこと。 最初に動画でプロが接ぎ木する様子を見て、上手に接ぎ木するためのコツや手順を学びました。しかし、カミソリを使って作業しなけれ ばならない上、力の入れ具合が分からないため、うまく接ぎ木できずに悪戦苦闘。
-
宇野教授が接ぎ木のお手本を見せてくれました
-
失敗しないように真剣に取り組む
-
いつも面接授業の実習では、同じグループになった受講生の方たちと、暮らしぶりや学習方 法について語り合いながら作業を進めるのですが、この日の実習ではそうはいきません。集 中して取り組まないと、カボチャやキュウリを無駄にしてしまうからです。
カボチャの台木をカミソリで切り、竹串で穴を開けて、その穴にキュウリの穂木を接ぎ木する のですが、カボチャの台木やキュウリの穂木は柔らかく、裂けてしまって失敗ばかり。実は以前、 放送大学の面接授業でみかんの接ぎ木を体験したのですが、そのときのみかんは全部枯ら してしまいました。私の何が悪かったのか分かりませんが、とにかくうまくいかなかったようです。 今回のキュウリの接ぎ木は、そのときのリベンジの意味もあります。10 本中何本成功してキュ ウリの実をつけるか、今からドキドキしています。 -
「日本古来の素晴らしい技術を知ってほしい」という純粋な気持ち
-
最後に今日教えていただいた宇野先生に、なぜ実習で「接ぎ木」を取り上げ たのか、その理由をお聞きしました。すると、「接ぎ木は日本古来の素晴らしい 技術なので、ぜひ放送大学の学生たちにも学んでほしかった」というお返事。 一カ月前から発芽試験を始めて、カボチャの台木やキュウリの穂木を用意する 必要があるそうで、なかなか準備が大変だったと思うのですが、そのお気持 ちだけで頭が下がります。実際のキュウリ栽培では分業体制が進んでいて、 農家が接ぎ木をすることは少なくなりました。種苗業者がカボチャとキュウリを 接ぎ木して「接木苗」を作り、農家がその接木苗を購入して育てるのだそう。 そうやってできたブルームレスキュウリが、私たちの手元に届き、食卓に並ぶ のですね。今回は面接授業を通じて、農業の工夫を知ることができました。食 や健康に興味のある私にとって、非常に貴重な体験でした。
-
受講生の皆さんありがとうございました。
本記事は麻木久仁子氏の了解の下、放送大学学園の企画・編集にて掲載しています。