新型コロナウイルス感染症対策との関係での4月以降の面接授業への対応について ―学生の皆さまへのメッセージ―

令和2年3月30日
放送大学学長 來生 新

はじめに

放送大学学生の皆さまへ、現下の新型コロナウィルスの蔓延に伴う、放送大学のこれまで及び4月以降、令和2年度第一学期の教育活動に関する基本的な考え方を改めて整理しましたので、お伝えいたします。

すでに、3月19日付でホームページ上に「新型コロナウィルス感染症に対する4月以降の対応について」を学長名で発表しております。オリエンテーション、対面授業、単位認定試験、各種ガイダンス、学習センター主催教育活動の関係についての具体的な方針の詳細に関してはそちらを参照いただきたいと思います。

3月24日に文部科学省が「令和2年度における大学等の授業の開始等について(通知)」を発表しました。今後の放送大学の新型コロナ感染症関係の対応策も、この通知に従って行っていくことになります。しかし、現在のところで、すでに発表している対応は、基本的には文部科学省の通知と矛盾するものではなく、その内容を変更する必要はないと考えています。

また、東京都知事が3月25日に、4月12日までの週末の外出自粛要請を出しています。その後、千葉県を含む首都圏の知事が東京都に歩調を合わせた外出自粛要請を出しました。多数の学生が首都圏各地の学習センターに所属し、千葉県に本部を置く放送大学として、さまざまな本学の措置を決定するにあたり、首都圏の自治体の状況に十分な配慮をしなければならないと考えています。

このメッセージは、これまで個別に発表してきた放送大学の対応策を決定する際に、大学として何をどのように考え、評価したのかを改めて整理することにより、これまでの対応について十分なご理解をいただくとともに、これまでの対応で未定としてきた面接授業について、対応方針を説明することを目的とするものです。

1 これまでに発表した対策において重視した要素

放送大学がすでに発表した3月19日の方針、それに先立つ3月中の一連の諸措置についての対応方針は、その時点での通学制大学等のさまざまな動きを参考に、放送大学と一般の通学制の大学等とが異なる二つの要素、すなわち①学生に高齢者が多いこと、②学習センターが全国各都道府県に分散し、学生の居住地も同様に全国的に分散していること、を考慮して決定したものです。

①は、若い世代が新型コロナウィルスに感染しても比較的軽い症状で済む傾向があるのに対して、高齢者や既往症のある人には症状が深刻になる可能性が高いという特性を持つことを重視したものです。

放送大学は、通学制大学等以上に、感染拡大の防止のために慎重な対策を講ずる必要があるからです。

②についての考慮は、一方で、地域ごとの感染の広がり等の状況が多様であるので、学習センター毎にそれぞれの地域の状況に応じた多様な対応を認めることが合理的であるとの判断を導きます。しかし、他方で、授業料の納付等の事務は全国一律で処理をしており、多様性の幅が大きくなればなるほど、それぞれの対応の違いに対処するための事務処理コストや所属センターの違いによる学生間の学習機会の不均衡も大きくなるという事実があります。

多様性が大きくなれば、それから生ずる混乱も大きくなります。今後、様々な対応を決める際に、大学としては、全国一律の処理による各種の混乱の回避と、各学習センターの置かれた状況の違いによる多様性の容認のバランスを、どのようにとるべきかという難しい判断を迫られることになります。

周囲の状況に照らして、そのバランスを適切にとることが、放送大学の現下の責務だと考えています。

2 放送大学が最優先すべき価値

このような中で、大学として、今までの措置及びこれからとる措置に関して、最優先で確保しなければならないことは、学生の利益、とりわけ前期卒業を予定している個々の学生に、これから取る各種措置が不利益を与えないように、最善の努力を尽くすということだと考えています。

幸いなことに、放送大学は他の大学等とは異なり、放送等による遠隔授業を行うことを教育の柱とする大学です。今回の事態でも、4月からの放送授業、オンライン授業の遂行に支障はありません。

放送授業の学習の成果を問う単位認定試験は、7月実施予定ですので、まだ時間の余裕があり、今後の事態の推移を見極めながら対策を講じていくことができます。

オンライン授業については、単位認定試験を行う評価方法とは異なる評価方法を採用していますので、今回の新型コロナウィルス関連での影響はないと考えています。

3 面接授業に関する措置について

現在の状況で、一番大きな問題は面接授業です。先日の学長名での対応には、面接授業については検討中であるとのみ記載しておりました。

その後さまざまな観点から検討を加えた結果、3月27日付ホームページ上ですでにお知らせしたように、各学習センターで、4月18日から5月2日まで計画中だった面接授業は、すべて閉講とする措置をとります。

その後の面接授業については、一か月ごとに判断を積み重ねて、新型コロナウィルスの蔓延の状況に合わせて開講・閉講の決定をいたします。

この措置に伴う不利益は、以下のような方法で解消します。

①納入済みの授業料について

ア)今後、緊急対策として閉講とした面接授業にかかる授業料は、個々の入金者に全額一括返還します。

イ)返還時期はさまざまな事務処理上の要素を考慮すると、学期末のしかるべき時期になると考えています。

②第一学期卒業を予定している学生の閉講措置に伴う不利益について

これについては、同時双方向のウェブ会議システムを利用した面接授業を行い、卒業予定者全員が必要な単位を履修できる機会を確保し、卒業要件を満たしうるように措置します。その詳細については、早急に具体的な計画を詰めたいと考えています。

また、第一学期に面接授業が行える状況になった場合には、これまで毎学期行っていた「追加登録」の制度を利用して、卒業に必要な単位を取得することも可能になります。現時点ではどれくらいの科目が追加登録対象となるか不明ですが、この制度はウェブ会議システムによる不利益救済措置を補完する機能を果たすものと考えます。

さらに、一度閉講した科目のうちいくつかは、第一学期後半に新規科目として復活開講する可能性もあります。そのような科目の場合には、追加登録により履修を可能とします。

以上の救済措置に関連する説明を以下に補足します。

ア)現時点では最終的にどれだけの面接授業が閉講となるか予測ができない状況ですので、救済措置としてのウェブ授業をどれだけ準備しなければならないかについて計画が立てられません。現在のところ、救済として開講する授業の全体像が確定するのは、6月以降になる可能性が高いと考えます。しかし今後の状況次第で、全体像の確定が早まる可能性もあります。

どのようなタイミングで全体像が確定するにしても、卒業予定者に不利益が生じないだけの、ウェブによる面接授業は提供いたします。

イ)ウェブによる面接授業履修の手続きは、新規に行い、授業料の納入も別建てで行います。

ウ)同時双方向のウェブ授業は、全国すべての学習センター所属の学生が同時に履修できます。しかし、これを救済措置として行うこととの関係で、履修者の資格を第一学期卒業見込み者に限るか否か、一つの授業の履修者数を制限するか否か、制限する場合の上限をどのように設定するか等については、放送大学として初めての試みなので、今後可及的速やかに詳細を詰めて公表します。

エ)パソコンに習熟していない学生については、学習センターに来所していただき、ウェブ受講の補助を行うことで、救済することを予定しています。

③面接授業再開の時期がいつになるか、現時点では未定です。しかし、面接授業再開後の時期に予定されている面接授業は、予定通りの期日に実施することを原則とします。

ア)その際に、開講される面接授業の「追加募集」の手続きは学習センターで行いますが、その実施時期については、今後調整の上お知らせします。

イ)面接授業再開以前に閉講になった面接授業で、センター所長が講師等との合意の上で、同一内容で開講可能と判断するものについては、復活して新規開講として追加募集の手続きに乗せて行うことを可能にします。その際、閉講とした科目に既に受講の権利を有していた方々には、日程変更後も履修可能な場合、復活した新規科目への履修の優先権を付与することとします。

4 おわりに

今回の新型コロナウィルス感染症の蔓延が、社会に与える影響は甚大なものがあります。その中で、放送大学として学生の皆さまの健康の保持を考慮しつつ、学びや活動に対してできるだけの配慮をして、豊かな学習環境を作って行きたいと考えています。