学長からのメッセージ

修士号取得への「近道」

放送大学長
岩永 雅也
博士(学術)(筑波大学)、教育学修士(東京大学)。専門は、教育社会学の視点と方法を基礎とした現代的教育課題の分析。生涯学習と遠隔高等教育、才能教育、社会調査などが研究テーマ。

放送大学は、2001年4月、学部教育の上部に大学院を創設し、翌2002年4月より修士課程学生の受け入れを開始しました。他の多くの大学の修士課程とは異なり、1研究科(文化科学研究科)1専攻(文化科学専攻)というシンプルな形態をとっていますが、カバーする学問領域は非常に広く、衣食住に関する生活科学、医学、心理学、教育学、法学や経済学などの社会科学、産業・技術、工学、情報学、歴史や文学、言語などの人文学、数学、物理学、化学、天文学、地学、そして生物学と、ほぼ総合大学の学部構成に匹敵する分野におよんでいます。また、研究指導を担当する教員の組織も1研究科でまとまっているため各学問領域間の垣根が極めて低く、学際的・複合的な研究テーマに対応した指導も容易だという特徴もあります。こうした放送大学大学院の研究指導体制は、日常的社会生活、職業生活上の複合的な問題をテーマとして学修と研究を進め、修士号の取得をめざす方々にとってまさに理想的なシステムだと言えるでしょう。

放送大学大学院修士課程の特色はそれだけでなく、学位取得に至るまでの履修プロセスにも見ることができます。修士全科生に在籍中は論文執筆指導のための研究指導を履修しますが、それ以外の修了要件の単位はすべて放送科目またはオンライン科目を履修することで取得することができます。したがって、2年間研究論文の完成に全力を傾けたい、という場合には、入学試験の受験前の段階で修士選科生(1年間)あるいは修士科目生(1学期間)として必要な科目の履修を済ませておくこともできます。そうした単位が修了要件の一部として生きるのも、放送大学大学院のユニークなところです。また、場合によっては、2年以上かけてじっくり研究と論文執筆に取り組むことも可能です。そのように、論文完成・課程修了までの道のりは、その時々の状況や環境に合わせて柔軟に選ぶことができます。まさに、企業で、家庭で、そして社会で、日々職務に携わっておられる方々にとって最適な大学院修士課程であると自負しております。

もちろん、修士号の取得だけが修士課程での学習の目的ではありません。高度な内容の専門知識を仕事に生かしたい、特定のテーマで学部レベル以上の専門知識を得たい、上級資格を得るため特定科目だけ履修したい等々の目的で、先に触れた修士選科生、修士科目生として学んでいる方々も少なくありません。そうした自由な利用ができるのも、放送大学ならではのことです。

最後に一言。タイトルには「近道」と書きましたが、それは、多くの社会的制約、そして時間的、空間的制約からかなりの程度自由だという点においての「近道」です。「一定の基準を満たす学術論文の執筆自体に近道はない」ことは、誤解のないよう付言しておきたいと思います。