「朝日新聞」に髙橋理事長および卒業生の記事が掲載されました

2024年2月18日付「朝日新聞」に髙橋理事長および卒業生の記事が掲載されました。新規タブで開く

放送大学40年 時代先取りの学び
「いつでも・どこでも」掲げ 学生数最多
学びたい人が、いつでも、どこでも学べる大学を――。そんな理念で始まった放送大学が今年度、創立40年を迎えた。学びのセーフティーネットだけでなく、オンライン授業やリスキリング(学び直し)など、多くの大学が近年力を入れようとしていることに、早くから取り組んできた。数ある大学の中で果たす役割とは。(山本知佳)
【写真】放送大学本部(千葉市美浜区)
オンライン受講やリスキリング 需要捉え続ける
放送大は1983年4月に設置され、85年に授業を開始した通信制の大学。教養学部1学部で、基本的に4年以上在籍し、所定の単位を満たせば学位を取得できる。書類のみの選考で学力試験はない。
 学生はオンラインやテレビ、全都道府県にある学習センターでの対面授業などを通して学ぶ。学位を取らない学生としても受講できる。昨年4月現在で、大学院を合わせて約8万5千人の学生が学び、全大学の中で最も多い。
 時代に合わせた変化の一つが、受講形態だ。
当初はテレビとラジオ放送での受講だったが、2007年から一部の授業のネット配信を始めた。通学制の大学でオンライン授業が急速に普及したのは、コロナ禍がきっかけ。単位認定の基準が違うため一概に比較はできないが、オンラインへの取り組みは10年近く放送大が先行してきた。
15年には、対面授業がオンラインで代替できるようになり、障害などで外出が難しい学生も対面授業の単位を取りやすくなった。22年には、学習センターで決まった日時で行っていた試験もオンラインで行えるようにした。
変化は授業の幅にも。13年度からは、新たにプログラミングなどが学べる情報コースを設置。00年代からは、リスキリングにも力を入れる。
06年度には、特定の分野を体系的に学べるプログラムを用意。23年度はデータサイエンスなど17のプログラムがあり、履修証明が得られる。1科目から受講できるため、中小企業などでの活用も始まっているという。
大学などでリスキリングが叫ばれるようになったのは、ここ数年だ。20年度の文部科学省の委託調査で2052の学部・研究科などにアンケートをしたところ、約6割が社会人対象のプログラム提供の予定がないと回答。整備が進んでいないので現状だ。一方で、放送大の学部生のおよそ半数は、大学や大学院の既卒生。設立10年後の1993年度は約2割にとどまっていたが、リスキリングの需要を捉え、対応してきた。
若者の修学にも注力 遠隔教育の蓄積生かす
髙(たか)橋(はし)道(みち)和(やす)理事長に聞く
【写真】髙(たか)橋(はし)道和(みちやす)放送大学学園理事長
放送大の意義やこれからの役割について、髙(たか)橋(はし)道(みち)和(やす)理事長に聞いた。
---放送大の強みとは。
大きく三つある。一つは質の高い放送授業だ。テレビ局などで番組経験が豊富なスタッフが携わっており、映像での分かりやすい授業を作るノウハウがある。
二つ目は全国に学習センターがあることだ。対面授業では、その地域ならではの授業も設定している。地元国立大などの教授らが関わり、質の高い授業を提供している。
三つ目は学費の安さ。学位を取りために必要な学費は76万8千円で、国立大の標準額(年53万5800円)と比べても安い。履修登録をした単位数で学費が決まるのも特徴だ。
---他大学との違いは。
また学びたい、と思った時に利用しやすい授業形態の用意がある。学部生の約半分は、大学や大学院をすでに卒業した上で入学している。企業の研修としても放送大を活用してもらおうと、中小企業への働きかけを強めている。
---一方で10~20代の学生の割合も増えている。
コロナ禍前から増加傾向にあり、現在は学生の約2割が10~20代だ。不登校などを背景に通信制高校の生徒が増えており、そうした学生の受け皿にもなり得ると考えている。
若い学生の修学支援にも力を入れないといけない。30代と比べて、退学や除籍の割合が高いことが分かった。メンターとの面談実施など、支援の取り組みを始めた。
---放送大学は今後、どんな役割を果たすのか。
遠隔教育の研究開発をさらに進めようと、今春、次世代教育研究開発センターの設立を予定している。学外の研究機関や企業などとも連携し、研究成果も広く共有、発信していきたい。
自分のペースで仕事と両立 自信になった
卒業生は・・・
【写真】遠藤いち花さん
全国に約800ある大学の中で、なぜ放送大を選んだのか。卒業生に聞いた。
川崎市でスタジオ経営をする遠藤いち花さん(23)は昨秋、放送大を卒業した。「放送大がなかつたら、大学に行くのをあきらめていたかも」と話す。
大学に行きたいと思ったのは19歳のころ。高校卒業時には、進学への強い気持ちはなく、卒業後はパートなどで働いていた。しかし当時出合った演劇に関わるうちに、心理学を学びたいという気持ちが芽生えた。
通学する大学は、受験勉強を一から始めないといけない。そのためには、仕事も辞めないといけないかもしれない。学費も卒業までに数百万円かかる。そんな中、周囲の薦めもあって選んだのが放送大だった。
日中は仕事をし、夜にオンラインで受講。繁忙期前に、前倒しして受講するなど、自分のペースで学ぶことができた。心理学だけでなく、哲学や国際政治など、興味を持った分野は次々と受けた。
卒業して、生活が大きく変わったわけではない。しかし、「自分の力でやりとげたという自信になった」。有名大学に進学する友人もいて、どこか後ろめたさを感じていた時もあった。しかし、工夫しながら勉強し続け、卒業できた。「マイペースでいい。そう思えるようになりました」

※朝日新聞社許諾済み (承諾番号 24-0467)

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