金水敏 大阪学習センター所長が文化功労者に選出されました

本学の 金水 敏(きんすい・さとし)大阪学習センター所長(特任教授)、大阪大学名誉教授(国語学)が、2023年度の文化功労者に選ばれました。心よりお祝い申し上げます。

文化功労者の制度は、我が国の文化の向上発達に関し、特に功績顕著な方々を顕彰するものであり、今回の栄誉は、「ある」「いる」「おる」など日本語の存在表現の歴史を解明し、「役割語」という新たな概念も提唱された業績が高く評価されたものです。詳しくは以下の【功績】をご参照ください。なお、2023年度の文化功労者の顕彰式は11月6日(月)に東京・虎ノ門のホテル「The Okura Tokyo」で行われる予定です。

金水敏大阪学習センター所長(特任教授)

功績

日本語学の分野において、日本語の存在表現を通史的に解明するとともに、「役割語」という新たな概念を提唱し、日本語学研究に新たな領域を開拓するなどの顕著な功績を挙げ、斯学の発展に多大な貢献をした。

日本語の存在表現の通史的な解明は、氏が大学院時代から意欲的に取り組んできた研究で、言語における最も基本的な表現である存在表現の歴史を解明したものである。日本語の存在表現は「いる(ゐる)」「ある(あり)」「おる(をり)」の三語を中心として形成されているが、時代によってこの三語の使い分けや意味・機能は異なっている。従来の研究はこの点に注目して、各時代の存在表現の共時的な記述や各時代特有の現象の解明を中心として行われてきたが、氏は、時代を超えた存在表現の変遷を描くことを目的として、伝統的な国語学の研究方法のみならず、広く言語学的な方法や認知科学的な方法を取り入れることにより、まず、存在表現の意味構造を論理的に構築し、その枠組みを使って各時代の存在表現の分析を行い、上代から現代に至るまでの存在表現の歴史を通史的に描いた。

また、氏が新たに提唱した概念である「役割語」とは、「ある特定の言葉遣い(語彙・語法・言い回し・イントネーション等)を聞くと特定の人物像(年齢、性別、職業、階層、時代、容姿・風貌、性格等)を思い浮かべることができるとき、あるいはある特定の人物像を提示されると、その人物がいかにも使用しそうな言葉遣いを思い浮かべることができるとき、その言葉遣いのこと」をいう。これまで漠然と印象的に捉えられてきたこのような現象に、氏は役割語という概念を与え、単なる現象の指摘にとどまらず、役割語が日本で発達した原因を、日本語の文法構造や日本での小説やマンガ、アニメなどの発達との関連で捉えるなど、言語学、社会学、社会心理学等の知見を援用しつつ解明した。

以上のように、氏は存在表現の歴史的研究や役割語という新たな概念の提唱により日本語学に新たな知見をもたらすなどの優れた業績を挙げ、その功績は極めて顕著である。