インターネットを使用した調査実施に関するQ&A
目次
1.インターネットを介した面接調査を行う場合
2.ウェブアンケートサービスを使用したオンライン調査を行う場合
Q&A
1.インターネットを介した面接調査を行う場合
- Q1.研究倫理上対面の場合と異なる配慮が必要な点はありますか。
- A1.特に配慮を必要とする点が2点あります。1点目はインフォームドコンセントの実施方法などについて,2点目はインターネットや機器のトラブル対応についてです。
- Q2.インフォームドコンセントを行う上でどのような配慮が必要でしょうか。
- A2.まず,インフォームドコンセントについて復習しましょう。インフォームドコンセントとは,わかりやすく十分な説明が行われ,研究対象者はそれに対して疑問があれば解消し,内容について十分納得した上で,その研究参加に同意することを指します。「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(令和3年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号)」では,インターネットを介すなど電磁的な方法でインフォームドコンセントを得るために,本人確認,質問機会の保証,同意後の同意事項の閲覧の配慮の3点が必要であるとしています。
- Q3.本人確認の方法はどのようにすべきでしょうか。
- A3.本人確認は,身元確認と当人認証の2つに分けられ,研究の内容や性質,侵襲の度合い等に応じ,適切な方法を選択する必要があります。具体的には以下の通りです。
侵襲のある研究(軽微な侵襲を含む)の場合は,研究の実施によって対象者の心身を害する可能性がありますので,本人確認をしっかり行う必要があります。Zoomなどの面接調査を行う際,侵襲がない研究の場合は自己申告を踏まえて確認する形でよいですが,侵襲がある研究の場合はそれに加えて公的身分証を提示してもらうなど対応が必要です。ただし,プライバシーに関わるもので研究に必要のない情報は収集しないようにしてください。例えば,関係のない情報は隠してもらう,身分証提示の際には録画を停止するなどの対応が必要でしょう。 - Q4.質問機会の保証はどのようにすればよいでしょうか。
- A4.説明文書が研究対象者の手元に必ずあるようにしてください。例えば,説明文書をメール等で送り,手元に保存してもらうことを徹底するなどです。また,ウェブサイト上に説明文書を掲示し,アクセスすればいつでも閲覧できるという形でもよいでしょう。説明文書には,質問がある場合の連絡先を明記するようにしてください。
- Q5.同意後の同意事項の閲覧に対する配慮はどのようにすればよいでしょうか。
- A5.説明文書が研究対象者の手元に必ずあるようにしてください。例えば,説明文書をメール等で送り,手元に保存してもらうことを徹底するなどです。また,ウェブサイト上に説明文書を掲示し,アクセスすればいつでも閲覧できるという形でもよいでしょう。
- Q6.接続トラブルに対する配慮はどのようにすればよいでしょうか。
- A6.いわゆる「落ちる」など通信が途切れる事態があった場合は,事前に共有していた携帯電話等の緊急連絡先を用いて対処することが大切です。そのため,調査実施前に連絡先のやり取りをしておくようにしてください。また,通信状況の回復のために大幅に時間がかかる場合には,日程調整を行い,調査を延期することも検討しましょう。なお,回線が重く音声が途切れる場合は,映像をオフにして音声だけでインタビューを続けることも可能です。研究目的と照らし合わせ,映像なしでもよい場合は,本人確認の上継続することも検討できます。いずれにせよ,研究対象者には時間に余裕を持ってもらい,丁寧に対応することが大事です。
- Q7.インタビューの録音に当たってはどのような配慮が必要ですか。
- A7.確実に録音が行われるよう,事前にZoom等の準備と動作確認をしておくことが必要です。また,録音データは一般的にクラウド上に保管されますが,個人情報保護のため,インタビュー終了後に速やかにデータをダウンロードし,クラウド上からは確実に削除することが必要です。
2.ウェブアンケートサービスを使用したオンライン調査を行う場合
- Q8.研究倫理上配慮すべき事柄で郵送法の場合と異なる点はありますか。
- A8.大きく3点あります。第一がインフォームドコンセントについて,第二がインターネットや機器のトラブルが生じた場合について,第三が通信およびサーバーにおけるセキュリティについてです。また,Google Formsなど外部のアンケートサービスを利用する場合は,回答方法で迷わないように配慮することも必要でしょう。研究者は,セキュリティも含め利用する外部サービスについてのある程度の知識を持っておくようにしましょう。
- Q9.インフォームドコンセントを行う上でどのような配慮が必要でしょうか。
- A9.ウェブアンケートを含め,自己記入式のアンケート調査の場合は「十分に説明された上で」の回答であれば,インフォームドコンセントを得ることは必ずしも必要ではありません。したがって,同意署名などは不要です。ただし,「十分に説明された上で」の回答という状況を保証することが重要で,特に,健康状態や信仰,刑罰歴など,いわゆる要配慮個人情報を収集する場合はこのことを徹底する必要があります。アンケートへ回答する前に説明文書が閲覧できるように設定しましょう。また,説明文書に目を通したうえで調査に参加することを確認するためのチェックボックスを設け,チェックを入れてから回答を開始してもらうなどの配慮が必要です。
- Q10.インターネットを介した面接調査と同様に,質問機会の保証,同意後の同意事項の閲覧が必要でしょうか。
- A10.必要です。質問機会の保証としては,説明文書に連絡先を記載して,対象者がどこに連絡すればよいかわかるようにしておくことが必要です。同意後の同意事項の閲覧については,回答前に対象者に説明文書を提示し,説明文書をダウンロードあるいは印刷して手元に残しておくことを明示するようにしてください。ただし,無記名の質問紙の場合は,回答後に問い合わせがあっても回答の変更や参加を取り消すことができません。説明文書にはそのことも記載することが必要でしょう。
- Q11.オンラインで質問紙調査を行う場合,本人確認の必要はありますか。
- A11.ウェブに限らず質問紙調査は調査規模が大きく,一人ひとり本人確認をすることはほとんどありません。説明文書に研究対象者として選ばれた理由についての説明を記載し,回答者はその説明を読んだうえで調査に参加することになるため,得られた回答は計画した研究対象者によるものとみなされます。
- Q12.回答者の端末機器トラブルへの対応はどうすればよいでしょうか。
- A12.基本的には回答者各自で対応していただく必要があります。説明文書に,トラブルの際は落ち着いて時間をおいて端末を立ち上げなおすよう記載しましょう。それでも実施不可能の場合は,端末機器のメーカーに相談いただくほかありません。したがって,ゆとりのある回答期間を設定する必要があるでしょう。なお,Google Forms など,回答が途中で保存できるものもあるので,使用するアンケートサービスの仕様を研究対象者がある程度把握できるよう説明しておきましょう。
- Q13.通信およびサーバーにおけるセキュリティへの配慮はどのようにすればよいでしょうか。
- A13.悪意を持った第三者によるインターネットを通じた攻撃により,回答情報が漏洩する可能性に対して配慮すべきです。回答情報の送信にあたっては,SSLなどによる暗号化を行うことが必要です。また,送信された回答データを保存するサーバーを明確にし,サーバーの管理主体にセキュリティ状況について確認することが重要です。外部のアンケートサービスを利用する場合は,そのサービスの内容と安全性について事前によく調べた上で用いることが必要でしょう。例えばGoogle Formsを使用した調査の場合は,Googleでは厳重にサーバー管理をおこなっていますが,使用するアカウントの管理は研究者自身にゆだねられています。定期的にパスワードの変更を行うなどの対応が必要です。