Vol.16 筋の謎に迫る

関根紀子准教授(生活と福祉コース・生活健康科学プログラム)

2015年6月17日

筋の謎に迫る
研究風景

サルコペニアやロコモティブシンドロームが話題となることが増え、健康な生活を送るための筋の役割が注目されるようになってきました。加齢や不活動によって筋が萎縮することは広く知られていますが、これまであまり注目されていなかった横隔膜の萎縮が私の現在の研究テーマです。

横隔膜は手足の筋と同じ骨格筋に分類されますが、不活動に対する応答は随分異なっていて、あっという間に萎縮が進みます。たとえば、ギプス固定やベッドレストなどにより、脚の筋は1週間から10日ほどで萎縮します。ところが横隔膜は、人工呼吸器の使用などにより12時間で萎縮してしまいます。横隔膜が萎縮してしまうと人工呼吸器を外すことが困難になり、その後の生活の質を著しく低下させることになってしまいます。
これは、事故や病気から命を救うために使用した人工呼吸器が、その後の生活に影を落としてしまうことを意味します。なぜ横隔膜の萎縮はこんなにも速く進むのか、そのメカニズムを明らかにしたいと考えています。

私の専門分野である運動生理学では、トレーニングだけでなく、不活動に対するからだの応答も重要な研究テーマです。私の主な研究手法は実験動物を用いるもので、ゼミ生に同じような研究手法やテーマに取り組んでいる人はいませんが、「からだ」「健康」「運動」を主なキーワードとして、みなさん様々な角度から熱心に研究に取り組んでいます。いわゆる体育の研究室のイメージとは違うと思いますが、楽しいものです。