Vol.18 『脳にやさしい』音環境をさぐる

仁科エミ教授(情報コース・情報学プログラム)

2015年8月26日

『脳にやさしい』音環境をさぐる
環境音収録のために滞在したアフリカ・カメルーン バカ人の集落にて

私たちはさまざまな音に囲まれて生活しています。新しく登場したシステムで改めて調べ直すと、気持ちよく聴こえる音の中に、周波数が高すぎて人間に音として聴こえない高周波を含むものがあることがわかりました。しかし、人間に聴こえる周波数の上限は、20キロヘルツに達しません。

この聴こえない高周波を含む音を浴びると、間脳、中脳、前頭前野などから構成され、生命維持や美と感動を司る基幹脳ネットワークの活性が増大することを私たちは見出しました。それを反映して、領域脳血流や脳波α波の増大、NK細胞など免疫活性の増大、ストレス性ホルモンの減少、超高周波を含む音のより美しく感動的な聴取、刺激に対する接近行動なども見出されました。これらの原理の異なる複数の効果を総称して、<ハイパーソニック・エフェクト>と名づけています。

こうした効果をもつ超高周波成分は、人類の進化の舞台といわれる熱帯雨林の自然環境音、バリ島のガムラン音楽、日本の琵琶や尺八などに豊富に含まれる一方、都市環境音やデジタル放送の音声には含まれないことが確認されています。そこで、より生理的負担が小さい「脳にやさしい」情報環境を実現するために、熱帯雨林から先端メディア環境、多様な文化圏の音楽などを対象に、その情報構造を分析するともに、超高周波を都市情報環境に補完する現実的な手法の開発にも取り組んでいます。