Vol.22 親ががんになったとき・子どもと家族を支える

小林真理子准教授(心理と教育コース・臨床心理学プログラム)

2016年1月26日

がんに罹患する人々は年々増加の一途をたどり、その中には子育て世代のがん患者さんも多く含まれています。親の庇護が必要な子どもを育てている最中のがん治療は、どれほど子どもを含めたその家族に衝撃を与えることでしょう。

親ががんになったとき・子どもと家族を支える
子どもサポートプログラムについてのポスター発表(日本緩和医療学会2013.6月)。
右側は共同研究者の村瀬有紀子氏(東京医科歯科大学附属病院小児科)。

発達途上の子どもにとって、親ががん患者であることの与える影響は大変大きいと思われます。長期にわたるがん治療のさまざまな段階で、家族に起きている状況を子どもにどう伝え、どう支援していくのかが大きな課題となっています。子どもは大人が思っている以上に敏感に状況を察知し不安を感じてしまう一方、大人が思っている以上に困難を乗り越えていく力を持っています。親のがんという体験を共有するなかで、家族のきずなは深まっていくでしょう。それを可能にするために、ご家族と周囲の人々が連携していくことが望まれます。

私の専門は臨床心理学ですが、これまで数名の共同研究者と共に、親のがんをお子さんに伝えるための絵本を作成したり、伝えた後のサポートの一つとして子どもグループの実践を行ったりしてきました。また、子どもが多くの時間を過ごす学校との連携をめぐっていくつかの調査を実施し、学校における支援に役立てるための冊子を作成し配布してきました。今後、新たな実践や調査も加え、がん患者さんの子どもと家族への支援に関する家庭・学校・医療機関をつなぐ支援リソースの開発を続けていきたいと思っています。2016年度に開講する『心理臨床と身体の病 ('16)』の中で、トピックスとして本テーマも取り上げています。関心がおありの方はご覧ください。