Vol.1 いろいろなテーマが繰り出される物理学研究

岸根順一郎教授(自然と環境コース・自然環境科学プログラム)

2014年4月1日

いろいろなテーマが繰り出される物理学研究
共同研究を進めているエカテリンブルクのメンバーと

放送大学での学部、大学院研究指導は、同じく物理学担当の米谷民明先生と一緒に進めています。学生さんの研究テーマは、相対性理論、場の量子論といった基礎的なものから、半導体、太陽電池、摩擦といった産業技術と直結するものまで実に多様です。大学院のレポート発表会では、いろいろなテーマが次々と繰り出され実に刺激的です。学生さんによって持ち込まれたテーマを楽しみながら、如何にしてそれを物理学のトラックに載せるか考えるのが我々の役割です。私は2013年4月に着任したばかりですので、直接大学院生を指導するのは2014年4月からということになります。博士後期課程も設置されましたし、今後物理学に基づいて先端産業技術のブレイクスルーを担うような人材の養成にも力を注ぎたいと考えています。

私自身は「物質機能の多様性の探究」を研究テーマにしています。凝縮系物性理論(物性物理学)と呼ばれる分野です。人間社会と同じように、物質中の電子は集団化することで単純な個性からは予想もつかない多様な性質をあらわします。この「創発性」と呼ばれる性質が、磁性や超伝導といった物質機能の根源です。創発性は電子集団が統計的に示す性質であるため、そのありかたには無限の可能性があります。物質における創発性のありかたを理論物理の方法で探究し、物質の状態を制御する仕組みを解明することが私のライフワークです。研究は国内外の多くの研究者、特にロシアのグループ(写真)と一緒に進めています。